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異世界の魔法はJavaScriptで起動する  作者: あきらメル
第2章 入門編
23/30

入門編『魔力量0』【魔導書視点】

「それさぁ、早く言ってよぉ〜」


って呑気のんきに言ってる場合じゃない。ヤバイヤバイ。すぐさまエイダの魔力の残りを確認する。


0.022 MP


崖がどのくらいの高さかわからない。下までMPがもつかわからない。もし途中で魔力がなくなると、重力の影響をモロに受け、下まで自由落下する事になる。かなりの確率でエイダは死ぬ。


とにかく今は、崖の方に戻る事だ。このまま遠ざかったら何もできなくなる。エイダに指示を飛ばしながら、術式に速度の逆の値を加速度に入力していく。


「これから崖の方に逆加速する。衝撃に備えて!どこか掴める所があれば掴んで! ナウ!」


エイダの返答を待たずに、加速のボタンを押す。1秒でエイダの速度がキャンセルされ、2秒で反対方向に同じ速度まで加速されてしまう。スピードが乗ったまま崖にぶつかったら駄目だ。中間の1.5秒ぐらい。感覚で逆加速を止め、あらかじめ入力しておいた無重力の値に切り替える。崖に体が激突する音と共に、エイダの激痛に耐える声が聞こえた。葉が擦れる音と、ガラガラと石が落ちる音が響く。速度の値を確認する。


vx=0.000 m/s

vy=-0.000 m/s

vz=0.000 m/s


ax=0.000 m/s²

ay=-0.000 m/s²

az=0.000 m/s²


速度も加速度もどちらとも0に落ち着いている。落ちてはいない。崖のどこかで止まったか? ついでに魔力の残量も確認する。


0.001 MP


危なかった。冷や汗が出る。エイダに声をかける。


「エイダ、大丈夫か? 怪我はないか?」


「うん、何とか大丈夫」


エイダの声はしっかりしている。一安心する。


「今、どんな状況が教えてくれ」


「崖に木が生えてて、今その枝に掴まってる」


偶然掴める場所に木があるとか、ラノベの主人公のように強運だ。


「下までどのくらいある?」


「50メーターぐらいかな?」


「上は?」


「10メーターぐらい?」


結構な崖だ。降りていたら、完璧に途中で魔力が尽きてた。


「登る事は?」


「無理。崖が反り返って、お父さんじゃないと登れない」


「降りる事は?」


「駄目。壁が垂直で、掴める所が真ん中辺で途切れてる」


登るのも降りるのも、自力エイダでは無理か。『どうしよう?』とか考えてると、エイダが苦しそうに声を震わせながら言う。


「ま、魔導書さん、もう腕がもたない」


「片手で木の枝に掴まってるのか?」


私を抱えてるって事は、片方しか手が使えないはずだ。


「うん」


プルプルしながら答える。


「残りの魔力を使って、一瞬だけ無重力にする。その一瞬で木の枝に体を上げろ。出来るか?」


「やる」


「0になったら発動する。3、2、1」


カウントを数えながら、値を入れていく。「ゼロ!」と叫び、加速ボタンを押す。


葉っぱが擦れる音がした後は、エイダの荒く息をする音しか聞こえない。時間が過ぎるが、速度と加速度の値はゼロのままだ。


「もう大丈夫か?」


「ハァハァ。ん、もう大丈夫。今、枝に体をのせてる」


「そうか」


安堵しながら、魔力を確認する。


0.000 MP


空っぽだ。本当に危なかった。


「しばらくそのままで待機。体力と魔力の回復に励め」


「わかった」


体と精神を安静にしていれば、魔力は少しずつ回復する。ある程度貯まれば、活路かつろが開ける。しばらく無言で脱出方法と必要魔力量を考えていると、エイダのすすり泣く音が聞こえてきた。


「ごめんなさい」


エイダに問いただす。


何故なぜ謝る?」


「調子に乗って、馬鹿な事しました」


「私に謝る事ではない。自分の命をさらしたのなら、自分に謝るべきだ。深く反省し、どうすればよかったのか考えなさい」


「はい」


エイダは返事をする。うん、本当に素直で良い子だ。


「とまあ偉そうに言っているが。本当は私の方が謝らないといけない。済まなかった、エイダ。私の方が調子に乗っていた」


エイダは返答に困っているが、謝罪を続ける。


「エイダがあまりにも楽しそうにしてたから、ついつい術式の出力を上げてしまった。魔法は便利だが、一つ間違えば命の危険もある。安全をおこたったのは、私の落ち度だ」


エイダは慌てて否定する。


「馬鹿な事したのはわたしで、魔導書さんは悪くないよ」


「エイダに『魔法を教えて』と言われ、私は了承した。安全ではない教え方をしたのは私だ。先生、大人ととしての責任を果たしていない」


「でもでも」


エイダはゆずる気は無さそうだ。このままだと謝罪の譲り合いが、永遠と続きそうな気がする。


「わかった。では、両方が『ごめんなさい』という事で」


「ん、それでいいよ」


エイダも了承りょうしょうする。二人、笑いあった。


あれ? ちょっと待てよ。


「考えてみれば、私の命も危険だったか。エイダが死ぬと、私も死ぬ」


「最初に交わしたマスター契約で、そうなってるの?」


「まぁそんな感じだ」


まぁ実際はエイダ母に殺される。


一ミリ一ミリ切り刻まれ、『一掃いっその事、殺してくれ〜!』と叫びたくなる様な拷問が、永遠とわに続く様な気がする。


本当に無事で良かった。

ーーーーーーーー ログ ーーーーーーーーーー

エイダは調子に乗りすぎた。

エイダは深く反省した。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


登場人物


エイダ・ラブレス

挿絵(By みてみん)

冒険者に憧れている9歳の普通の女の子。

深く反省している。


職業:術者プログラマ LV1

称号:初心者

スキル:『関数かんすう LV4』『構文こうぶん LV1』『文字列もじれつ LV1』『コメント LV1』『算術さんじゅつ演算子えんざんし LV1』『文字列もじれつ演算子えんざんし LV2』『変数へんすう LV2』『代入だいにゅう演算子えんざんし LV1』『オブジェクト指向しこう LV1』『イベント処理しょり lv1』『デカルト座標系ざひょうけい LV1』『力学りきがく LV2』

関数:『alert()』

HTMLタグ:『<script>』

イベント:『mousedown』【throw】

(【】は魔法に関連し、従来のjavascriptにはない)


喋る魔導書

挿絵(By みてみん)

エイダが森の奥で出会った喋る魔導書。

猛烈に反省している。


作者より


昨日は祝日で、書く時間が取れませんでした。週5回のペースを維持!とか言ってた矢先、ちょっと恥ずかしい。今日か明日に書けば、5回のペースになるかな?


4件目の評価と2件目の感想があり、嬉しかったです。誤字脱字本当に助かりました。


松重豊まつしげ ゆたかさんのCM大好きです。『孤独のグルメ』もいい味出してますよね。


魔力量の計算をちゃんとしていないので、少々あてずっぽで書いています。後で数値を書き直すかもしれません。


流れとしては、エイダ視点で何が起きたかを描写し、魔導書視点でスクリプトなどを踏まえて説明するなんですが、今回はいきなり魔導書視点から始めています。どうすれば面白くなるか、色々と模索中です。

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