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異世界の魔法はJavaScriptで起動する  作者: あきらメル
第2章 入門編
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入門編『木の上で』

「なんか安心したら、凄くシンドい」


エイダは木の枝に腰を下ろし、崖に体を預けながら魔導書にボヤく。


「魔力が枯渇してるからな。先程まではアドレナリンが分泌されていて、疲れを感じる余裕がなかったんだろう」


「あどれなりん?」


「恐怖や緊張を感じた時に、血液に分泌される神経伝達物質。分泌されると体が興奮状態になり、危機に対処できる様になる」


エイダは疲れ過ぎていて、新しい単語に反応する気力もない。ただ静かに目を閉じて魔導書の説明を聞く。一通り説明が終わると、エイダは魔導書にたずねる。


「魔導書さんは、何でそんなに物知りなの?」


「私が人間だった頃、『学校』と言う所で色々と学んだ」


エイダの目を見開いて、魔導書に問いただす。


「え? 魔導書さんて人間だったの?」


「『元』人間。死んだらいつの間にか、この魔導書の中に閉じ込められていた」


「閉じ込められてる? ずっと?」


「あぁ、ずっとだ。感覚的には一人、何もない真っ暗な空間で『コンピュータ』と言う機械と向き合っている感じだ」


エイダはぎゅっと魔導書を抱きしめる。


「寂しくないの?」


「寂しくはないな。こんな状態でも、沢山のかけがえのない仲間と知り合えた。それに、今はエイダと友達になれたし」


エイダはしばらく無言で遠くを見つめ、考え込む。そして決心した顔で魔導書に宣言する。


「わたし、魔導書さんがそこから出れる方法を見つける」


「以前の仲間達も色々とやってくれたが、全部ダメだった。多分方法はない」


「それでも頑張る」


エイダの決心は揺るがない。魔導書はただ優しくエイダに言葉をかける。


「そうか…… ありがとう、エイダ」


「どういたしまして」


エイダはニコリと魔導書に笑う。


「けど、何すればいいんだろう?」


エイダの感動を台無しにするような発言に、魔導書は突っ込みたくなったが苦笑いして答える。


「魔導書のページを増やしてくれると助かる。たぶん解除の方法を探しに遠い国まで旅する事になる。道中かなりの危険が付きまとう。同時発動できる術式が1ページだけでは少々、心許こころもとない」


「ページが沢山あると、術式を沢山使えるの?」


「一枚のページ、裏表で二つ同時発動ができる。先程も加速度の『ax』『ay』『az』の値をに入力して加速する術式と、もう一つは空中に浮かんでいる間は重力が軽減する術式の両方を使っていた」


エイダが魔導書の一つしかない紙をめくると、確かに表と裏のページには、数値やら四角に入った文字などが表示されていた。


x=4002837.312341 m

y=3358512.822323 m

z=3658735.172112 m


vx=0 m/s

vy=0 m/s

vz=0 m/s


ax=0 m/s²

ay=0 m/s²

az=0 m/s²


X軸【 2.3】m/s²

Y軸【 -1.1】m/s²

Z軸【 1.2】m/s²

【ボタン】


エイダがページを交互に見ながら質問する。


「最初のページは、加速度の説明に使ってた数の下に、何か新しいのが追加されてる」


「『テキストフィールド』と呼ばれる四角い箱に、加速度x、y、zの数値を入力して『ボタン』を押すと、それらの値を使って加速の術式が発動するようにしている」


「テキストフィールド?」


エイダは聞きなれない単語の説明を求め、魔導書はそれに応じる。


「テキストフィールドは日本語に訳すと『文字領域』で、文字列や数を入力できる場所」


「ふ〜ん。このボタン押してもいい?」


エイダはボタンに触ろうとする。


「だ、駄目! ちょっと待て! コメントアウトして加速の術式発動しないようにするから」


魔導書は慌てて、エイダを静止させる。


「ごめん、冗談」


「は〜。心臓に悪いからやめてくれ」


魔導書はため息をつく。エイダはもう一つのページについて質問する。


「裏側のページは、MPとテキストフィールドとボタンがあるよ?」


MP:0.02

重力【 -1.0】m/s²

【ボタン】


「こっちはx、y、zの数値を毎回入力するの面倒くさくなって、重力に対しての値を入れるだけで済むように作り直した。+1なら重力2倍、0なら変化なし、-1なら無重力。地面に足が接地している時、重力が普通に戻るようにも途中で変更している。確かMPの表示は、その時に追加したと思う」


エイダは頑張って理解しようと、熱心に聞いている。魔導書はしみじみと呟く。


「あの時はコンマ一秒の操作が必要だった。両方のページを残してて本当に良かった。でなければ死んでた」


「ここに数を入れて、ボタンを押してたの? 術式を最初から書いてたのかと思った」


「コードを数秒で組むなんて無理。間に合わせの術式ばっかり組んで、少々疲れた。じっくり一晩かけて組み上げたい気分だ。次回は少しマシな重力制御の術式を組んでおくよ」


「楽しみにしてる」


エイダは西に傾き始めた太陽を薄めで眺めながら、魔導書に言う。


「こんな崖の木の上でも授業をするなんて、なんか凄いね」


「MPの回復にはもう少し時間がかかるし、まぁちょうどいいだろう?」


エイダは「そうだね」と頷いた。

ーーーーーーーー ログ ーーーーーーーーーー

エイダは木の枝の上で休んでいる。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


登場人物


エイダ・ラブレス

挿絵(By みてみん)

冒険者に憧れている9歳の普通の女の子。

魔導書さんを解放しようと決意する。


職業:術者プログラマ LV1

称号:初心者

スキル:『関数かんすう LV4』『構文こうぶん LV1』『文字列もじれつ LV1』『コメント LV1』『算術さんじゅつ演算子えんざんし LV1』『文字列もじれつ演算子えんざんし LV2』『変数へんすう LV2』『代入だいにゅう演算子えんざんし LV1』『オブジェクト指向しこう LV1』『イベント処理しょり lv1』『デカルト座標系ざひょうけい LV1』『力学りきがく LV2』

関数:『alert()』

HTMLタグ:『<script>』

イベント:『mousedown』【throw】

(【】は魔法に関連し、従来のjavascriptにはない)


喋る魔導書

挿絵(By みてみん)

エイダが森の奥で出会った喋る魔導書。

子供のたわ言と、あまり期待はしていない。


作者より


スキル一覧に変化がないと、少し寂しい気がします。


エイダと魔道書の会話の話題がコロコロ変わっていってしまい、話を組み立てるのに苦労しています。

言葉の連想ゲームみたいに、次々にエイダが質問してしまうせいなのかな?

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