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第8話 慰安旅行は日ノ本で その1

 日本のソウタの自宅。机に向かってPCを叩くソウタにヒトミがたずねる。


「ねえ、どういうプランなの?」


 ヒトミの顔はいつもに増して明るく楽しげに輝いている。一方のソウタは、どうにも難儀しているようだった。


「初日は都心めぐりに、湾内一周クルージングしてからホテルに宿泊。二日目は遊園地と水族館に行って、その後郊外の温泉旅館で一泊。三日目はショッピングモールで買い物して帰国だ」


そう。今回の目的は物資の調達ではなく旅行なのだ。


「今回は人数が多いから、俺の軽自動車じゃ対応できない。だから10人乗りのワゴン車をレンタルしなきゃ対応できないからな……」


「そうだよね。今回は人数多いよね……」


 急遽、日本国内での旅行が決まったのには理由があった。


 数年間当てのない放浪を続けたエ・マーヌのナタル姫を気遣ったエリが、ソウタに気晴らしに日本に旅行させるよう命令したのだ。


「カ・ナンでゆっくりさせるのもいいけど、ナタルは適格者だったんだから、日本で気晴らしさせてきなさい」


「お前は来なくていいのか?」


「あのねえ、私はこのカ・ナンの女王よ。この非常時に国を空けるわけにはいかないでしょ!」


 転移門を通過できる適正を検査したところ、エ・マーヌ人で通過可能だったのはナタル以外には誰もいなかった。

 重臣のマガフや長年付き添ってきた侍従たちが心配したが、ナタルは日本へ行くことに驚くほど積極的だった。


「アユムさまの故国を見聞できるのです。是非とも行かせてください!」


「身の回りのお世話は私が承りますのでご安心を」


 秘書官のリンとシーナが面倒を見る事になった。合わせてアタラと、メリーベルも同行することに。


 特にメリーベルは護衛なら任せておけと胸を張っていたが、日本に行ってこちらには無い酒が飲みたいのだろうと察するソウタ。


「外国人ならぬ異世界人の慰安旅行。さてさてどうなるかな……」


 今回の費用は“全て”カ・ナンが国家として負担であるが、姫君が居るからと国に掛け合って堂々と国賓待遇という訳にも行かない。当然だが海外からの旅行客として案内するのだ。


「これがニホンの服装なのですか」


 ナタルには白のワンピースを、メリーベルにはジーンズの短パンと赤のシャツを購入してきた。シーナにはエリのお古のブラウスとスカート。リンとアタラは前回の服装で対応する。


「これだけの貴婦人方をエスコートできるのは光栄の至りですよ」


 などと軽く笑ってみせるソウタ。


「いやぁ、宰相閣下直々にからくり馬車の運転とは恐れ入るねぇ」


 メリーベルが茶化してくる。


「こいつは運転免許を取得しておかないと運転できないからな」


「ごめんねソウタくん……。やっぱり免許に集中した方がいいのかな?」


「あくまでお前のメインは、カ・ナンの軍の指揮だから、無理しなくていいよ」


 実のところヒトミは日本に来た時に自動車学校にも通っているのだが、ソウタのサポートを優先しているので、あまり順調ではなかった。


 ゆっくり座れるワゴン車に水・お茶・ジュースの2Lペットボトルに、お菓子を多数持ち込んで高速道路をひた走る。


「なぁ閣下ぁ。退屈してきたから酒飲みたいんだけどぉ」


「海兵団長!姫様の前です。日が出ているうちからお酒飲むのはお控えください!」


「あいよ」


 さすがに呆れたリンがメリーベルに釘をさした。


 アタラは最後部で静かに睡眠中。ナタルとシーナとリンは物珍しいからかずっと窓の景色を眺めていて、飽きたメリーベルは煎餅をかじり、ヒトミは助手席でウトウトしていた。


 途中、空港を横切っていると、旅客機が次々と離発着していく。


「すげえ、船よりデカいのが、空を飛んでるぞ!」


 異世界組は皆あっけにとられ、特にメリーベルは子供のようにはしゃいでいた。


「これ一機で何百人も乗って、世界中を飛び回ってるんだ。世界一周だってその気になれば一日で可能さ」


 さらに宇宙には人が作った星が大量に浮かんでいて、それを介して様々な情報を得ている事を教えたが、あまりに途方も無い話だったようであっけに取られていた。


「例えばこのカーナビだけど、これもいくつかの人工衛星からの情報を受けて、現在の位置を示してくれるんだ」


 その話に反応したのはメリーベルだった。


「それってつまり、こっちが星を見て場所を割り出すんじゃなくて、星の方からこっちの居場所を教えてくれるって事かい?」


「ああ。そういうことだよ」


「そいつはすっげぇな……」


 とはいえ、現在でも天測航法は補助的だが使用されていることもあり、六分儀などの計測機器は市販もされている。


 異世界でGPSは人工衛星の打ち上げができない以上、遥かな未来にしか実現できないが、こちらの計測機器を持ち込めば、随分と航海も楽になるだろう。


 空港を通過してしばらく車を走らせるとやがてコンクリートの建物が続々と増え続け、やがて天を突かんばかりに巨大なビルが林立する都心部に近づく。


 日本の首都東京に規模は遥かに及ばないが、この方面で最大の都市だけあって、それなりに高層建築が揃っている。


「あんまり車で近づくと渋滞に巻き込まれるから、ここから電車で行くよ」


「地下鉄は使わないの?」


「戻りはそっちにしよう」

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