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悪魔でも腹は減る(β)  作者: monaka
◆彼女と元カノと集団行楽と痴漢の話
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第三十二話:さらなるミッション発動。


 波に揺られ疲れたのかほどなくしてみんながプールから上がってきた。



 楽しかったと口々に言いながら飲み物を買い、しばらく談笑しているとピンポンパンポーンという音とともにアナウンスが流れる。



『場内へお越しのお客様にプールエリアでのイベントのご紹介です』



 意味が無いとわかっていても皆が上空のスピーカーを見る。



 これは一体どういう原理なんだろうか。そこから音が出ているだけでスピーカーなんか見てもよく聞こえるようになるわけでもないのについついやってしまう。



『この後、十五時三十分よりプールエリア特設ステージにて彦星アルタによるライブパフォーマンスがあります。一時間程度を予定しておりますのでお時間のある方は是非お越し下さい。プールエリア内ですが特設ステージには遊園地エリアからもご入場頂けます。詳しくはプールエリア入口の職員まで。繰り返しお伝えいたします。この後…』



「あら、彦星アルタって確かテレビで見た事がありますわ」



 こういうのに一番疎いと思っていた有栖が真っ先に反応する。



「そのアルタとかいう輩は歌手か何かかのう?先ほどライブがどうとか言っておったが」



 白雪の問にいち早く答えたのは鼻息を荒くした泡海だった。



「ひ、彦星アルタちゃんと言えば現役中学生ながら某有名アイドルグループに在籍し一番人気を不動のものにした後電撃卒業発表をしてすぐソロ活動に移り、そちらでも現在シングル十三枚を世に送り出しそのすべてがチャート一位、アルバムも二枚、もちろんチャート一位の伝説的天才アイドルなんです!ほ、ほかにも…ッ」



「あーあー、もういいのじゃ。よくわからんがなんとなく凄い奴なのはわかったのじゃ」



「よくわからんじゃダメです!アルちゃんの素晴らしさをきちんと理解してもらわなければッ!」



「人魚先輩、ちょっと黙ろ?」



「ハイ喜んでッ!」



 ハイテンション状態の暴走泡海を一言で黙らせるハニーすげぇ。できる限り泡海と行動する時はハニーに一緒に居てほしい物である。



「んで、どーすんだ?せっかくだし見てくか?時間もあと二十分後なら着替えて集合でもいいだろうし」



 咲耶ちゃんの一言と、泡海の強き希望により彦星アルタのライブを観戦する事が確定した。



 のだが。




 俺の心中は正直穏やかではなかった。いろいろと思い出してしまったのだ。あの時のあの少女が彦星アルタであるという事を。



 どうりで顔を見たことがある筈だ。もともとアイドルとかに詳しく無いのですぐに気付く事が出来なかった。気付いていればもう少し長く見れるように立ち回ったものを…。



 などと邪な考えを振り払いつつ、何故人気アイドルなんかが一般の更衣室で水着に着替えていたのかを考える。



 普通専用のワゴンとかそういう車が用意されてその中で着替えてくるものじゃないのか?



 何か事情があったんだろうが…もしかすると帽子とサングラス、マスクは変装用で、ライブ前にプールで少し遊ぶためだったのかもしれない。



 その線が濃厚な気がした。



 とにかく実際どうだったのかは考えてわかるような事ではないのでおとなしく更衣室で着替えていると、



「準備はよいか?」



 再びロッカーから悪魔が生えていた。



 ただ呼びに来ただけとは思えない。またか?さすがにペース早すぎやしないか?



「ちょっと確かめたい事がある。お主も気付いただろうがあの時の女がライブをするアイドルじゃろう?」



 白雪も泡海がアルちゃんと呼んだ事で気付いたようだった。しかし、あの子がアルタだと何か問題があるのだろうか。



「とにかくこっちに来い。みんなにはお前が尋常ならざる腹痛で遅れるから先に行くように伝えておいた」



 相変わらずそういう根回しは早いな。



 言われるがままに白雪について行くと、ライブをする特設ステージの裏手側についた。



「これからやるライブとやらであの女と一緒にステージにあがる熊の着ぐるみがあってな」



 それがどうした。なんとなく予想はつくが…



「とりあえず中に入る予定の男を昏倒させてトイレの個室に放り込んできた」



「馬鹿かてめぇ何してやがる!」



 さすがに怒らないといけない場面だろう。なんの罪もない着ぐるみの中の人を昏倒させるとは…



 俺が呆れていると、そんな事はお構いなしで話を進めてくる。



「お前はとにかくその着ぐるみに入ってステージに上がるのじゃ」



「どんな動きするのかしらねぇしすぐにバレるぞ」



「そんな事はどうでもいいわい。とにかくあの女と接触するのじゃ。できればキツいのがいい」



 キツい接触ってなんだよ。



「そうじゃな…背後からあの女をぶん殴るとか蹴り飛ばすとか乳を揉むとかでいいんじゃが」



 物騒すぎる!



「どれも犯罪じゃねぇか!」



「そこはほれ、今日いろいろあった役得の代償だと思って諦めろ。とにかく必要な事なのじゃ」



 そうは言ってもいたいけな中学生を殴る蹴るはさすがにまずいだろ…



 残る手段は一つしかなかった。別に最初からそれが良かった訳じゃないぞ。消去法で仕方なくそれしかなかったってだけだからな。


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