第8話 慰安旅行は日ノ本で その5
翌朝、ソウタは部屋で目を覚ます。
置いている荷物は自分のものだから、自室であるのは間違いない。
だが、男の一人部屋のはずだったのだが、今朝は他にヒトミとリンが浴衣を肌蹴させた、あられもない姿で自分と同じ布団の上に転がっていた。
「ったく……。目のやり場に困るだろうが」
時間ギリギリまで各々の愚痴を聞かされながら酒を飲む羽目になり、歩行に支障を来たすぐらいまで飲んでいた事。
ほとんど潰れていたヒトミとリンを確かに部屋まで運んだこと。
それでなお足りないと揃ってダダをこねるので、水分補給を兼ねてグレープジュースをワインと偽り飲む。
ついでに二日酔いに備えて、それに効くと評判のシミ・そばかすの薬も飲ませようと自室に向かったところ、置いて行くなと付いてきて、結局自室で飲ませて……。
それから意識が無くなったのを何とか思い出した。
「頭痛のほうは、何とか大丈夫だな」
起き上がって自分の浴衣の乱れを整える。
「おーい、二人とも起きろ」
「ふわぁぁい」
と頭を抱えて起き上がったところで、二人ともようやく事態を把握した。
「か、かかかかかっかぁ!」
「ひやああぁぁぁぁ!なんでぇ?!どうしてぇ?!」
「二人とも、部屋は隣だからな……」
大慌てで自室に戻る二人。廊下でメリーベルとアタラがその様子を眺めて大笑いしていた。
「で、閣下ぁ、きちんと二人に手をつけたのかい?せっかくお膳立てしてやったんだけど」
メリーベルはニマニマ笑っている。
「馬鹿言うな。そんなこと考える前に寝ちまったよ……」
「んー。二人に飲ませすぎちまったか、やっぱり」
「……」
ソウタが来た時点でかなり二人が出来上がっていたのは、やはりメリーベルの所業だった。
自室に戻った二人は受けたショックが大きすぎたのか、出てくる気配が無かったので、ソウタは先に朝風呂に向かう。
二人とも朝食会場にはきちんと出てきたが、二日酔いとばつの悪さで、かなり落ち込んでいる様子だった。
朝食はバイキング形式。例によってメリーベルとアタラが全種類、他人の倍を持ってきてあっという間に平らげていくのを眺める。
「お二人とも、まるで殿方のように食べられるのですね」
「常に体を動かし、山野を巡っているのが生業ですので、食べれるときに食べる体になっているのです」
マナーを守りつつ淡々としながらも膨大な量を体に流し込むアタラ。
「閣下ぁ、あのビールって酒、ダメなのか?」
「おっちゃんたちの慰安旅行じゃないんだから、自重してくれ……」
思わずナタルとシーナが吹き出してしまった。
一方で、泥酔していた二人はまだばつが悪そうにしていた。
「酒に呑まれて、閣下の眼前であんなあられもないはしたない事を……」
「ソウタくんの真横で……私あんな……」
ぐるぐると頭を抱えている様子だったので、一切気にしていないと告げる。
最終日の三日目は郊外の大規模なアウトレットモールで買い物をして帰郷である。
年少のシーナ以外には各々それなりの金額を渡し、好きなものを購入させた。金額についてはエリが指定した金額である。
購入品の傾向はハッキリ割れた。
素直に自分のファッションに使ったのはヒトミとリン。
実用最優先でブーツなどを購入したのはアタラ。
シーナも帽子と靴と文房具の購入に充てた。
部下たちのために大量の酒類の購入を希望したメリーベルと、さらに多い人数に行き渡らせるために飴玉やチョコレートの購入を希望しナタルは、さすがに人の上に立つリーダーとしての自覚あってのことだろうか。
そのことを知って、ヒトミが自責の念に駆られているようだったので、次の機会に買えばいいと慰める。
そんなこんなで二泊三日の異世界人の日本旅行はあわただしく終了した。
掛かった費用をエリに示すとその金額より内容に苦笑していた。
「しっかし費用の三分の一は、お酒の飲み代じゃないの。よく飲むわねぇ」
「メリーベルとアタラが主犯だ」
「まあいいわ。その分だけ仕事してもらうから」
どのみち電卓一つこっちで転売すれば余裕でお釣りが来ると言えば、満面の笑顔で笑っていた。
「まあとにかく、ナタルもみんなもリフレッシュできたみたいだから上出来よ!」
「俺は正直疲れたけどな……」
旅行は幹事が最も気を使い、そして消耗する事を思い知ったソウタだった。




