第20話 彼方より迫りて その5
「ありがとうございますソウタさま……。世界を見せて頂いただけでなく、こんな私を受け入れてくださるなんて……」
情事を終え、ベッドに横たわっている二人。本懐を果たしたリンは、ソウタの腕の中で喜びに咽び泣いていた。
「俺にもし万一があったとしても、結果が分かるまでは早まらずに、何があっても生き延びてくれ。今ここで約束するんだ」
「はい……。ソウタさま」
小指と小指で指きりげんまんの約束を誓う。
「もちろんこれは遊びじゃ無い。きちんと責任は取る。それは約束する……」
「勿体無いお言葉ですソウタさま……」
リンは喜びに打ち震えながら泣いていた。
「わ、私ごときは……ソウタさまと釣り合う身分ではありません。女王陛下や将軍閣下とは比較にも……」
「こっちの身分なんて俺の知ったことじゃない。ヒトミもエリも俺の幼馴染で、三人とも向こうじゃ唯の平民だったんだ」
アンジュを送り出した時から、ソウタは腹を括っていた。
それで少しでも相手が満たされ、生き延びようとしてくれるのなら躊躇しないと。結果が実を結んでしまったのなら、その責任は絶対に取るのだと。
「ありがとうございますソウタさま。ですが私は貴方のお傍にさえ居られれば、それで十分ですから……」
リンはソウタの秘書官として傍に居られればそれでよく、結果を出したとしても愛人扱いで構わないとまで言う。だが、ソウタはそんな事はしないと改めて告げた。
「では、その話はもしもが現実になった時に致しましょう……」
リンは優しい笑顔をソウタに向けた。
「ソウタさまは……怖くないのですか?」
「そりゃあ怖いよ……」
リンは身体を重ねた際に、ソウタが震えていたのを感じていたのだ。
「だけど今度の作戦、俺でなければ駄目なんだ……」
ソウタが震え出したので、リンはソウタを腕で抱いてその胸に埋めさせた。
「怯えたときはこうやって心音を聞けば落ち着くと、亡き母から教えてもらいました。私は奥様や陛下ほど胸が豊かではありませんが、その分、直にお耳に届くかと……」
ソウタは無言でリンに縋りつき、彼女の鼓動と心音に癒しを求めた。リンは優しく受け入れ、その背中を優しくさすり続けてた。
「ありがとうリン」
「こちらこそありがとうございましたソウタさま……」
しばらく休むというリンを残して部屋を出ると、メリーベルが外で待っていた。
「よっ色男!これで何人目だい?」
「冷やかさないでくれよ」
室内での情事は、外で待っていたメリーベルには容易に察せられていた。
「いよいよ本当に戦になっちまうんだ。誰だって死ぬかもしれないと思ったら、自分の想いに正直になるってもんだよ」
「だからメリーベルはいつも自分に正直なのか」
「本当にそう思うのかい?」
そう言うと、メリーベルはソウタを壁に押し付け、思い切り顔を近づけてきた。いわゆる壁ドンだ。
「閣下に拾ってもらってからは、気を使わなきゃいけなくなってさぁ、随分と我慢してるんだけどねぇ……」
彼女の妖艶な香りが、柔らかさが、ソウタの五感を刺激する。ソウタは思わず息を呑む。
するとメリーベルはソウタの股間に軽く手を当ててきた。
「ふふん。まだまだ大丈夫みたいだね……。でもまだ我慢しておくよ。今度の作戦、アタシは絶対に成功するって確信してるからねぇ」
「根拠は?」
「決まってるじゃないかい。閣下が立てて、自ら実行するからだよ。何処に不安があるっていうんだい!」
そういうとメリーベルは無邪気な笑顔を向けて、ソウタを開放した。
「なあに。本当に地獄の釜に飛び込む事になったら、その時は必ず閣下から頂戴するからね。嫌と言われても強引に分捕っちまから覚悟しときな!」
カラカラと笑いかけると、メリーベルは立ち去ってしまった。
「……」
ソウタはそのまま帰宅した。




