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悪魔でも腹は減る(β)  作者: monaka
◆不幸が終わる話
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第五十一話:彦星アルタの場合・3


「つまり、アンタは生まれたてって事なの?」



「えっとぉ~。そうですねぇ、私、という自我を持つにいたったのはさっきですかねぇ~?でもこちらの世に出てきた瞬間にまさか感電するなんて思わなかったですぅ~」



 天使はアルタに涙目で訴える。



「だいたい分かったけど、それを信じろって?アンタが天使だって証拠はなんかないの?」



「証拠って言われても…じゃあ何か一つ望みを叶えてあげますぅ~」



 天使というのはこんな安請け合いをするものなのだろうか。



 アルタは半信半疑、いや、二割信八割疑だったが今一番の望みを伝えた。



「アンタのせいで電気止まってんのよ。なんとかして」



 天使は、「欲が無い人は好きですよぉ~」と言って一度大きく腕を振るった。



 その瞬間、アルタは天使という存在を信じるしかなくなってしまったのだ。




「ちょっと疲れてしまったのでぇ~寝ていいですかぁ~?」



「アンタ馬鹿じゃないの?こんな所で寝る気?」



 アルタが言い返すが、言い終わる頃にはすでにすぴーひゅるるーというメルヘンチックないびきが響いていた。



 あまりの出来事にアルタは気が動転しっぱなしだったが、天使の知り合いなどそうそう出来るものではない。





 とりあえず拾って帰ろう。




 そう決めて、天使の両足を持って引きずる。



 重たくてアルタには到底持ち上げられそうにないのだった。



 頭をずるずる地面に擦り付けながら運ばれているのに天使はメルヘンいびきを辞めようとしない。



 とりあえず自室まで運ぶと、アルタはベッドに寝かせようか一瞬迷ったが、引きずった為にあちこち薄汚く、そもそも全体から焦げ臭い臭いがするので部屋の隅に転がして置く事にした。




 そして、満を持して、オンラインゲームの再開である。





 それから数日が過ぎた頃、天使は相変わらずアルタの部屋に居着いていた。



「アンタ名前とかはないの?」



「生まれたてですしぃ~特にそういうのは…あ、もしよかったら名前つけてくれませんかぁ~?」



 天使の名付け親になるというのも面白いなとアルタは安易に考えてしまう。



 ずっと寝てるからネムリにしよう。



「でも名前を付けるって事はぁ~」



「じゃあアンタは今日からネムリよ」



「契約するって事でぇ~…あ。」



 その瞬間、天使のネムリとアルタとの契約が成立してしまった。



「ちゃんと説明聞いてからにしてくださいよぉ~もう遅いですけどぉ~」



 話を聞けば、契約が成立してしまったためアルタがネムリの宿主という事になり、ネムリの為にエネルギーを調達し続けなければいけないらしい。



「ちょっと聞いてないわよ!」



「言おうとしてたんですけどねぇ~


「こんなの詐欺よ詐欺!天使天使詐欺だわ!」




 そしてさらにショッキングな出来事ランキングは更新された。




 それからという物アルタはネムリの為、というより自分の命の為に外出を余儀なくされる。



 天使の活動にはエネルギーが必要で、特にネムリは幸福エネルギーとかいうのが欲しいらしい。



 それが枯渇してしまうとアルタ本人からエネルギーが吸い上げられてしまう。



 つまり、精気を吸い取られていずれ死んでしまうという事だ。



「その分いい事に使うならちゃんと望みは叶えてあげますからぁ~」



 気楽そうにいうその天使をアルタは何度殴ってやろうと思っただろう。


 そうしてあれこれ考えてちまちまやりたくもない善行をこなす事になるのだが、胡散臭いプロデューサーにスカウトを受けた事があり、それが今のアルタへのきっかけになった。



 アルタはもともとアイドルという職業に憧れがあり、自分がそうなりたいと思った時期も確かにあったが、自分の歌で人を幸せにしてあげたいなんて気持ちは微塵も持ち合わせていない。



 アイドル活動で歌を大多数の人間に届けられるのならばネムリの協力で声に力を乗せる。それを聞いた人間が半洗脳状態になり幸福になる。それで大量のエネルギーが手に入るのならば。



 それが一番効率の良いやり方ではないだろうか。


「アルちゃん、なんだかあくどいですぅ~それは人の道に反している気がするのですぅ~」



「うっさい。こっちはアンタの食費稼いでやってんのよ?幸福エネルギーが手に入るならどうやって手に入ったかなんて気にするもんじゃないわ」



 偽善者が寄付したって寄付金はちゃんとしたお金なのよ。





 アルタの性根は腐っている。



 それを加速させたのは天使。


 アルタは天使によって腐敗したのだ。





 そんなアルタでも、アイドルとして活動を続けるうちに強い拘りを持つようになる。



 ステージだけは完璧にこなしてみせる。





 それが彼女がこの義務に塗れた活動の中で唯一見出した楽しみだった。



 そうでもしないと、とてもアイドル活動なんてかったるい仕事を続けて行く事ができない。




 そしてあの日ステージが潰された。


 事もあろうに自分の胸を鷲掴みにされて。


 正確には掴まれたのも揉まれたのも主にパッド部分なのだがそういう問題ではない。



 それにあの男はステージ前に自分の着替えている所を女装してまで観察していた変態である。

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