第七話:白衣の教師と転校生。
「はいはーい野郎ども席につけー♪」
物思いにふけっている間に担任の織姫先生がガラガラと乱暴にドアを開け放った。
織姫咲耶。このクラスの担任だ。身長は低く、ハニーより少し大きいくらいで癖のあるロングヘアー。丸い眼鏡をかけて白衣を羽織っている。幼い顔立ちに当初はファンも多かったのだが、とにかくガラが悪い。発言も行動も乱暴故に一人また一人とファンを卒業していった。今残っているファンといえば俺くらいのものである。
「野郎どもよろこべー。今日は美少女の転校生がいるぞー」
…。歓喜に騒めく教室、それと反比例するかのように血の気が引いていく俺。
いや、さすがにいくらなんでもそれはないだろう。ないはずだないと言ってくれ。
「転校生の星月白雪さんだ。入ってきていーぞ」
悪夢だ。いったいどんな手を使ってここを調べた?そして入学手続きをしたんだ。
いや、きっとあいつの力があればそんな事くらい簡単なのだろう。人の記憶操作やらいろいろとブラックな事をやりやがったに違いない。その際使った力分の代償はどうなってるのかあまり考えたくはない。
「初めまして。シラユキいいます。海外暮らし長かったので日本語あまり上手くアリマセン。今は親戚の乙姫君の家で暮らしてます。ヨロシク」
おいおいおいおいおいおいおいおい。クラスの男子全員が俺を親の仇のような目で睨んでいるではありませんか。そういう適当な設定で人に迷惑をかけるのをやめて頂けませんか。俺は平和に暮らしたいんだよ。
「野郎ども、盛り上がるのはいいがいきなり転校生を囲んで質問攻めとか迷惑な事はやめろよ?そういう気の利かない男は一生独り身どころかいつまでもチェリーボーイで惨めな人生を送ることになるからな」
転校生への絡みを抑制されさらに俺への敵意が激しくなったような気がするが知らんぷりするのが一番だろう。たのむからそっとしておいてくれ。
「でも乙姫君は童貞か聞いたら違う言ってマシタ」
「おやおや、もうそんな話をするほど乙姫と仲がいいのか。じゃあ席はとりあえず隣にしといてやったほうがいいな。おい乙姫、白雪の面倒を見てやれ」
机に突っ伏して頭を抱える。この現実から逃避していたい。
「ちょっとまって下さいまし。この庶民の隣の席といえばここ、わたくしの席ですわよ?この席を彼女に譲れと言いますの?」
この展開に待ったをかけたのはもちろんファック…もとい有栖だった。いいぞ、もっと言ってやれ!今はお前だけが希望だ!
「アー、でも私まだ何もワカラナイので乙姫君の隣にいたいデス」
そう言いながら白雪はゆっくりと有栖の席に詰め寄る。
「ちょっと貴女、わたくしがいる限りこのクラスでそんな勝手は許しませんわぐおぉぉぉぉー!!!」
ぐおぉぉ?
白雪に対しヒートアップしていた有栖が突然腹部を抱えて崩れ落ちた。
「どうしたデス?具合悪いデスか?」
白雪が心配そうな振りをして有栖の肩に触れる。
「ま、負けません、わたくしこんな腹痛如きに負けるような女でふぁぁぁぁぁ…」
「お、おい御伽、腹痛いならさっさとトイレ行ってこい。ここでもらされたらたまらんぞ」
「き、教師が生徒に向かってなんて事をお言いになるのですか!私はっ、ちっともっ、腹痛なっ…ど…」
絶対白雪がなにかやりやがった。有栖のこんなみっともない姿は誰も見たことがなかったらしくクラス中顔が引きつっている。
プライドの高い有栖の事だからきっとこれ以上ないほどの屈辱だろう。ましてやこのまま我慢して本当にここでぶちまけるような事があったら…こいつ死ぬんじゃないか?