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悪魔でも腹は減る(β)  作者: monaka
◆不幸が終わる話
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第五十九話:みんなで決めた事。

 しかし今日は来客が多い日だ。部屋の人口密度がヤバい。



「お前ら…」



「関わるななんて言わせませんわよ?昨日の件はわたくしも腹が立ってますの。このまま引き下がるなんてできませんわ」



「それにしたっておとちゃんのお見舞い行ったら病室にいないからびっくりしたんだよ。看護婦さんも慌ててたんだよ?」



「治療費バックレるとか悪い生徒だなぁ。でもまぁ元気みたいだからいーけどよ」



 みんな俺を心配して病院に行ってくれたのか。



 なんだかいつの間にかこんなに頼りになる仲間が増えたんだなぁと感動していると、泡海が気まずそうに言った。





「あ、貴方達…私が何したか分かって言ってるの…?」



 皆は顔を合わせて、言葉は違えど口々に仕方がない、理由があった事くらいは分かってるというような事を言う。



「まぁわたくしは先輩がどういう状況なのかまでは把握してませんけれど…信じてますから」



「だってさ。みんなは許してくれてるらしいぞ」



 皆の気持ちがむしろ痛いのかもしれない。泡海は顔をしかめて項垂れる。



「でも正直俺は簡単に許せるわけじゃない。だけどさ、やっちまったもんはしょうがないしここで泡海を責めたって何も解決しないだろ?だったらせめて白雪奪還に本気で協力してもらわないとな」



 こういう時人というのはただ許される事が本当の救いになるとは限らない。



 俺の持論だから間違ってるかもしれないが。



 だから俺は俺が思うやり方で泡海を前向きにさせるために敢えて許してはいない事を告げた。



 その代償を求めた。



 俺だったら悪い事をして無条件に許されるより、なんらかの償いをした方が前を向ける気がする。



「…勿論よ。私のせいでこんな事が起きてしまったのだから。必ず、白雪さんを取り戻してみせる。組織の支部壊滅は二の次でもいいわ」



 泡海がそこまで言ってくれるとは思わなかったが、これだけのメンバーが居れば何かいい方法も思いつくかもしれない。



 漠然とだけれど、やれる気がしてきた。




「私はそんなの許さないわよ」




 アルタが泡海に言い放つ。



「おい、泡海も俺の目的にちゃんと協力してくれるんだしそんな言い方は…」



「勘違いしないで。たとえそうだとしても私の目的とは一致しない。少なくともあんな事した奴らは絶対に、完全に完膚なきまでにぶっ潰さないと私の気が済まない。だから二の次になんてさせない」



「アルタちゃん…分かったわ。白雪さんは助ける。支部も潰す」



「それでいいのよ。妥協なんかせずに自分のやりたい事を全部やりとげなきゃ。欲望に正直じゃなきゃ人間じゃないもの」



 泡海の言葉にアルタは微笑みを返す。しかし、その表情が少しだけ寂しそうに見えたのは俺の気のせいなのだろうか。



 とにかく俺の部屋はこの人数が集まるには狭すぎた。全員がゆっくり座る事もできないので明日有栖の家で作戦会議をするという事で今日のところは解散する事に。




 それぞれが帰路についたところで、アルタを呼び止める。



「アルタ、ちょっといいか」



「な、なによわざわざ追いかけてきたの?」



 ハニーは隣家なのですぐに家に入っていったし、他のメンバーは有栖が呼んだ執事さんの車で送ってもらう事になった。



 アルタだけは「私はいい」と言って一人歩いて行ってしまったのだが、ここからならバスに乗って駅まで行かないといけないのは分かっていたので追いかけるのは簡単だった。



「お前は…どうしてそこまでするんだ?本当にファンが傷付けられたから、だけなのか?」



 アルタは俺の問いかけに目を丸くしていたが、ゆっくりと言葉を選ぶように口を開く。



「私はさ、アンタが思ってるよりきっと単純なんだと思うよ。正直嫌々やってるアイドルだけどそんなんでもファンが付くのは嬉しいし。偽物の力で得たファンだけどね」






 またあの寂しそうな笑顔だ。

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