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第19話 結ばれしもの その6

 国内のダム建設の最中、彼の会社の一行がトンネルを潜って現場に向かう最中に偶然、古代のカ・ナンに出てしまったのだという。


「最初はもちろんビックリしたさ。だが、現地の人たちが渇水や水害が極端に発生して苦しんでいると知ってな、とんとん拍子に話が進んでしまったんだよ」


「そんでダムは好きに作ってよかったから、千年以上持たせようって設計まで気合入れて作ったのさ」


 時期的に、自然保護の問題が言われてきた頃だったこともあり、ダム工事は時々停止してしまっていた。その間にタガミたちは機材と資材を少々横流ししていたという。


「横流しであんなものを作れたんですか?」


「いや、大半の建設資材は現地調達さ。向こうの王様が全面協力してくれたから、コンクリの材料は現地で調達できたんだ。だからこっちからの持ち込みは、燃料とか重機とかだけで、バレない程度で済んだんだ」


 タガミはにこやかにかつてを振り返っている。 


「あの頃は随分と景気が良くて、どこでもどんぶり勘定で回していたからねぇ。少し余分に調達しても発注主に気付かれなきゃよかったから、そのうちみんな気が大きくなって、中古の重機も調達して、持ち込んだりしたんだよ」


 そのうち、現地で軽油に近い燃料の調達に成功し、操縦方法も伝授したりするなどして機械化も進め、作業は国内のダム建設以上に順調に進んだという。


 そうして完成したのがカ・ナン湖を数倍巨大化させた、あのダムだったのだ。


「そうそう十年近く掛けてダムだけじゃなく、技術指導して河川に堤防や水路の整備もやったよ」


「それで、工事が終わった後は?」


「ああ、向こうの方が楽しかったとか、向こうで嫁さん作ったりした連中も結構いてな。気が付いたら関わった連中のほとんどは、退社して向こうに移住しちまった」


 カ・ナンにオオトリやシシノの苗字が残っていたのも、その名残かもしれないと、二人は思うようになった。


「俺は日本に未練があったから戻ってきたが、今までずっと誰にも言わずに黙ってたんだ。まあ、誰も信じちゃくれないだろうからな」


「それでお願いがあるんです。そのときの図面とか、残していませんか?特に水路は随分埋まってしまったんですが、しっかり作ってあったので、掘り返せば使えたんです」


「そうかそうか……」


 そうつぶやくとタガミ氏は一度車に戻ると、大きな筒を三つ持って来た。


「これは向こうで作ったダムやら水路やらの図面だよ。このまま俺が墓まで持っていくより、君らが活用してくれるなら何よりだ」


「ありがとうございます!」


「そうそう、ついでだ」


「俺たちをあそこに招いた魔法使いに頼んで、使った重機の何台かは時間を止めて保存してもらっている。まともに考えたらとっくに鉄くずだろうが、もし魔法がまだ生きていて無事なら、改修工事に使えるだろう」


「本当ですか?!」


「だが、条件がある」


「条件?」


「俺たちは住民の生活を良くする為に、平和利用するためにあれを作ったんだ。だからもし重機が無事だったら、改修や整備のためだけに使って欲しい。そして決して戦いの道具には使わないと約束してくれ」


「わかりました。人々のために大切に使わせてもらいます!」


 タガミから当時のカ・ナンの地図に、重機を封じた場所を記入してもらった。


 ソウタとヒトミは深々と礼をしてタガミを見送った。


「わかりました。もし使える状態で発掘しても、敵を攻撃する兵器としては絶対に使わないし使わせないわ」


 カ・ナンに戻ってエリに報告すると、直ちに調査団が送られた。


 魔法使いたちが先代の張った結界を解くと、洞窟の中にパワーショベルにブルドーザー、コンクリートミキサーをはじめとする建設用重機が、多少埃を被った程度で動態保存されていた。


 持ち込んでいた燃料を補給して王都近郊まで運転して持ち帰ると、すぐさま防衛線の増設が開始された。


 神代の時代に封印されていた鉄の獣の力は人力の比ではない。


 何十倍もの効率で土砂を掻き分け、埋もれていた巨石を粉砕し、盛土、空堀、塹壕を作っていく。


 その間にもゴ・ズマの軍勢の動きと規模の情報が刻々ともたらされる。


 その規模は前回の十倍以上は確実で、カ・ナンだけでなくこの地域一帯全てを征服せんと目論んでいるのは明確だった。


「このカ・ナンに、その軍勢のどれだけが向けられるかはわからない。でも間違いなくゴ・ズマは前回の雪辱を晴らすために、このカ・ナンにかなりの数を差し向けてくるのは疑いないんだ!」


 装備はさらに改善され、訓練もより近代的なものになっていく。さらに大量の負傷者の発生に備えて、救護の訓練も行われている。


 そしてコンクリートも続々と生産され、防衛線や王都の城壁を補強していった。

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