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第22話 大帝親征 その3

 各地でゲリラ戦に悩まされるようになっていたゴ・ズマの遠征軍。だが、大帝の本隊は圧倒的な大軍であり、手を出す勢力は目下のところ無かったため予定通りの進捗で進軍していた。


「陛下、報告書をとりまとめいたしました」


 道中、投降した者たちから聞き取りを行い、取りまとめられた報告書に目を通す大帝。


 ゲンイチはおおよそ予想していた事だが、報告書から読み取れた内容は、彼の予想、いや、“期待”を遥かに上回っていた。


「おお。あいつら鉄砲・大砲だけでなく毒ガスまで持ち出したのか!ここまでやるとは、本当にやりおるな!」


「陛下……」


「おい、テラ。あ奴ら、やりおるぞ」


 ゲンイチの傍にいた側近は、二十四人の勇士の一人だった。


「よもやあの小国がこれほど鋭い牙を持っていようとは……」


「テラよ、今一度この国を率いておる者たちの名を見てみよ」


「タツノ・ソウタ……。まさか陛下の血族?!女王はオオトリ、敵将はシシノ……よもや」


「今、この中で俺たちの冒険に加わっていたのはお前一人。だから教えておく、こやつは……」


「何と!金色の射手、タイガさまの息子とは!ならば陛下の甥ではありませんか!」


 エリとヒトミがもかつての仲間の娘たちと聞いて驚くテラ。


「実は先月偶然会ってな。夫婦揃って国を捨てて俺のところに来るよう言ったのだが、断られてしまってな。自分の女たちの国を見捨てるぐらいなら、たとえ俺が相手だろうと徹底抗戦すると言い切りおったわ!」


 二人で高らかに笑い合う。


「さすが金色の射手殿の息子、陛下の甥ですな!同じ境遇に置かれれば、陛下も同じ事をなさった事でしょう」


「まったくだ!ガハハハハ!」


「とはいえ、俺も今はこの帝国の主だ。甥子が居たからと、おいそれと折れるつもりはない」


「しかし陛下、今のところ陛下には男子がおりませぬ。継承は言わずもがな男子優先。であれば、ソウタ殿は極めて有力な後継候補になりますが……」


 彼の言う様に、ゲンイチは大勢の側室を抱えていたが、目下のところ愛娘が一人居るだけで、男子は生まれていなかったのだ。


「たしかにそうだ。しかもソウタは手腕を発揮して、現に我らの一軍を潰してしまったのだからな。実に有望だ」


「でしたら懐柔なされては?降伏すれば特例として領国を安堵すると言えば」


「この程度で特例は出せん」


 ゲンイチは顔色一つ変えていなかった。


「俺の目的は世界征服よ。そしてそれを成す為に、従うものは赦し、歯向かうものは絶やして来た。容易に曲げる事はできん」


「俺は道を貫く。そのためには立ちはだかるカ・ナンを完全に制圧し、甥と旧友の娘二人を捕らえる。そして他は見せしめに皆、絶やさねばならん。それを阻止したくば、俺を心変わりさせてみせよと、あの時言っておいたからな。変えるつもりはない」


 大帝の意思は固かった。


「友の子等を捕らえるおつもりがあると聞いて安心致しました」


 テラは大帝の血族を一人でも多く確保できると安堵していた。それに三人の親たちとは共に冒険し、恩義もあった。


「では、戦地に届きましたら、敵の将帥らは皆、生かして捕らえるよう布告しておきましょう」


「おう、任せる」




 一方のカ・ナンでは楽観に浸るどころか、大帝直々の本隊侵攻に備えて緊張が漲っていた。


「ザンパク砦から報告!敵軍を視認!!」


「数はどれぐらいですか?!」


「先鋒だけで、前回の数倍は確実!本隊を含めれば十数万にも達する見込みです!」


 大帝の本隊は前回のさらに倍以上の大軍であった。その報告を聞いたヒトミは即座に決断する。


「先日使った陣地は予定通り放棄します。用意が整った防衛線にて迎撃を行いますから、準備をお願いします!」


 陣地に展開されていた木製の柵などは全て撤去され、資材は後方に送られ、人員は全て本命の防衛線に配置転換された。



「なんて数なの……」


 四日後。エリは王都の展望台から双眼鏡で迫り来る敵の布陣を眺めていた。


 次から次に湧き出してくる敵兵。地面は見えず、ただ圧倒的な敵が埋め尽くしていく。


 そして巨大な天幕を中心にした陣地に、巨大で煌びやかな旗が掲げられているのが見えた。


「あれが大帝旗……」


「ゲンイチ伯父さん、本当に来たんだな」


「まずは勝利条件の一つを引っ張り出せた訳よね……」


 ゲンイチに自分たちの力を示し、認めさせる事がソウタたちの勝利条件だった。だが、そのために立ちはだかる壁はあまりに高く分厚い。


「ああ。あとは大帝が根を上げるまで戦うんだ」


 ソウタは小さく震えるエリの肩を抱いて、自分に言い聞かせるように呟いた。

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