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異世界の魔法はJavaScriptで起動する  作者: あきらメル
第2章 入門編
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入門編『脱出』【魔導書視点】

 「わたし、魔導書さんがそこから出れる方法を見つける」か…… エイダの優しさは嬉しいが、あまり期待はしていない。当時の最高峰の魔術師と一緒に模索したが、何にも分からずじまだった。色々とあったな……と昔の事を懐かしんでいると、エイダの声が割り込んで来た。


「ねえ、魔導書さん聞いてる?」


「あ、すまない。考え事をしていた」


 「もう」と拗ねた声を出しながら、エイダは話を続ける。エイダを宥めながら、画面を確認する。


時間 302s

魔力回復率 80.1 J/s

魔力量 20,431 J = 20.43 KJ = 0.02 MJ


 エイダの無重力術式に必要なエネルギーは、一秒間に1.4kJ。今なら14秒程、無重力になれる。崖を降りるなら、最初の一秒を自由落下にして速度を9.8m/sにした後、無重力にすればそれ以上速度は上がらない。一秒に9.8m落ちるので、14秒なら137.2m降りれる計算になる。エイダは50mぐらいあると言っていたが、目測を誤っていても充分カバーできるだろう。


 しかしこれは着地に失敗したら、怪我をする可能性がある。短距離走の選手が100mを10秒で走ったら、単純計算で10m/s。全速力で走っている状態でゴールが壁だとしたら十中八九、ぶつかって怪我をするだろう。


 石を先に落として、エイダは一秒後に続いて落ちる。石が地面に接触したら、エイダを上に加速して速度を落とす。これだったら危なくないかな……と考えていると、またエイダの声が響いた。


「魔導書さん聞いてるの?」


「あぁ。遊べる友達が村にいなくて大変だな」


「大変じゃないよ。もう」


 エイダは私が話半分で聞いているので、少しおかんむりだ。リラックスすると魔力の回復は早まるので、こうしてなるべく会話をしながら時間を潰している。しかしエイダも疲れているのか、回復率も少し下がって来ている。まぁ、崖の木の上に腰掛けている状態ではリラックスしろという方がどだい無理な話だ。


 エイダは村の事を話してくれた。自分が育った村が本当に好きなようだ。ただ鉱山以外の産業もなく、過疎化は免れない。そんな会話をしばらく続け、また数値を確認する。


時間 634 s

魔力回復率 77.4 J/s

魔力量 42,899 J = 42.90 KJ = 0.04 MJ


 回復量が下がって来ている。あまり良くない傾向だ。これ以上待ったら魔力は回復しても、エイダの体力が持たないかもしれない。魔力もそれなりに溜まったし、一か八かの勝負に出るか?


「魔力もだいぶ溜まったし、そろそろここから脱出しよう。降りるのと登るのと、どちらがいい?」


 エイダに聞いてみたところ、崖を登る方を選んだ。忘れ物もあるし、帰る時は楽だし、妥当な答えだ。


 さて崖を登る方法だが。一番簡単なのは、上に加速する事。崖の上に着いたらエイダに合図してもらい、横に加速し徐々に重力を戻し不時着する。ただエイダは崖が反っていると言ってたので、崖に頭を当てて怪我をするかもしれない。そうなるとエイダ母が怖い。崖に当たらないように手で体を支えながら這うように登る事も可能だが、今度は手に擦り傷が付くもしれない。魔力消費量は半端ないが、最初に考えた方法で行こう。


「私が加速の術式で、あたかも崖壁がいへきに向かって重力が働いているよう制御する。私が合図したら崖壁がいへきを垂直に駆け上がれ。そして崖の頂上に到着したら、崖の内側に降りてから私に合図してくれ。そのタイミングで重力を元に戻す」


 これなら靴を履いているので、擦り傷の問題は回避できる。また崖が反っていようがどんな形だろうと、エイダが判断して対処できる。普段と同じ感覚で走れるはずだから、うっかりミスは無いはずだ。


 ただ魔力の消費がきつい。重力を打ち消して、崖方向に重力と同じだけ加速するとなると、無重力の術式の二倍は消費する。残った魔力では15秒ぐらいしか持たない。その旨を伝えたところ、エイダは足が速いから大丈夫だとの事。まぁここは信じるしか無いか。あの体術ならば、あながち嘘ではないだろう。


 その後も詳しくプランを説明する。エイダは物分かりが良い為、ちゃんと理解してくれる。本番に移る前に、術式の動作確認を行う。これはエイダに重力の切り替えの感覚に慣れてもらう為もある。加速の方向が間違えてると怖いので、一応木の枝に掴まってもらった。


「よし。では本番に移ろう。準備はいいか?」


 動作確認も無事終わり、本番に移ることにしたが、エイダはかなり緊張しているように見受けられる。ここは少し時間を置くか?と思いカウントを「100」から始める。


「それ長すぎる!」


 エイダから即座にツッコミが入った。お、驚いた。確かに「100」は長すぎるか。「50」ぐらいにしとくべきだったかと思いつつ、動作確認の時と同じ様に「3」から始める。


「3…… 2…… 1…… 0!」


 重力術式の起動ボタンを押す。後はエイダに任せる。私は成功する様に祈るだけしか出来ない。ザッザッと走る音が聞こえる。5秒経過。止まって今度は座っている様な音が聞こえる。10秒経過。時間が経つのが遅く感じる。


「もういいよ!」


「OK!」


 すぐさま術式を解除する。速度や加速を確認するが、0の値のままだ。もう大丈夫だ。「ふぅ」と溜息をつく。


「エイダ、お疲れ様。よく頑張ったな」


 頑張ったエイダに労っておく。しばらくエイダは駄々をこねていたが、一緒に付き合った。


 こうして長かった授業は終わり、家に帰ることになった。



ーーーーーーーー ログ ーーーーーーーーーー

エイダは駄々をこねた。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


登場人物


エイダ・ラブレス

挿絵(By みてみん)

冒険者に憧れている9歳の普通の女の子。

ツッコミスキルが上がってきた?


職業:術者プログラマ LV1

称号:初心者

スキル:『関数かんすう LV4』『構文こうぶん LV1』『文字列もじれつ LV1』『コメント LV1』『算術さんじゅつ演算子えんざんし LV1』『文字列もじれつ演算子えんざんし LV2』『変数へんすう LV2』『代入だいにゅう演算子えんざんし LV1』『オブジェクト指向しこう LV1』『イベント処理しょり lv1』『デカルト座標系ざひょうけい LV1』『力学りきがく LV2』

関数:『alert()』

HTMLタグ:『<script>』

イベント:『mousedown』【throw】

(【】は魔法に関連し、従来のjavascriptにはない)


喋る魔導書

挿絵(By みてみん)

エイダが森の奥で出会った喋る魔導書。

少し天然なところがある?


作者より


 12月2日(土)のゲームマーケットの準備に追われていた為、先週は小説を書く時間はありませんでした。完売まではいきませんでしたが、無事に終わりほっとしています。これで心置きなく小説に取り組む事ができます。いや〜本当に大変だった。


 ペンタブレットのWacom Intuosの一番安いやつを買いました。今までマウスしかなかったので、色ぬりは諦めていましたが、これで色を塗る事が可能になりました。挿絵を充実させたいですね。

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