第11話 雷の力のために その3
夜の会食の席。
メリーベルたち海兵隊とアタラは酒場に繰り出しているのでこの席には居ない。
なのでソウタはナナイの町長に海兵隊について尋ねた。海の荒くれ者たちだけに、刺激の乏しいこの地で何か問題を起こしていないか気になっていたのだ。
「彼らを連れてきたのは俺だから、どうしても気になってね……」
「閣下、我々も海賊と聞いて警戒しておりました。ですが現状、大して問題は起きておりません。多少酒場が騒々しくなったぐらいでしょうか」
「それならよかった」
ホッと安堵するソウタ。
海兵団は憂さ晴らしも目的に、当番制でセキトへ向かう商隊の護衛を任せたり、ズマサへの定期的な息抜き、そして娯楽設備の配備を行う事で、何とか基地周辺でのトラブルを抑えているようだった。
「やはりかいぞ、もとい海兵団のメリーベル兵団長の統率が行き渡っているからでしょうな。少なくとも海兵団長が居る時には問題らしい問題は起きていませんし、町娘たちも安心して市場に顔をだしております。何より、海兵団長は女たちの人気が高く、わざわざ酒場で話を聞こうという者もいるくらいでして」
この地では海を見たことがあるものはほとんど居ない。
その上、女頭目の海賊に酒を飲ませてやれば、四方山話を聞かせてくれるというのだから、メリーベルが泊まる時は酒場から外に出て、町人たちの前で部下たちと語りを聞かせるのが恒例となっていた。
その語りの笑い声が、ここまでよく聞こえてくることからも盛況振りがうかがえる。
「しかし彼らはやはり海の者たちです。この湖でなく潮の香りがする海に出たいとぼやくのもしばしばですから」
「わかっているよ。海の者は必ず海に帰してあげなきゃいけない」
翌日、ソウタたちは帰路についた。往路はアタラと狼たちだけだったが、帰路はそれにリンが加わっただけでなく、海兵隊がおよそ50名も同行していた。
「随分賑やかに帰ってきたわね」
エリに視察の報告と、次に銅が必要になったこと。そして船の入手の必要性が出てきたことをソウタが告げた。
「そうね。セキトから買い難いものがあるなら、産地に買い付けに行くのは当然の話よね。じゃあ、一切を許可するから、後のことはよろしく!」
かくしていつものように豪快な全権委譲な展開となった。
翌日、ソウタたちはそのままセキトに向けて出発した。
積荷は物資の購入資金に日本から持ち込んだ販売品と、それ以上に場所を取っているのがハンドルがついた機械とドラム缶が3本。他にも金属製の鋳物らしき比較的小型の筒が3つほど。
これらを海兵団がいつもの倍以上の人数で護衛していた。
ここ最近、カ・ナンの商団はかなり高額の現金や商品を持っているということで、国外に出ると度々山賊が襲撃してきたが、その度に返り討ちにしている。
今回も襲撃の噂はあったが、結局遭遇しないままだった。恐らくこちらの警護が厳重だったので断念したのだろう。
セキトに到着した一行は、早速クブル行きの船の情報を得ようと港に向かう。
するといつもより船が多く停泊しているのに気が付く。どうやらトラブルが起きているようだった。
「若旦那、どうやらクブルに戻ろうとした船団が、海賊たちに襲撃されかけて、ほうほうの体で逃げ帰ってきたとか。なので、クブルには向かう船が今は途絶えているそうで」
「その海賊、何て連中だい?この一帯を仕切っていた大物連中は、軒並みあの時に潰されちまったはずだけどねぇ」
ゴ・ズマによる海賊の根拠地掃討によって、大半の海賊団は壊滅していたのだ。
「青狐のゴロドが頭目の海賊だそうですが……」
「ゴロド?聞いたことないねぇ」
部下の一人が声をあげた。
「お頭ぁ、ゴロドって奴は、雷親父グン・ガムの腰巾着ですぜ。大方あの時は引っ込んでたから無傷で、逃げてきた連中を引き込んだに違いないですぜ」
「なるほどねぇ……。雷親父がおっ死んじまったから、逃げ帰ってきた連中を全部手下にしたってわけかい。まあ自前の軍団作るなら、潰れたとこから拾ってくるのが一番だからねぇ」
そう言ってメリーベルはソウタの方を見た。確かに弱り果てていた海賊たちを拾って戦力に仕立てた点では、その連中と差は無い。
「で、連中の規模は?」
「大型船1隻と中型船5隻と聞いています」
「結構な数じゃないかい」
数を聞いたメリーベルはニマニマと笑みを浮かべている。
「閣下ぁ、じゃなかった若旦那ぁ。クブルに行くには強行突破するしかなさそうだけど」
「やりたいんだろ?」
「まあねぇ」
海兵隊の面々は皆が暴れたがっている様子だった。
「O.K.わかった。船団の主と会いたいから手配してくれ」




