Q,貴方が変態になった理由はなんですか? A,子供の頃に幼なじみの奴隷娘のすっぽんぽんをローアングルで眺めたからです。
ある日の事である。 屋敷に幼馴染みで使用人の彼女、リオナと俺、アレクシスが二人で暮らしていた時の日常の中で、どうしようもない事を思い出したというだけの話だ。
夕方近く、仕事も一段落して何気なく屋敷をぶらぶらしていると、通路の途中に何かが落ちているではないか。
白いレースのパンツである。
通路の先には洗濯物を干すのに利用している二階のテラス。 察するにリオナが洗濯物を取り込んだ際に落としてしまったのだろう。
そのまま放置するのがベストな選択肢だったのだろうが、その時は何故かそのパンツを拾い上げてしまったのだ。
無論、言わずとも分かる筈だがこのパンツは彼女の物である。 自分はレースのこんなぴったりフィットしそうな下着を履いたりはしない。
さて、拾ったはいいが別にこれをどうこうしようなど微塵も考えてはいないのだ。
世の中には女性の身体そのものよりも、こういった下着に興奮する輩も居るという話だが自分はそんな事はない。 例えこの下着が彼女が股間に密着していたものであり、彼女の大事な部分に張り付いたり擦れたりしてた物であろうが布は布なのだ。 ましてや洗濯済みの物になんの価値があるというのか? 事実匂いは石鹸の香りしかしなかった。 やはり布は布なのだ。
とりあえず両手で摘まんで掲げていると、足音が近づいて来ているのに気付く。 足取りが不規則でウロチョロしているようだった。
「………あれぇ? ない……足りないから落としたと思ったんだけど……」
通路の角からこっそり覗いてみると、やはりというかリオナだった。 まあ、この屋敷に住んでいるのは俺と彼女だけなので俺以外の誰かと言えばリオナしかないのだが。 まあ、それは良いとしてリオナがウロチョロとして探しているのは、十中八九今自分が被っているレースのおパンツだろう。
とりあえず彼女を困らせる気は微塵もないので素直に返す事にする。 俺は拳の中にそのパンツを握り締めながらやれやれと溜め息を吐く。
「おーい、リオナ」
未だ通路の向こうでウロチョロしているリオナに何気なく声を掛けて、それから彼女は振り返る。
「あっ……わ、若旦那様」
なんとなく狼狽えているような素振りだったが、気にせず例の魅惑のブツを「これ落ちてたぞー」と軽い感じで渡す。 さらばパンツまた逢う日まで。
「……え、ちょ、なっ!?」
渡された物が自分の下着だと認識すると、彼女の顔が一瞬で真っ赤になる。 茹でたタコみたいという比喩があるがその通りだった。 湯気まで出ている気がしないでもない。
「な、なななななんでこれをどこで!?」
わたわたばたばたと身振り手振り狼狽えるリオナ、まあかわいい反応だと思う。
なんというか、リオナは羞恥心と言うのが半端なく強いのだ。 下着渡されただけでこれである。
「え、えっとその、お、落としちゃ…おちょしてしまいまして!! すいませんっ!!」
台詞をかみかみ慌てふためきながら走り去るリオナを眺めながら、ふと思い出が甦る。
「………そういや、リオナの恥ずかしがりやなあの性格、俺が原因と言えば原因なんだったな……」
そう、彼女の異常なまでのアレは、自分に原因があるのだ。
◇◆◇
あれは俺が14歳の夏の日の事だった。 その日はこの地方にしては妙に蒸し暑く嫌な日だった記憶がある。
部屋に籠って本を読むにもジメジメとして嫌な汗をかき、ならばと外へ出ようものなら降り注ぐ陽射しでノックダウンさせられてしまう事必至である。 俺は基本的に体力はこれっぽっちも持ち合わせていない。 日陰でダンゴムシの如く暑さを凌ぐぐらいしか俺には出来なかった日だった。
しかし、半分幼なじみであり、半分妹みたいな年下の奴隷娘、リオナはそんな俺を馬鹿にするように提案してきた。
「あついし水浴びしたい。 付き合って」
お前の誘いなんぞお断りだッッ!! と、普段ならそう言うだろう。 何せこの幼馴染みの奴隷女は事もあろうに主人の息子である俺を事ある毎にぼっこぼこのぎったぎたにするわ無理矢理誘拐紛いの方法で俺をふんじばってはどこぞの山やら谷やら森やらへと引きずるように連れ出すのだ、いい迷惑である。
しかし、この時ばかりはその水浴びしたいとの提案に賛成したものだ、暇さえあれば本を読んでいたい俺ではあるが、何しろ暑い、暑すぎる、とてもではないが読書に集中出来る環境ではなかったのだ。
「なら早くいこ? 汗ベタベタで気持ち悪いし」
「……はいはい、それじゃ近くの川まで行くか」
そういう訳で、その日は水浴びのために屋敷にほど近い、水遊びするのにうってつけな場所へと二人で向かったのだ。
その川は、川と言っても流れは穏やかで、流される心配もない、それに森の木々が周囲を囲んで陽射しも遮ってくれているので、屋敷の中に比べるとかなり涼しいのだ。 街からも離れているのでその場所は二人だけの秘密の遊び場でもあった。
「夏はここに居座ってるのが一番避暑になるなぁ……去年も来てたのにすっかり忘れてた」
「冬は来ないもんね……んしょ……」
着いた途端に脱ぎだすリオナ。 だがまあ、それも毎年の事である。
最近は入っていないが風呂だってずっと一緒に入ってたぐらいなのだ、特に何か思う所などその時点ではまったくなかった。
「はやく入ろうよ? 脱がないの?」
ちなみにその時、俺は足を水につけながら読書に勤しむ気満々で、さっさと川縁の丁度いい大きさの石に腰掛けて本を開いていた。 涼しい場所に来たならとにかく本を読める環境という事である。
全身水に浸かる気など初めから更々なかったのだが……。
「ひとりじゃつまんないから脱げ」
ガシィッ!! と大人もビックリな握力で襟首を捕まれ引っ張られる。 腰掛けた石から引き摺り落とされ、砂利だらけの地面に背中を着ける。
「痛ってえな!? なにすんだ!?」
「あによ、文句あんの?」
おおありだこのメスゴリラァ!! と言う俺の台詞は口から飛び出す瞬間に引っ込んだ。
「はやく遊ぼうってば、水遊びしに来たのに本なんか読んでるあんたがおかしいんだからね?」
彼女は既に全裸だった。 いや、それは脱いでいたのを認識していたのだから分かっていたのだ。
「………………」
「なに?」
それにも関わらず、見慣れてというか、何も感じる事もなかった筈の彼女に、その時初めてみとれてしまった。
ちなみに水遊びするのに水着とか着ねーの? という疑問も浮かんだが、そんなもん着る訳がないのだ。 二人とも風呂だって一緒に入ってて、しょっちゅう一緒のベッドに寝てお互いおねしょ引っかけあった仲である。
まあつまり、子供の内は裸だろうがなんだろうが別に恥ずかしくもなんともないのだ。
なんともないし何も感じる事はない。 というか、そういう事を意識したことがない。
「……………」
「…………?……なに? なんでぼーっとしてんの?」
仰向けに倒れる俺の顔を、仁王立ちしながら覗きこむリオナ。 つまり、そういう事だ。
「……っ!? ちょ、いやなんだそのな!?」
彼女をその視点から眺めているのに凄まじい罪悪感に苛まれて、慌てて起き上がる俺。
「???」
俺は焦った。
そしてひたすらビビった。
それまでは……一年ぶりぐらいに見た彼女の裸が、チビガキのすっぽんぽんではなくなっていた。
視たらイケない女の子の裸体になっていたのでビビった。
「………お前、そういや今年いくつだっけ?」
「へ? えっと、たぶん十一……あれぇ? 十二歳だっけ?」
「……………」
十一歳か十二歳。
そうか、よくよく考えたらその辺りの年頃なら成長期なのだし、いつまでもチビガキではないという事だろう。
その時考えた理屈としては、リオナは奴隷という身分故に、学校とかは通っておらず、同じ年頃の女の子が男の前で裸見せたらどうなるかってのまるで理解してねーなという事だった。
それでも屋敷に居る誰かがその辺キッチリ教えろよ!!!! とも内心思った物である。
……まあ、これはだいぶ後で気付いた事だが、彼女の場合は奴隷なので羞恥心など邪魔にしかならないという判断だったから、あえてそういった事への教育は省いたのだろうなーと、後々になってから思い立った訳ではあるが……。
「………と、とりあえずだな? 裸はやめろ、下着だけは付けとけ」
「なんで?」
……なんでじゃねぇよ!! と、俺は内心で無知という名の暴力へツッコミを入れた。
とにかく、この羞恥心というもんに無関心過ぎる彼女をどうにかせねば……と、俺はその時股間を押さえながら決意したのだ。
そして後日、俺は彼女の羞恥心を呼び覚ます為に、ありとあらゆる手段をこうじた。
「えっ、な、なに? くすぐった……にゃあ!?」
ある時は身体をまさぐり。
「ひぅっ!? な、なんでトイレに入ってくるのよ!! 出てってよ!! も、漏れちゃ……!?」
ある時はトイレを限界まで我慢させ、その上で用を足す時に無理矢理侵入し。
「ちょっと!! これアンタのでしょ!?わ、私のベッドにこ、こんな変なの置いてなに考えてんのよバカ!! 変態!!
変態ぃ!!」
またある時は、具体的過ぎる描写を描いた絵画を見せつけた。
「……し、信じらんない!! 変態!! しんじゃえ!! 気持ち悪い!!」
その度に俺は、不当な暴力により生死をさ迷ったが、後悔はしていない。
「……う"ぅ……な、なんなのよぉ……」
──彼女に、真っ当な人間らしい感覚を植え付けられたから、俺はそれで良かったのだ。
決して恥ずかしがる顔を見たいが為に性的嫌がらせの数々をしていた訳ではない。
……本当だよ? 楽しんだりなんかするもんか。 はっはっはっ。
ついでに言うなら、使用人となった彼女が度々俺を変態と罵るようになった原因もこの頃の俺の影響だろう。 なんて理不尽な仕打ちだろうか、俺は彼女の為を思ってやった事なのに。
「………ふぅ、しかし……やり過ぎだったかなぁ? ははは」
過去の思い出を振り返り、それに笑う。
あの頃の自分は若かった。 と、そんな風に考えるほど人生を長く歩んでいないが、わりと濃い目の出来事も多いのも事実。 ちょっとぐらいなら思ってもいいだろう。
出来る事なら、彼女にも思い出話で笑えるようになって欲しいとも。
「……………そういえば……」
回想が回想を呼び覚ます。 というのはよくあるのだが、今回は自分の事への客観的な判断が思い立った。
「…………アイツの裸見た時からだな、小さい子が好みになったのは。 人間性癖は思い出と直結するっていうからなー」
しみじみと語るにはアホ臭い事ではあるが、これがけっこう馬鹿には出来ない要因だったりするのだ。
ただ、それだけの話だ。
そして、この数日後、俺はひとりの幼い容姿をした女の子を衝動買いする事になる。
この短編は『売られてた奴隷少女にガチ惚れして衝動買いしてしまった』のエピソードのひとつとなっております。
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