表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪魔でも腹は減る(β)  作者: monaka
◆軽口は死を招いて生を実感する話
72/105

第七十二話:作戦開始!

 作戦実行当日。



「すげぇな…」



 俺達は工場跡地に設置された特設ステージを眺めながら呆然とする。



 一晩でこんなものが作れるものなのか…?それにアルタが特別ライブをやるという告知もしっかりされているらしい。事務所から勝手な事をするなと抗議の一つもきそうなものだが、まぁその辺はアルタが自分でうまくやるだろう。ネムさんが居ればたいした問題じゃないはずだ。



 想像以上の集客である。工場跡地はほぼ人で埋め尽くされていて、開始を今か今かと待ちわびる人だらけだ。よく見ると人の群れの中に柄の悪い集団がいる。



 バットやら鉄パイプやらを持っているのでその周りだけ一般の客が居ない。



 無料で、受付も何もないからあんな物を持ったままでも来れるわけだが、来てしまえばこっちの物だ。アルタの歌声、いや…力であいつらはアルタに夢中になってしまうはずだ。恐らくこの調子だとエージェントの何割かもまぎれて見に来ているだろう。それが多ければ多いほど俺達の行動がしやすくなる。




 ぴっぴろぴっぴろと携帯が鳴り、チェックするとアルタから電話だ。少しだけ人の波から離れて通話ボタンを押す。



「見てなさい、彦星アルタ一世一代の晴れ舞台よ!ってアンタは見れないのか。残念だけどこっちの事は任せておいて。出来るだけ長くひきつけておくから」



「何度も言ったけど無理はするなよ。せっかくお前が蓄えてきた力なんだから」



「こんな時まで人の心配?アンタに心配されるほど馬鹿じゃないわ。それに、ここにいる連中幸せにしてやればまたエネルギー確保できるもの。大丈夫よ。それより、他にやる事がある連中とかは気がそぞろになるからもしかするとずっと留めておくのは難しいかも。だからアンタもちゃっちゃとやる事やって私を楽にさせて頂戴」



 本当ならこんな無茶苦茶な事やらせたくはないんだが、大多数の人間を行動不能にする為にはどうしてもアルタの力が必要になってしまう。



「…解った。こっちは頼んだぞ。お前だけが頼りだ」



「…っ。…その言葉を待ってたのよ。ふふふふ…あはははははっ♪任せなさい。今の私は何でも出来そうな気分よ!行ってくるわっ☆」



 …何だあいつ。やたら張り切ってたな…しかしそれならこっちも心強いぜ。



 ほどなくしてアルタがステージに登場すると会場は歓声に包まれる。



 見るとあのチンピラ共も「アルタちゃぁぁぁぁん!」とか言って大騒ぎだ。



「はぁ~い♪みんなのアイドルアルタちゃんだよぉ~☆今日は思い切り楽しんで行ってね~♪早速だけど一曲目!いっくよ~☆」



「「「「うおぉぉぉぉぉぉ!!」」」




 よし、俺も行動に移ろう。



 既にいばらさんは普段どおり施設の内部、支部長の近くまで行っている筈。咲耶ちゃんはしばらくここに残って様子を見ながらしんがりを勤める形で、泡海と有栖、多野中さんが先行隊。泡海が一番内部構造を把握しているので、戦力に不安の残る有栖を連れて行ってもらう事になった。が、多野中さんが一緒の時点で戦力とか気にしなくてもいいような気がする。



 むしろ女子たちに多野中さんが付いていてくれる、と思えば安心だ。




「人の心配をしている余裕なんかないぞ」



 咲耶ちゃんはそう言って俺に釘をさす。確かに戦力に不安がありすぎる。



「わたくし、何か役に立てる事があるのでしょうか…とても不安です」



「大丈夫。私が付いてるから。さあ、まず私達がいきましょう。そしてあの情報を握りつぶすのよ」



「あの情報ってなんの事ですの?あっ、待って下さいまし!」



 泡海を追いかけるようにして有栖も公衆トイレ(施設の入り口)に入っていく。



 どうやら入口は女子トイレ側らしい。そこに多野中さんも一緒に入っていく様子はなんだか犯罪の匂いがするがこの場合やむを得ない。俺も人に見られないように気を付けなければ…。こんなところでまで変態認定されるわけにはいかない。



「十分したらボクたちも出ようね。おとちゃんもしっかりね?」



「お、おう。俺の戦力は有栖とさほど変わらないと思うけどな。やれるだけはやるよ」



「大丈夫。おとちゃんを守る為にボクがいるんだから。心配しなくていいんだよ」



 俺を見上げながら優しく微笑むハニー。ああ、本当に頼りになる相棒だよお前は。



「ほれそろそろ行って来い。後ろは任せとけって。ホントは真っ先に行ってそれっぽい奴ら全部ボコりたいんだけど我慢してやるから」



「咲耶ちゃんも気をつけてくれよ」



「心配いらねーって。あたしを誰だと思ってんのさ。それより舞華。ちゃんと守れよ。その為の力だ」



「師匠…解ってるんだよ。この時の為に頑張ったんだから」



 この二人の繋がりがよく解らんのだが、この辺がきっと昨日の違和感に繋がるのだろうか?どちらにせよあまり詮索はしないほうがよさそうだ。



「んじゃ行って来い」



 咲耶ちゃんはそう言って俺の背中をバチーンと叩く。いてぇ。



 え、ちょっと待って。めちゃくちゃいてぇよこれ。



「なにしてるのおとちゃん。早く行くよ?」



 背中が痛くて呻く俺を引き摺るようにハニーが入り口へと向かう。俺も早く立ち上がらないとトイレ内を引き摺られる羽目になるので気合で立ち直る。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
毎日更新中のこちらもどうぞ☆
「ぼっち姫は目立ちたくない! 〜心まで女になる前に俺の体を取り戻す!!〜」
よろしくお願いします♪
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ