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悪魔でも腹は減る(β)  作者: monaka
◆不幸が終わる話
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第六十話:彦星アルタの禅問答。

「私はずっと一人だったの。他人なんて信用しなかったし誰もが自分の為だけに生きる、それが人間だと思ってた。どんなに糞野郎でも欲望に正直な奴は尊敬してたよ。人間としてはね」



 でもアルタにはネムさんがついている。どういう出会いだったのかまで知らないが、きっとネムさんの存在もアルタの生き方、考え方に影響を与えているのではないかと感じた。


「ネムみたいに人間じゃない奴の考える事はわからないし常識外だからどうでもいいんだけどね、アンタよアンタ。正確にはその周りの連中もね」



 俺がどうした。何かおかしな事をしでかしただろうか。いや、とんでもない事なら沢山してしまっているのだが出来るだけ今はその事を忘れていていただきたいものである。



「アンタさ、目の前でナイフ持って暴れる人間がいて、まったく知らない人間が刺されそうになってたらどうする?」


 こいつは何を言ってるんだ?その心理はお俺には図り切れない。



「助けるだろ普通」



「自分が刺されるかもよ?」



「刺されないように努力しながら助ける」



「助けられる力がある人はそうするかもね。でも普通は逃げるわ。じゃあ目の前で知らない人間が突然倒れたら?」



「禅問答か…?とりあえず外傷がないか確認して、救急車呼ぶんじゃないか?」



「何故かその日は電波障害で携帯が使えないの」



 なんじゃそりゃ。



「そしたら出来るだけ揺らさないように担いで人通りのある所まで出てタクシーでも捕まえて病院にいくしかないだろ」



「タクシー代はどうするの?」



「そんな事言ってられないだろ人命がかかってるんだぞ?」



 アルタはふぅんと言うだけですぐ次の質問をしてきた。



「じゃあ目の前で子供が泣いてたら?」



「どうしたのか聞くだろ普通」



「…じゃあ迷子」



「一緒に親を探してやればいいだろうが。何なんださっきからこの質問に意味があるのか?」



「うるさい。それで、アンタと子供が一緒に居るところを親が見つけて人攫いって騒ぎだしたら?」



「うるさいってお前…ちゃんと説明すりゃわかってくれるさ」



「分からない変な奴もいるのよ」



「まぁそしたら逃げるかな。子供も親と再会できたんだしいいじゃないか」



「聞きつけたお巡りさんがアンタを追いかけてきて職務質問されて誘拐犯扱いされて拘留されたら?」



 どんな状況だよ。そんなアホな事が実際におきるとでも思ってるのかこいつは…。




 でもアルタの目は真剣だった。



「別に俺が捕まったって困るのは親くらいだろ?親は話せばちゃんとわかってくれるし、ちゃんとわかってくれる人間がいるならいいよ別に」



「アンタ馬鹿?」



「馬鹿とはなんだ馬鹿とは。全部人として当然の事だろうが。別に腹が立たないとかそんな訳ないぜ?俺だって聖人君子じゃねぇんだからよ。でも結果として俺が困るだけなら大した問題じゃないだろうが」



「それが馬鹿だって言ってんのよ。私の知ってる人間って生き物はそんなんじゃない」



 お前が知ってる人間はどんなモンスターなんだよと言ってやりたかったが、アルタが不機嫌そうに眉間にしわを寄せているのに気付いてやめる。



「少なくとも私の知ってる人間って生き物は危険には近づかないし知らない人間が危ないとしても逃げる。急病人がいたら救急車呼んで終わり。呼べないなら交番くらいには運ぶかもしれないけどそれでさよならよ。子供が泣いてるくらいなら素通りが当り前。声をかけるのなんてただの誘拐犯よ。自分が疑われて捕まるなんてありえないしそれを仕方ないの一言で済ませるアンタが信じられない。お人よしって言葉があるけどそんな人種は二十世紀に死滅したわ」



 こいつ…どんだけ人間不信なんだ…?それだけ人を信じられなくなるような生活をしてきたって事なのか?



 だとしたらそれは違うと分からせてやりたい。なんとかならないものだろうか…。


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