表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界の魔法はJavaScriptで起動する  作者: あきらメル
第2章 入門編
8/30

入門編『関数』

家に帰り晩飯のシチューを食べた後、エイダは疲れ果てベッドに倒れこむ様に寝た。家に無事に帰れて安心したのだろう。初めての戦闘に精神を擦り減らし、魔力のほとんどを使い切った。ただ次の朝には全快していた。子供の回復力は並ではない。


エイダの父は、早朝にジャイアントスパイダーの調査に向かった。母もエイダが元気なのを確認したので、後で合流するそうだ。テーブルで朝ご飯を食べながら、エイダは今日の予定を考える。天気も良いし、魔導書を持って外にでかける事にした。


「お母さん、外に遊びに行ってくるね」


エイダは朝飯のパンを食べながら、台所にいる母に言う。


「遠くには行かない様に。特に森の中とか」


洗い物をしながら、母は釘を刺しておく。


「村の中だから安心して」


エイダは残りのパンを口に放り込み、水で流し込む。そして魔導書を持って玄関に向かう。


「行ってひまぅ〜ふ」


母はエイダを呼び止める。


「あら、その魔導書ガラクタも持っていくの?」


「うん」


母は娘にマフラーを巻きながら、微笑む。先程まで、お昼にと作っておいたサンドウィッチをエイダに持たせる。


「そう。くれぐれも、私の言い付け(ちゅうこく)を守る様に」


「絶対に遠くに行かないよ」


勿論とエイダは胸を張る。若干魔導書が震えている様な気がしたが、気のせいだろうとエイダは思った。


「行ってらっしゃい」


「は〜い」


エイダは元気よく玄関を飛び出した。


エイダは家々を駆け抜け、村を見渡せる丘に向かった。なだらかな坂に見渡す限りの草原が広がる。春は色とりどりの花が一面を覆い尽くす。時々放牧された家畜がやって来る、ほのぼのした場所。母の言いつけ通り、一応村の中だ。


「魔導書さん、もう大丈夫だよ」


辺りに誰もいないことを確認し、魔導書に話しかける。


「ここは?」


「私のお気に入りの場所。風景がすごく綺麗なの」


エイダは草原に腰を下ろす。太陽の光はまだ暖かいが、時折吹く風が冷たく感じる。


挿絵(By みてみん)


「母親も出掛ける様だったし、別に家の中でも良かったのでは?」


「こんな良い天気なのに、外に出ないのは勿体無いよ」


「そうか」


魔導書はインドア派だが、エイダはアウトドア派の様だ。


「それじゃ魔導書さん、約束通り魔法を教えて?」


「うむ」


咳払いをし、魔導書の授業が始まる。


「まずエイダの状況を把握したい。両親には何を教えてもらっている?」


エイダは指を頬に当てながら答える。


「お父さんには剣の基礎。お母さんには読み書き、英語、算数」


「基礎をしっかり学んでるみたいだな」


魔導書は褒めるが、エイダは少し悲しそうにうなだれる。


「多分お母さんは、私に冒険者になって欲しくないんだと思う」


「何ぜそう思う?」


「だって魔法、全然教えてくれないし。英語とか数学じゃ冒険者になれないよ」


落ち込んでいるエイダに、魔導書は優しく諭す。


知力(INT)を鍛えると、魔力(MP)が上がるし、それに読み書きは勿論、英語も数学もjavascriptを組む時かなり役に立つぞ?」


「ジャバスクリプト?」


エイダは初めて聞く言葉に首を傾げる。


魔導書ブラウザ内で、魔法を起動・制御するのに使われているプログラミング言語」


「?」


魔導書は(はてな)マークが浮かんでいるエイダに尋ねる。


「エイダ母はいつもどうやって、火の魔法を唱えてる?」


「魔導書に手を当てて『fire open parenthesis close parenthesis』って唱えて、目標に手をかざすとビューって火が飛んでってる」


「唱えているのがjavascriptの命令文コマンド命令文コマンドが魔導書に書き込まれて、あらかじめ定義ディファインされている『fire』と言いう名の関数ファンクション呼び出さ(コール)れて、火の魔法が起動する。ちなみに魔導書にはこんな感じに書き込まれる」


fire()


魔導書のページに文字列が浮き上がってくる。


命令文コマンド定義ディファイン関数ファンクション呼び出す(コール)?」


しかしエイダは聞きなれない単語の洪水に、かなり戸惑っている。


「具体例を上げて説明すると…2000年以上前に、偉い魔導師が沢山の命令文コマンドを組み合わせて、火で敵を倒す複雑な魔法の術式スクリプトを作り上げた。しかし魔法を起動するのに毎回、全命令文(コマンド)を全部書くのは大変だ。それで使いやすい様に、ひとまとめにし『fire()』と書くだけで呼び出せ(コール)るようにしたのが関数ファンクション


「うんうん」


何となく分かり、エイダは頷く。


「この魔導師は他の魔導師にも使えるように、火の魔法の関数ファンクション説明文コメントと一緒に魔術紙に書き込んだ。複製コピー出来るその魔術紙を魔導書に足せば、誰にでも簡単に火の魔法を扱える様になった。使い勝手が非常に良い為、現代で最も人気のある攻撃魔法になったとさ」


「あ、そう言えば」


エイダは魔導書は空白の1ページしかないのを思い出す。


「魔導書さんは関数ファンクションが書かれた紙を一枚も持ってないの?」


「ああ、持ってない」


「なら、どうして魔法が使えるの?」


「その場で、自分独自(オリジナル)術式スクリプトを組み上げてるからさ」


エイダは何となく、魔導書がドヤ顔で言っているような気がした。

ーーーーーーーー ログ ーーーーーーーーーー

エイダは関数かんすうを理解した。

関数かんすう』スキルがLV1になった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


登場人物


エイダ・ラブレス

挿絵(By みてみん)

冒険者に憧れている9歳の普通の女の子。

子供は風の子。外は寒くても大丈夫。


職業:術者プログラマ LV1

称号:初心者

スキル:『関数かんすう LV1』


喋る魔導書

挿絵(By みてみん)

エイダが森の奥で出会った喋る魔導書。

結構教えるの好き。


エイダの母

挿絵(By みてみん)

エイダの優しいお母さん。魔導師の冒険者。

子供の意志や自主性を尊重する教育方針。


エイダの父

エイダの強いお父さん。剣士の冒険者。

まだ作者に、絵を描いてもらえていない。


作者より


なろう系の小説の後書きによくある、キャラのログやらステータスを書いてみました。あまり深い意味はありません。魔導書さんがジョーダンで書いている設定。


やっと入門編に入れました。『関数』は重要ですよ。テストに出ますよ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ