いつもの日常へ【魔導書視点】
「何があったの?」
母親が心配そうにエイダに聞くのを、遠くから聞き耳を立てる。エイダは正直にジャイアントスパイダーに追われていたと話してしまっている。「迷子になってた」とか「居眠りしてた」とかはぐらかせば良いのに。案の定、エイダは質問攻めに合い、状況がややこしくなっている。エイダらしいといえば、エイダらしいか。私の事、ぽろっと話してしまわないかな?まぁ、話してしまっても、別に問題というわけでもないのだが。どうなるかな?
「ははは、まあ何にせよ、無事で良かった。さぁ、帰ろうか?」
父親らしき声が聞こえる。なかなか渋く、ダンディーな声だ。口ごもっていたエイダに助け舟を出したのかな?
「まっ、待って」
エイダが駆け寄ってくる音がする。私を拾ってくれたようだ。良かった、忘れられていたかと思ったよ。
「森の中で、魔導書を見つけたの」
エイダの母に、魔導書を持って帰っても良いかと交渉を始める。お母さん優しそうなのだが、エイダなんかビクビクしながら話してるぞ?なぜ?
「見せて?」
えっ?やばい。最後のページ、全くの白紙だ。ダミーの呪文か何か書いておけば良かった。間に合うか?
最速でタイプしていく。
---------- page0.html----------
<H1 ALIGN="center">ファイア</H1>
<HR>
<UL>
<LI>消費魔力:MP4
<LI>命令文:fire()
<LI>説明:火の魔法で相手を攻撃する。
</UL>
-------------------------------
こ、こんなのでダミーと言えるのか?無い方がいいかもしれない。どうしようと考えている間に……
「魔法石が壊れてるみたいね?それに中身が1ページだけ?それに何も書かれてない?」
ま、間に合わなかった。
「ねぇ、いいでしょう?」
エイダの交渉は続くが、旗色が悪い。エイダの母は徹底的に論破していくタイプのようだ。どんどんエイダは追い詰められていく。生前の私の父親がそのタイプだったな〜と下らない事を思い出す。
こりゃもう駄目だなと諦めかけていた時。
「まあ、エイダがこれを欲しいと言ってるし、良いじゃないか。壊れてる箇所は直せば良いし、新しいページも追加できるし」
そこにまた父親が救いの手を出す。この人いい人だ。私の中の彼への好感度は、上がりまくっている。魔導書に好かれても嬉しくないとは思うが。
「わかったわ。あなたがそう言うのなら。勿論、修理費はあなた持ちね」
「うっ」
うめき声が聞こえた。エイダ父、ご愁傷様です。
エイダは喜んでいるみたいだ。良かった。そして私は、助かった。
ん?
エイダの母親が何らかの命令文を、音声入力で入力してくる。
「%u3080%u3059%u3081%u306B%u306A%u306B%u304B%u3042%u3063%u305F%u3089%u6BBA%u3059」
何じゃこりゃ?命令文ではないな。ただの文字の羅列だ。ただ全て「%u」で始まり4桁の数字(16進数)が続く。どこかで見たような?あ、確か「UTF-16」だったかな?URL等でencodeした時によく見るやつだ。試しに変換してみるか。
<SCRIPT>
console.log(unescape("%u3080%u3059%u3081%u306B%u306A%u306B%u304B%u3042%u3063%u305F%u3089%u6BBA%u3059"));
</SCRIPT>
ポチポチと。保存と更新。コンソールウィンドウを見て固まる。
---------- console ----------
むすめになにかあったら殺す
-----------------------------
えっ、え〜?何これ?怖い。怖すぎる。
平仮名はまだ順番に並んでるから数値が憶測できるとして、何で「殺」の文字コード知ってるの?使いまくってるの?って言うか、もう正体見破ってる?普通の魔導書にこれ入力しても、何も起こらないし。これ絶対、私に向かってのメッセージだよな?
「晩御飯は、エイダの好きなシチューよ。」
「やった〜」
帰り道、ほのぼのした会話が続きエイダ家は家族団欒していた。魔導書は一人、ブルブル震えていた。
登場人物
エイダ・ラブレス
冒険者に憧れている9歳の普通の女の子。
両親が大好きな、素直な良い子。
喋る魔導書
エイダが森の奥で出会った喋る魔導書。
エイダの母が怖い。
エイダの母
エイダの優しいお母さん。魔導師の冒険者。
時々「恐ろしく」怖い。
エイダの父
エイダの強いお父さん。剣士の冒険者。
尻にひかれてる?
作者より
エイダのお母さんのように、文字コードは平で言えなくても大丈夫です。ASIIコードの「アルファベット」や「数字」の最初と最後の数値などは時々必要になりますが。
参考にしたページ
Unicode対応 文字コード表。
http://ash.jp/code/unitbl21.htm
16進数 プログラミングでは頻繁に出てきます
http://www.infonet.co.jp/ueyama/ip/glossary/hexadecimal.html