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第5話 一振りの日本刀よりも その1

 リントアタラを転移門から送り出した二人は、車に乗って道を戻る。


「それで、これからどうするの?」


「まず大学に行く」


 母校に向かったソウタは、事務所で手続きをしてきたようだった。


「ソウタくん、もしかして……」


「ああ。休学の手続きをしてきた」


 その言葉を聞いてヒトミは飛び上がるように驚く。


「ソウタくん!どうして?!」


 ソウタは溜息をついて答える。


「言っただろ、全力で対応するって。向こう一年、いや、それ以上の間、カ・ナンの事に首突っ込まなきゃいけないだろ。だからカ・ナンの件にケリがつくまで学校は休むさ」


「ごめんね……本当にごめんね……」


 泣き崩れて謝るヒトミにソウタは笑って肩を叩く。


「気にするなって。お前とエリが命懸けなんだ。これぐらい当然だ」


 車に乗って次の目的地に向かう。


「伯父さんのところに行くよ。考えがあるんだ」


 伯父はスクラップ工場の経営者であり、彼自身も時々アルバイトで手伝っていた。


 二人で伯父の工場に出向く。


「やあ、ヒトミちゃんじゃないか。久し振りだね。随分とまた……綺麗になったじゃないか」


「あ、ありがとうございますおじさん。でも綺麗だなんて……」


「顔つきというか、目の強さが二年前と全然違ってるからさ。向こうでいろんな経験を積んできたんだろうね」


「は、はい……」


 ヒトミがソウタの伯父リュウジと会うのは出発前の挨拶以来のおよそ二年ぶり。

 リュウジは独身だが、ヒトミとエリの両親の学生時代からの友人でもあり、昔から家族ぐるみでつきあいがあったのだ。


「それで二人とも、用件はなんだい?」


「は、はい。その……、りゅ、留学先の支援活動に必要になったので、お手伝いをお願いしたいんです」


「それでわざわざ帰国してきたのか。活動熱心なのは良いことだ。それでソウタも協力というわけか」


「うん。頼まれたからね」


 ソウタはヒトミが支援活動で金属のスクラップなどが必要なのだと説明した。


「そんなわけで伯父さん。プレスされたスチール缶と、放置自転車をできるだけ多く集めたいんだ」


「ふむ、スチール缶に自転車か……。知り合いで扱っているところは知っているが、うちではほとんど扱ってないな」


「じゃあ紹介して欲しい。もちろん経費は出すから。あと運搬用のダンプと、フォークリフトも貸して欲しい」


「お、おねがいします!」


 二人して頭を下げる。


「わかった。うちの名前を使っていいから、必要なものを揃えなさい」


『ありがとうございます!』


 リュウジは二人の依頼を快諾した。


 その日はリュウジに誘われ、一緒に夕食を取った。程近い近所の中華料理屋で、中ランクのコース料理だった。


 食事をしながらソウタは、リュウジに大学を休学してヒトミの活動を手伝う事を報告した。


「やるからには徹底的にやるって事だな。俺は反対しないぞ。やりたいようにやって、行き詰ったら俺に相談しに来なさい」


「リュウジ伯父さん、ありがとうございます……」


 ソウタは深々と頭を下げる。ヒトミは涙目になって感謝していた。


「なあに、俺も大学の時はゲンイチ兄貴とお前の父さんのタイガの三人兄弟揃って、みんな休学届けも出さずに海外まで暴れに出ていたんだ。ヒトミちゃんのお父さんのユキヒロと、エリちゃんのお母さんのマナちゃんと一緒にな。そういえばユキヒロはどうしてる?」


「す、すみません。お、お父さんは……」


 ヒトミの父親は、半年前、戦いが始まる前にカ・ナンですでに亡くなっていた。その事をぼかしてリュウジに報告する。


「そうか……。アイツも逝ったのか……。風の噂じゃあ、ユーゴとマナちゃんも亡くなったらしいからな」


 ユーゴとマナはエリの両親である。


「一緒に世界を又にかけて暴れまわった“秘境探訪同好会”のメンバーも、俺だけになっちまったんだな……」


 ハイボールのグラスを揺らして寂しそうに呟くリュウジ。

 ソウタはリュウジがヒトミとエリの両親が異世界に関わっていた事を、実は知っていたのではないかと漠然と考えていたが、結局そのことを切り出すことは無かった。

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