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悪魔でも腹は減る(β)  作者: monaka
◆軽口は死を招いて生を実感する話
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第六十八話:執事さんの特殊スキル。


「では出発すると致しましょう」


 そんな時でも多野中さんは冷静である。


 皆がそれぞれ車に乗り込み、目的地である有栖の家へと車が動き出す。


「あの、泡海?この袋の中の人ずっとしくしく泣いてるんだけど大丈夫なのか…?」


「気にしないで頂戴。あれだけの事をしでかしたんだからこのくらい当然の報いよ」


 その発言から、袋の中の人があの爆弾を仕掛けた組織の人間なのだろう事が分かったが、なんというか哀れだ。



「わっ、私は…何も…」



「誰が喋っていいって言ったのかしら?」



「ひぃっ、申し訳有りませんであります人魚様っ!」



「この一件がちゃんと片付いたらもっとちゃんと相手してあげるからそれまで待ってなさい」



「…っ、は、はい。有難うであります人魚様…」



 おいおい、完全に主従関係が成立してしまっているんだが何をしたら人の人格をここまでアレな感じに出来るんだ。



 天使やら悪魔やらの力を使ってならともかく…。



「まぁいいわ。この子のいう事が本当だとするなら、あの爆弾がそこまで大それた物だっていう認識は無かったそうよ。せいぜい少し大きめの音が響いて周りを驚かせるだけ、程度に思っていたみたいね」



「あ、あの…あれって本当にそこまで大変な物だったんでしょうか…?でも確かに爆発の記憶があって…それで、大変な事になって…だけど気が付いたらなんともなくて…」



「いつ喋っていいって言った?」



 泡海に叱られてまた袋の中からごめんなさいごめんなさいと呟きが聞こえる。



「時間が巻き戻せたからいいようなものの…一瞬貴女が見た惨状が本来の現実よ。貴方はもう少しで大量虐殺爆弾魔になるところだったの。もう少し自覚して悔い改めなさい」



「時間が、巻き戻る…?すごい、人魚様、凄いです!私一生ついて行くであります!」



「黙りなさい」



「了解であります!」



 正確には時間を巻き戻したのは白雪だが、そんな事を説明しても仕方ないだろう。



 これで協力者が一人増えると思えばこの女性が泡海信者になるのは悪い事ではない筈。



 もぞもぞと袋が動き、近くに居た俺を泡海と勘違いして袋越しにむぎゅっとされる。



「おい、俺は泡海じゃないぞ」



「はっ、貴様私に手を出していいのは人魚様だけであります地獄に落ちろですっ!」



 前言撤回。



「黙りなさいと言ったわよ?仮にも彼は私の恋人。貴女が軽々しく罵倒していい相手じゃないの」



「ま、まさかここにいる男は、あの交際していると噂の…」



「そうよ。星月乙姫、下僕としても貴女の先輩なのだから敬いなさい」



「ぐ、うぐぐぐぬぬぬぅぅぅ…よ、よろしく…death」



 今さらっと悪意を込められた気がしたのは気のせいではないだろう。



「さっき泡海が仮にも、って言っただろ?ほんとに訳あって付き合ってる事にしてるだけだから安心しなよ」


 こんな事まで教える必要は無いのだろうが今後ずっと怨まれていくのはごめんだ。


「…今それをバラしてしまったらつまらないじゃない…。せっかくもう少し遊べると思っていたのに残念だわ。とにかく、そういう事よ。解ったら目的地に到着するまで黙ってなさい」


「そ、そうだったのでありますか!やっぱりこの男に何か弱みを握られて…ハッ、アレでありますか?あの事がこいつに知られてそれで無理やり恋人やらされてエロい事をぐぼっ」



 勝手にヒートアップした袋少女に泡海が奇麗なボディーブローをかまし、今度こそおとなしくなった。




「乱暴な黙らせ方だな…」



「大丈夫。これも喜べる体にしてみせるから」



 なんていうかもうやだこの人。


「それにしても白昼堂々よくこの子を拉致してこれたな」



 それが疑問だった。声の感じや泡海との会話から学生なのだろうと思うのだが、だとしたら普通に考えてこの子も学校に行っていたのでは?それに執事さんの車に先に乗っていたのも少し引っかかる。



「私はこの子の情報を執事さんに伝えただけ。まず学校に一緒に行って、私が理由を付けて車まで呼び出して…ってつもりでいたんだけれど…」



 泡海はそこまで言うと、有栖に向かって小声で問う。



「この執事さん何者なの…?」



「えっ、多野中の事ですの?多野中はわたくしが物心ついた頃には既に執事として働いていましたわ。まさかあんな特技があるとはわたくしも知りませんでした…」



 なんだ?話が見えない。



「あの執事さんね、この子の写真を見て、私にどこのクラスか聞いたら一人で学校に入ってっちゃったのよ。五分も経ってなかったと思う。意識を失ったこの子を担いで車に戻ってきたの」


 ちょっと待て、じゃあこの袋少女を執事さんが拉致ってきたってのか?


 俺たちの会話が聞こえてしまったのか執事さんは運転しながら、


「ほっほっほ、こういう事は若い頃に慣れっこでしたので」



 と紳士スマイルで言い放つ。



 謎は深まるばかりだが、誰もその『若い頃』とやらの事は聞く事が出来なかった。



「さて、そろそろ到着致しますよ」


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