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悪魔でも腹は減る(β)  作者: monaka
◆軽口は死を招いて生を実感する話
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第七十一話:決意。

 確かに天使の力を使えばある程度の問題は解決されるだろう。しかし何もかもをアルタに頼るわけには…。


 そもそも願いを叶える、力を行使するには代償が必要になる。アルタが今どれだけ蓄えがあるのか知らないが、万が一アルタの蓄えの底が尽きるような事があれば今度はアルタの命に関わる問題になってくる。そこまでいかないとしても少なからずの負債を抱えさせてしまうだろう。流石にそれは出来ない。俺と白雪の都合に付き合せてそこまでさせるわけにはいかない。



「アンタさぁ…どうせ私に迷惑がかかるとかそういう余計な事ばっかり考えてるんでしょ?そういうのマジ迷惑だから辞めてくれる?私が私のやりたいようにやって何が悪いの?」



「でも、アルタは関係…」



「関係無いって?殴っていい?ここまで来て関係無いは無いでしょ。今更そんな温い事言うなら本気でぶん殴ってやる」



 俺は何も言えなくなる。既にここまで巻き込んでしまっているのだ。現状を打破するにはアルタの力は必要不可欠…。



「悪い。…でも、無理はしないって約束してくれ」



「アンタがそれを言うなっての」



 その節はすいませんでした。なんて言ったら本当に殴られてしまいそうなのでやめる。



「でしたらアルタさんが今までやってきた方法を使えばいいんじゃありませんの?」



「有栖さん、だよね。どういう意味?私がやってきた事なんて歌う事くらいしか…」



「それですわ。歌えばいいんですの。そして敵を骨抜きにしてしまえばいいんですわ」



 ドヤ顔でとんでもない事を言い出したぞこのお嬢様。



「でも歌う場所なんて…」



「それはわたくしが何とかします。多野中!今すぐ工場跡地を買い取りなさい。そして明日までに特設ステージの用意。出来ますわね?」



「かしこまりまして御座います。すぐに手配いたしましょう」



 …金持ちこえぇ。



「お金持ちって、怖い」



 アルタよ。その気持ちはよく分かるぞ。俺と全く同じ感想を抱くなんて意外と俺の妹になる素質があるんじゃないか?




「どうやら作戦の軸になる部分はそれで決まりみたいね。そんなチンピラ共に聞かせてやるには勿体無い天使の歌声だけれど」



 泡海はそういうと、自分の考えを話し始めた。図面を見ながら俺達に説明していく。



 それを俺達はこうしたほうが良いんじゃないか、いやこっちの方が。などと言い合いながら三時間ほどかけて大体の計画を練った。



 勿論計画した通りに全て上手くいくとは限らないし不測の事態もあるだろう。それに対応できるように念入りに自分達の役割を確認しつつ、その日は解散する事になった。



 決行は明日の夜。



「帰るの面倒だから今日も泊めさいよ」



 解散後アルタが俺に言う。どうせそう言うだろうと思って既に昨日のうちに母親にはそうなるかも、と伝えてあるので俺は動じない。



「アルタちゃんとおとちゃんっていつの間にそんなに仲良くなったのかな」



 帰り道俺はアルタとハニーと一緒に帰る事になった。理由は帰り道が一緒だからというだけなのだが、どうも気にかかる事がある。



「ハニー。お前何かあったのか?なんだか機嫌が良いのか悪いのか全然分からないんだが…」



 白雪が居なくなってから俺は周りの事を一切考える余裕が無かった。



 皆が協力してくれる事になって少しだけ気持ちが落ち着いてきたからやっと気付けた些細な違和感。



「別に何か特別な事があった訳じゃないんだよ。ただいつか来ると思ってた日がきたなーって」



 なんだそりゃ。こうなる事がハニーにはわかってたって事か?いや、そういう直接的な意味じゃないんだろう。俺にはよく分からないがハニーにはハニーの思うところがあって、それが今回の事にかかわってくるんだろうか?



「あまり聞かない方がいい事か?」



「別にたいした事じゃないんだけどおとちゃんにだけは言いたくないかな」



 俺にだけはって所が気になるが、言いたく無いなら無理に聞く事じゃない。



「でもおとちゃんのおかげで分かった事もあるんだよ。ボクの名前の事、やっと謎が解けたんだ。お爺ちゃんが名前を付ける時に昔の知り合いの名前を参考にしたみたい」



「そっか。解ってよかったな」



 ハニーは昔から自分の名前についていろいろ考えてはどんよりしている事があったから、どんな意味だったにせよ解ったなら一歩進めたって事だろう。



「アンタら仲いいわね。付き合ってんの?」


 俺とハニーの会話を聞いていたアルタが妙な事を言い出したので俺が眉間にしわを寄せていると、ハニーもふざけて「バレちゃったね」とか言い出す。



 何か言ってやろうかとも思ったけどやめた。こういうどうでもいい会話が出来るのは平和な証拠だ。俺はこの平和を守らなきゃいけない。が、それ以上にもう一名加えたドタバタな日常を取り返さなければいけないのだ。


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