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悪魔でも腹は減る(β)  作者: monaka
◆不幸が終わる話
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第四十五話:舞華権座衛門の場合・4


 数日後、舞華権座衛門はとある女学生の家を訪れる事になる。


 自らの力を知るために、そして、彼を守る力を手に入れるために。


 偶然にも、その学生、彼女も彼の事を守りたかったが、もうそれが出来ないのだという。おかしな偶然に戸惑う二人。



 だが、それを運命だと二人は感じた。


 一人は自分に出来なくなった事を引き継いでもらうために。



 もう一人はその意思を継いで守り続けるために。



 舞華権座衛門は星月乙姫の事を愛している。



 その愛情がどういう愛情なのかは深く考えていないが、その愛する友人が昨日病院に担ぎ込まれてしまった。


 付いて行きたかったが、師匠、つまり教師の織姫咲耶に諭され、皆一度帰宅する事となった。


 もともとは自分の責任だと権座衛門は考える。


 全ての始まりは権座衛門が渡したオカルトグッズが原因だ。それに、悪魔の存在を知った時、何がなんでもこの眼で見たいと思ってしまったのだ。


 乙姫を巻き込む結果になると解っていて、自分の知的探究心に勝つ事が出来なかった。



 友人を裏切ったも同然である。



 その責任を、権座衛門はどうにかして取りたかった。



 その責任を負い、解決する事こそが自分の存在意義、存在理由になったのだ。



 昔彼は笑って言った。



「ハニーが嫌いな名前の由来とか、どうしてそうなったのかを一度親に聞いたほうがいいぞ。意外とそういう所にも物語とロマンがあるかもしれないだろ?」



 幼い頃はそれが怖くて出来なかった。



 一度思い切り嫌がり、改名してもいいとまで言わせてしまったからだ。



「それでな、二年前に発掘した遺跡の事なんだけどな、パパは必ずここに何かがある!って感じたわけだよ。それでな、」



「パパ」



「そして掘り進めるうちに一つの事実が判明するわけだ、つまりこの遺跡は…」



「パパ」



 嬉しそうに遺跡発掘の思い出を語る父。



 語る事に夢中でなかなか食事に手をつけない父をニコニコしながら見つめる母。



 そんな二人に、今だからこそ、聞いてみよう。きっと簡単な事だ。



「ボクの名前ってなんで権座衛門なの?お爺さんって何考えてたんだろね?」




 怒って居る訳ではないので出来る限り軽いノリで問いかけると、思ってもみない返事が帰ってきた。



「ん…?それはあれだよ。うちの親父が昔海外で出会った人の名前を参考にしたとかなんとか…よくよく考えると海外で出会った人なのになんでこんな和風な名前に…」



 人の名前を参考に付けられたと言う事はその知人とはよっぽど不可思議な名前だったのだろうと権座衛門は頭を捻る。




「本当に嫌だったら名前変えたっていいのよ…?どんな名前だって私達の子供に代わりないんだからね?」



 母親から出た言葉は聞き覚えのある内容だったが、当時の権座衛門が考えていたような理由では無かったのだと気付かされた。



 二人は、名前などなんでも良くて、自分じゃなくてもいい。ではなく、自分の子供である事に変わりないから名前などどうでもいい、が正解だったのだ。



 本当に、実際聞いてみるとどうと言う事はない話で、二人が子供を愛しているのだという事も伝わってきた。こんな簡単な確認を今までしてこなかった自分は本当に愚かだと、権座衛門は深く反省した。



 そしてすっきりした顔で言う。



「ごちそうさま。ボクいかなきゃ」



 二人は頷き、優しい声で権座衛門に「いってらっしゃい」と声をかけ、見送った。




 早足で病院に向かう。幸い乙姫は外傷があったわけではなく、意識を失っているだけだと判断され海寄ランドの近くではなく、住まいに近い病院に搬送する事になったと咲耶から聞かされていた。



 なら場所は解っている。



 今頃目覚めて辛い思いをしているかもしれない。



 早く、会ってぎゅっとしないと。



 そして言わなければならない。



 ありがとうと。





 その時、ふと祖父の日記に記されていた天使の名前を思い出す。



 当時は変な名前だと思って特に気にしていなかったが、そこに記されていた名前は



 ゴウン・ザー・レイン




 実に馬鹿馬鹿しい事だと笑いが止まらなかった。



 答えはとっくに見つけていたのだ。





 そして権座衛門は、自分の名前に少しだけ、ほんの少しだけど愛着が湧いた。





「おとちゃん、こんな名前にも物語とロマン…ほんとにあったよ」


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