表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

67/153

第15話 証を求めて その2

 その夜も早めに寝た。瞼を閉じる直前、窓に映った月に雲がかかっていくのがやけに瞼に焼き付いていた。


 夜遅い時間だろうか、酷い夢を見ていた。


 敵は怪物さえ引き連れた圧倒的な大軍だった。


 だがこちら側は防衛線の構築が間に合わず、野戦に持ち込まれて次々と蹴散らされていく。ほどなく王都の城門が破られ、王宮も火の海に。


 気が付くと自分は捕らえられていた。振り向くとヒトミもエリも捕らえられ広場に連れていかれる。


 待っていたのは巨大な斧を持った怪物のような大男が三人。


「やめろ……」


 乱暴に壇上に押さえつけられる三人。ソウタが横をなんとか振り向くと、エリめがけて斧が振り下ろされる。


「やめろ!」


 台を斧が叩く音と群衆から湧き上がる歓声。何も、何もできなかった。


「ちくしょう ちくしょう!」


 次はヒトミの番だった。


 何とか振りほどこうともがくが何かがのしかかってきて動けない。


 かろうじてこちらを向いたヒトミが懸命に口を動かしていた。


「ごめんね……ソウタくんごめんね」 


 直後に斧が振り下ろされる。


「やめろぉ!」


 だが、直後に場面が変わる。


 何かに圧し掛かられて体が動かないのは同じだが、先ほどと打って変わって柔らかな桃色の、まるで母親の胎内にでもいるかのような優しい暖かさに包まれているのだ。


 乾いた口に温めの僅かに甘い水が流し込まれるので飲み干す。五臓六腑に染み渡る甘さだった。


 ほどなく火照っていた身体が開放されたのか上半身から楽になっていく。やがてゆっくりと下腹部から股間まで開放されていき、その心地よさに敏感に反応して股間が立ち上がる感覚が。


 するとそこに、人肌の温かさの何かが塗りつけられるのを感じる。心地よく気持ち良い感覚だが、このままでは絶頂に達してしまうと思った時、唐突に世界が切り替わってしまった。


 外からは屋根を叩きつける大きな雨音が聞こえてくる。豪雨のようだ。


 ゆっくりと目を開けると、誰かが傍にいるのがすぐに分かった。ほんの間近にやわらかい匂いが、肌に触れる髪の毛が、そして見知った顔があったからだ。


 夢から覚めたばかりで頭がほとんど機能していないので状況はよくわからなかったが、ヒトミが自分に馬乗りになって、顔を覗き込んでいたように見受けられた。


「なんだ、ヒトミか……」


「!!」


 その直後、ヒトミは声も挙げずに脱兎のように飛び上がると、部屋の隅に離れて小さく丸まる。


 そして壊れたスピーカーのように、滅茶苦茶な声を挙げて泣き崩れてしまった。


「……ぁぁあ!あああ!!」


「なぁ……何があった?」


 ヒトミは突拍子も無いことをしでかした直後に、我に返ってうずくまって泣きじゃくってしまう癖があった。


 ソウタは起き上がったところで異変に気が付く。着ていたパジャマは上着の前ボタンが全て外され、シャツも上に上げられ上半身はむき出しにされていた。


 さらにズボンもパンツごと膝下まで下ろされて下半身が露にされていたうえに、ぬるぬるとした生暖かい粘液が、股間に塗りたくられていた。


 電気を点け、何とかズボンを戻したソウタは、這うようにヒトミの傍に向かう。


 足元に蓋の開いたチューブが転がっていた。それはローションで、しかも髭剃り用ではなく性的な用途のものだった。


「っ!!来ちゃダメ!来ちゃダメぇ!」


 ソウタの接近に気が付いて、必死に喚くヒトミ。


「……。いいから全部話してくれ」


 ソウタはヒトミの眼前に腰を下ろす。ヒトミの姿を見ると、着ていたのは彼女用のパジャマでなく、サイズが大きすぎるソウタのTシャツ一枚だけ、それも自分が昨夜着ていたものだった。


「私、最低なの!最低のケダモノなんだよ!!」


「さっきは……何をしようとしてたんだ?」


「……ぁぁあ!あああ!!」


 ソウタは弱々しく、そして優しい声で尋ねるが、ヒトミは髪を振り乱しながら泣きじゃくっていた。


 Tシャツの首まわりは彼女には大きく広がりすぎていて、今のソウタの体勢からは、そこから彼女の胸からお腹まで、あられもない姿が見えていた。


 上は胸の先端まで見えているからやはりTシャツ以外に着ていない。


 裾も腰元までまくりあがって、こちらも太ももから腰まで丸見えになっていたが、ショーツを履いている様子が無い。


 自分の着衣を上下とも開放し、股間にローションを塗りつけ、文字通りTシャツ一枚だけの格好で、ソウタの腰に馬乗りになっていたという事は……。


 ダウンした当初はともかく、ここ最近回復が芳しくなかった理由は、そういうことだったのだろう。


「いいかヒトミ、俺は何も怒っちゃいない……。教えて欲しいだけだ……」


「私は、私はぁ!」


 そこから、関を切ったようにヒトミは自分の所業を話し始めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ