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第12話 波涛を越えて その2

 定時の連絡を行うソウタ。


『メリーベル、そっちは順調か?』


『まあねぇ若旦那。だけどそろそろ仕掛けてくるだろうね。なにせあと少しでクブルなんだからさ。連中も狙うならそろそろだろうよ』


 事実、以前にクブルの船団が襲撃を受けて引き返した海域にはすでに入っているのだ。


「見張り!しっかりやんなよ!」


「アイアイマム!」


 マストの上に立って見張る船員。

 使っているのは日本から持ち込んだ高倍率の双眼鏡だ。水平線に浮かぶ船さえハッキリ見えると、見張りに立った者たちはみな絶賛している。


 見張りから報告が入る。


「頭ぁ!見えました!正面に船影!数は……6っ!」


 報告を受けてメリーベルも双眼鏡を構える。


「確かに6隻。進路はこっちに向かってきてるねぇ……」


 すぐに海賊の接近を知らせる。


『噂の海賊なのか?』


『連中、旗印はまだ出してないから何ともいえないけど、数は合ってるからね……』


 双眼鏡を下ろすと指示を出す。


『若旦那!警戒しながらついてこいって他の船に伝えとくれ!』


 ソウタは船長にその旨を伝えると、旗艦が手旗信号を送る。後続はさらに距離を詰める動きに入った。


 後続の船が統率を乱して逃げ出す恐れは今のところ無いが、武装も護衛も最低限なので、海賊船団と殴りあうのは危険なのだ。


『相手はどう動いてる?』


『見たところ、こっちを囲うように動いてるねぇ』


 風が向かい風になり始め、こちらの船足は鈍り、逆に相手の船足は増している。


「頭ぁ!向こうの大きなヤツが旗を掲げやした!」


「へぇ、あれかい。青いキツネってのは」


 相対距離はおよそ7kmほど。高倍率の双眼鏡にははっきりと相手の旗の意匠が見えている。黄色地に青いキツネが描かれているのが確認できた。これが巷を騒がせている海賊団青いキツネであった。


「まあ連中には多勢に無勢に見えてるんだろうけど、生憎こっちには新兵器があるんでねぇ」


『若旦那、悪いけど白イルカの準備してくれるかい?!』


『わかった。すぐに準備する!』


 ソウタはアタラに白イルカの使用を伝えると、船室に入って着替えを始めた。アタラも別室で同様に着替える。


「トウザ殿?!」


 海賊船の接近と聞いて怯えて泣いているジュシンを宥めているアンジュが、ウェットスーツとヘルメットに着替えたソウタを見て驚いたようだった。


「すまないが、あの機械を海に下ろすので誰か手伝いをさせてくれ」


「トウザ殿、一体何をなさるのですか?!」


 アタラもウエットスーツに着替えを終えて出てきた。片手に弓、背中に特殊な矢を大量に差したバッグを背負っている。


「決まってる。海賊退治さ!」


 ソウタはちょっとした用事を片付けにいくような気軽い口調でアンジュに告げた。


 旗艦は船足を緩める。そして荷の幌を解くと海に浮かべる。


 それは白いハンドル付きの機械。オートバイに似ているが果たして。


「アタラ、問題はないか?」


「私は問題ない。騎乗して矢を射る事には慣れているからな」


 ヘルメットを被ったソウタは、アタラと二人で白いイルカに飛び乗った。


 ソウタはメリーベルが日本の港で水上オートバイを見てから欲しがってきたので、カ・ナンの公費で自ら免許を取得して、中古で数台購入して持ち込んでいた。


 その後は気晴らしついでにカ・ナン湖で海兵団相手に講習したが、現状最も機械慣れしていたからか、操縦が最も上手だったのがソウタだったので、あえて水上オートバイを持ち込んでいたのだ。


「よっし!実戦ははじめてだけど、一っ走りしてこよう!」


 一方の青いキツネたち。


 頭目のゴロドは、最初に船団を見つけたときに狂喜。

 その直後に掲げてあった旗が赤いスペード団だったことで狼狽したものの、その船が一隻だけ突出して向かってきたのをみて安堵し、逆に部下をまくし立てていた。


「いいか、相手が赤いスペード団の女頭目メリーベルだからと恐れることはねえ!たかが一隻!とっとと囲んで捕まえて、ひん剥いて掃き溜めにしてやるんだよ!」


「頭ぁ!何か近づいてきます!」


「何かとは何だぁ!」


「あ、あれです!」


 船員が指差す方向にそれはいた。

 船なのかイルカなのかクジラなのか全く不明。ただ、向かい風を、潮の流れを蹴散らして、馬よりも遥かに早い速度で迫ってくる。


「よし、連中、全然事態を把握できてないぞ!」


 無理もない。船の動力が風力か手漕ぎのどちらかしか無い世界に、水上オートバイが出現したのだから。しかもその速度は馬よりはるかに早いのだ。事態の理解さえ出来ていない。


「今まで熊は狩ってきたが、クジラならぬ船を狩るのは初めてになるな」


 アタラはコンポジットボウを手に持ち、何やら筒を下げた矢をつがえて構える。いよいよ、戦闘開始だ。


 無論、ソウタが実戦に参加するのはこれが初めてになる。


 ウエットスーツの上に地味な色の救命胴衣、その下にセラミックプレートを挟んだ防刃ベストを着込み、ヘルメットも軍用の軽量な防刃ヘルメットを着用して備えてはいる(アタラは動きの邪魔になるからと、ウエットスーツと防刃ヘルメットのみ着用)。


 それでも流れ矢に当たったり、波で操作を誤ったり、船に衝突する危険もあるが、今はその危険に震えるより、海を駆け回って暴れられる高揚感で武者震いが出ていた。


「閣下は、我が矢が届く距離まで寄せてくれればいい!」


「それならやれる!」

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