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異世界の魔法はJavaScriptで起動する  作者: あきらメル
第2章 入門編
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入門編『考察』【魔導書視点】

 エイダに一緒に食卓に行かないかと誘われたが、丁重に断った。流石に家族団欒を邪魔するのは野暮だ。決してエイダ母が怖いわけではない。


 それに魔導書が食卓を囲んでどうしろと? 食べれるわけではないし。一応普通の魔導書として通しているので、喋る訳にもいかない。


 まぁ、エイダは律儀に秘密を守ろうとはしているが、両親にはもうバレバレな気がする。エイダ母は最初から私の存在を知っていた様だし。父親も何となく察しているようだ。別に隠している必要はない様な気がする。両親はエイダが自ら伝えるのを待っている感じだ。そういう教育方針なのだろう。


「唐揚げだ!」


 エイダの嬉しそうな声が遠くから聞こえる。


 唐揚げか。久しく食べてないな。それにしても唐揚げの匂いが全くしない。嗅覚の魔石も壊れている様だ。視覚の魔石は両方とも壊れているため、外は全く見えない。音も立体的には聞こえないと言う事は、二つある聴覚の魔石も一つはお釈迦の様だ。声の魔石が壊れてないのはラッキーだった。外部とコミニケーション取れるだけマシだと考えるしかない。


 これらの魔石を直そうと思ったらいくらするのか見当もつかない。大型の魔石は希少な上、魔術を組み込む技術はもう廃れているかもしれない。千年前の当時でさえ、技術を持った職人は限られていた。魔術が進歩しているのか、それとも退化しているのか、少々不安だ。


 エイダ家族が会話している声がかすかに聞こえる。エイダ母の凛とした透き通る声が響く。本当に聞き惚れる声だが、怖いんだよな〜。我が子を愛するが故に、害する物は全て排除って感じだ。一応まだ私は排除対象にはなってない、と思いたい。う〜ん。かなり心配になってきた。


 それにしてもエイダ母の勘の良さは異常だ。エイダの行動を見事に言い当てた時は身震いした。しかし、いくらなんでも葉っぱや擦り傷からエイダの行動を全部当てるのは無理がある。どこの名探偵コ○ンだ!? 何らかの術式を通してエイダの行動を監視していたと考える方が現実的だ。しかしエイダには術式は掛けられていなかった。出掛ける時にエイダに巻かれたマフラーから若干魔力を感じたが、遠隔で監視する程の魔力量ではなかった。調べようにも術式は解除されていて、もうマフラーから魔力を感じない。う〜む、どんな術式だったか知りたい。


 待てよ? 10分毎にエイダの位置情報を送る術式なら可能かもしれない。6時間外出していたのなら36回分か。う〜ん微妙だ。エイダ母はエイダ父と一緒に探索していたようだし、マフラーに込められた魔力量では無理だ。情報を遠距離で伝達するには、それなりの魔力が必要になる。回数を減らして一時間に一回送るとか? だとすると、あそこまで詳しい状況はわからないはずだ。ならいっそう情報は送らないで記録しておくとか? マフラーに10分置きの情報をを記憶しておき、エイダが帰ってきた時にマフラーに触りながら情報を回収する。あの無言でエイダの隅々を確認していた時間に、位置情報を回収して解析していた? 三次元の位置情報から崖から落ちていた事も解析はできるが、ちょっと人間離れしている。しかし、何となくエイダ母ならできそうだから恐い。村周辺の位置情報を記憶していても驚きはしない。


 エイダ母も凄いが、エイダも末恐ろしい。ステータスは普通以下だが、理解力は桁違いだ。一を聞いて十を知る。見知らぬ異世界のコンピューター言語を、スポンジのように理解し吸収しまくっていく。エイダ母から数学などの基本を叩き込んでいるとは言え、異世界の九歳児に一日であそこまで理解できるとは思わなかった。教え甲斐があり過ぎて、逆に怖すぎるぐらいだ。私などすぐに追い抜かれてしまうだろう。そうなると私はお払い箱か。どうしよう?


 まぁそれはそれでいいか。これが最後の一仕事になるだろう。一緒に戦ったあの仲間達ともはもう何処にもいない。皆が命を掛けて救った世界をひっそりと見届ける。それぐらいのワガママ、あいつらは許してくれるだろう。


 しかしなぜ千年も眠っていたのだろうか? なぜエイダの声に反応した? 彼女の声は、なにか懐かしい感じがする。しかし頭にモヤがかかっていて記憶が曖昧だ。うまく思い出せない。


 ドアーが開く音がする。


「あ〜、美味しかった。もう食べれない」


 エイダの声だ。腹一杯になり機嫌が良さそうだ。そんなに幸せそうな声を聞くと、自分も食欲があった時を思い出す。ちょっと悲しくなる。


 話し相手が帰って来たので、私は暇つぶしの考察を終えた。

ーーーーーーーー ログ ーーーーーーーーーー

魔導書は考えるのをやめた

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


登場人物


エイダ・ラブレス

挿絵(By みてみん)

冒険者に憧れている9歳の普通の女の子。

お腹いっぱいになると笑顔になる


職業:術者プログラマ LV1

称号:初心者

スキル:『関数かんすう LV4』『構文こうぶん LV1』『文字列もじれつ LV1』『コメント LV1』『算術さんじゅつ演算子えんざんし LV1』『文字列もじれつ演算子えんざんし LV2』『変数へんすう LV2』『代入だいにゅう演算子えんざんし LV1』『オブジェクト指向しこう LV1』『イベント処理しょり lv1』『デカルト座標系ざひょうけい LV1』『力学りきがく LV2』

関数:『alert()』

HTMLタグ:『<script>』

イベント:『mousedown』【throw】

(【】は魔法に関連し、従来のjavascriptにはない)


喋る魔導書

挿絵(By みてみん)

エイダが森の奥で出会った喋る魔導書。

一人でいると色々と考えてしまう。


作者より


さすが魔導書! 考え事で1話を平然と潰してしまうッ

そこにシビれる!あこがれるゥ!


挿絵(By みてみん)


鉛筆画をスキャンし、GIMPで塗っています。色々と試行錯誤中です。もともと塗るのは得意ではないのです。色彩感覚がなかなか身に付かないです。

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