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悪魔でも腹は減る(β)  作者: monaka
◆生徒に怨まれる話
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第二十一話:はじめての彼女。


 …ふう。これでなんとかなるだろう。先輩の事だからタクシー代が払えないと言うこともないだろうが取り合えず運転手に二千円ほど渡したので懐が少々寂しくなってしまった。



 家の向かいにある自販機で缶コーヒーを買い、一気に飲み干す。普段飲まないブラックにした事で少しだけ気持ちが落ち着いたような気がする。が、苦い。



「いつのまに、そんなに仲良くなったのかな…?しかも先輩泣いてたよね?おとちゃんいったい何したの…?」



 なんかこの展開デジャブるんですが…。



「いろいろあったんだよ…いろいろ、な…」



「ふぅん。まぁ別にいいけど…ただ銃声みたいなのしてたから心配して様子みてたんだよね。何をこそこそやってるのかは知らないけどあまり危ないことしないでよ?」



 今はこの優しい言葉が本当に身に沁みる。持つべきものは心の友だなぁ。



 翌朝、ハニーと二人で学校へ向かう。白雪はまだ寝ているので放置してきた。後から行くとか寝ぼけて言ってたので大丈夫だろう。もう少しで校門というところで校門前に立っている人魚先輩が眼に入った。



「おはよう。昨日は…迷惑をかけてしまったわね」



 先輩はすっかり自分を取り戻したようだった。が、少しだけ様子がおかしい。ちらちらとハニーの方を見てはそわそわしている。



「あの、昨日おとちゃんの家に来てた事については詮索しないけど、おとちゃんに危害加えるような事があったら許さないからね」



 キッと険しい顔でハニーが先輩を睨む。



「…はぁッ、は、はい。勿論です。危害だなんてそんな…天地神明に誓ってそのような事は無いと約束します」



 なんだか体をくねらせながらやけに丁寧に答える。ちょっと先輩の様子がおかしいな。



「ほんとに?それならいいけど…おとちゃん、何かされたらすぐに言うんだよ?…じゃあボク日直だから先に行くね。朝のうちに先生の所に来るように言われてるんだ」



 そう言って小走りに校舎へ入っていくハニーを人魚先輩は潤んだ眼で見送ってから「話があります」と言った。




 校門前で話しているのは少々目立つので(ただでさえ先輩は目立つのだ)場所を校舎裏に移動する。




「昨日の事、いろいろ考えたのだけれど…私の秘密その一については詮索しない事、秘密その二については他言しない事と黙認する事。その代わりに私は貴方の行動に眼を瞑る…それでいいかしら」



 それは…願ってもない結果である。お互い不干渉という事ならそれが一番お互いの為になるはずで…



「そして、もう一つ提案があるのだけれど」



「え、お互いこれで手打ちで終了じゃないんですか?」



「私には日本美少女連合総会長としての責務があるのよ」



 そっち絡みのやつか…面倒な話じゃないといいんだけど。



「勿論、断るようなら貴方が更衣室に侵入して私を含め女子の荷物を漁っていた事実を公表します」



 有無を言わさず言うことを聞かせるつもりじゃないか。



「どうしてこちらが秘密の暴露っていう行動にでないと思うんですか?立場は対等の筈です」



 しかし、先輩はふっと笑うと、「笑わせないで」と切り捨てる。



「私と貴方が対等な筈ないでしょう?最悪お互いが秘密を暴露しあったとして、この学校の生徒は、教師達はいったいどちらの言い分を信じると思う?百パーセント私は言いくるめる自信がある。貴方が変質者で、最悪の場合あのデータも貴方が抑えられない性欲の捌け口として収集した物だと皆に信用させる自信がある」



 この女とんでもねぇな。…しかし、実際どうだろう。言うとおりの状況になったと過程して考える。俺の言うことを信じてくれそうなのは…ハニーと咲耶ちゃんと…有栖もなんとか…でもそれくらいだろう。むしろ他の連中は俺が盗撮画像やらなにやらで先輩を脅していたとかそんな風に認識するだろう。



「…とりあえず内容を聞かせて下さい。それから考えます」



「考えたところで貴方はYESと言うしかないのは解っているでしょう?とにかく、こちらの提案は…」



 そこで先輩は一瞬止まり、なんと言おうか少し悩んだ後「そうね、舞華さんと…その、お近づきになる手伝いをしてほしいの」と言った。



 ……は?ハニーと??



「どういう事ですか?ハニーと?」



「そう、そうよ。私はね、この学校の全女子生徒は網羅しているし徹底的に調べてあるの。転校生の白雪さんは…悪魔だっていうし対象外だとしても、舞華さんの事はこちらに情報が何もないわ。いったいどういう事…?リスト洩らしは無いと思うのだけれど…とにかく、あんなに可愛らしい人を私が見逃していたなんて…」



 あぁ…うん、なるほどね。そうなるか…まぁしょうがない。それくらいなら許容範囲だ。



「そういう事なら大丈夫ですよ。後で三人で一緒にどこか行きますか?いきなり二人とかじゃハニーの方が警戒すると思いますし。どうです?」



 とたんに先輩は見た事がないほど明るい笑顔で「ほんとに!?ほんとにいいの!?」と大喜びした。よっぽどハニーの外見がドストライクなのだろう。



「あの可愛らしい外見から放たれる殺気の篭った視線と言葉…あぁ、たまらないの…」



 …あれ、ちょっと判断を誤ったかもしれない。ハニーに対する好意のベクトルが何か違う気が…まぁ、いいか。すまんハニー、これも俺に悪魔を押し付けた業として背負ってくれ。



「あ、そうそうもう一つ」



 ん?まだ何かあるのだろうか。



 しかし、先輩がさらっとついでのように放った言葉こそが俺を崖っぷちへと追い詰める事になるのであった。




「貴方、私と付き合いなさい」





 かくして、俺は学校で一番の嫌われ者に昇格してしまったのであった。

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