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異世界の魔法はJavaScriptで起動する  作者: あきらメル
第2章 入門編
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入門編『無重力』

「空を飛べる!」


エイダの夢いっぱいの返答に、魔導書は『無重力』と言いかけて止める。


「う、うむ。その通りだ。空を自由に飛べる」


「やっぱり魔導書さんの魔法は凄い!」


キラキラと尊敬そんけい眼差まなざしで見つめるエイダに、魔導書はどうやって少女の夢を壊さずにこの場をおさめられるか、頭をフル回転させて言葉を紡ぐ。


「空を飛ぼうと思ったら、それなりの訓練が必要だ。今日はその訓練という事で『無重力』を体験してみよう、そうしよう」


「そっか、そうだよね」


エイダはみるみる意気消沈いきしょうちんしていく。魔導書は慌てて言葉を投げかけていく。


「とりあえず、エイダ。ジャンプしてみてくれ」


「は〜い」


エイダが軽くジャンプすると、体から急に重さが消え、空中に静止した。エイダがジタバタしても、空中に浮かんだままだ。体を動かしているうちに、軽く回転が加わってしまい、体が次第にかたむいていく。


「えっ? あれ〜?」


「これが無重力状態。エイダにかかっている重力を打ち消すように魔法で加速をかけているんだが。で、どんな感じだ?」


エイダは逆さまになりながらも、少しずつ無重力状態での体の使い方のコツがわかってきたようだ。体をひねりながら、魔導書の問いに答える。


「最初、不思議な感覚に驚いたけど、これ面白いかも」


「えい」「やー」と言いながら、エイダは体をクネクネ器用に動かして、次第に回転を速くしていく。


「見て〜見て〜速く〜なった〜」


「エイダ、かなり回転しているような声が聞こえてくるんだが、大丈夫なのか?」


「うん〜。平気〜平気〜。楽しいよ〜」


エイダは楽しげに回転のスピードを上げていく。


「あ、あれ、ちょっと気持ち悪くなってきたかも… は、吐き気が…」


「ちょっ、ちょっと待った!  重力を少し戻すから、足を伸ばして足から地面に接触するように。念の為、頭は腕でガードして」


魔導書は慌てて指示を飛ばす。幸運にも足から地面に当たり、回転が止まった。最近流行りの『ゲロイン』は回避する事は出来たが、エイダはグロッキー状態になり地面に寝転がっていた。数分すると、また元気なエイダに戻っていた。


「大変な目にあったよ。もう、魔導書さん、酷いよ!」


「わ、私の所為せいなのか!?」


エイダと魔導書はしばらく非難合戦でじゃれあった。頃合ころあいを見て、魔導書は授業を進めた。


「まぁ、何にせよ。空を飛ぼうと思ったら、無重力状態での体の制御ができないと難しい。飛行魔法は、あの状態で行きたい方向に加速をかけるのが基本だ」


「うん、頑張る」


エイダは拳を握りしめる。


「もう結構時間が経ったな。後の時間はエイダの魔力が切れるまで、重力で遊ぶ事にしよう。それで今日の授業は終いにする」


「はーい」


「少し準備するから待ってくれ」


エイダはソワソワしながら待った。時間は1分もかからなかった。


「ではまず重力二倍を体験してみよう」


魔導書がそう言うと、エイダの体が急に重くなった。


「なんか、凄く、重い」


「重力と同じ方向に、同じ強さで加速させている。普段より体が二倍重く感じてるはずだ」


エイダは重い足取りで、一歩一歩踏みしめる。


「歩くのがやっと。もう無理」


魔導書は慌てて解除する。


ちなみみにこの状態で普段の生活をすれば、かなり筋力が付くぞ。もしかしたら有名な戦闘民族みたいに、新たな力が解放されるかもしれない」


エイダは首をブンブン横に振る。


「無理無理無理」


「まぁ、そうだよな。それにエイダの魔力も続かないし。さて、今度は重力の半分を体験してみよう」


魔導書がそう言うと、エイダの体の重さが軽くなった。


「その状態なら、普段より二倍高く飛べるはずだ」


エイダは魔導書を抱えながら、楽しそうに高く飛びまくる。


「凄い、凄い」


楽しそうなエイダに、魔導書は声を掛ける。


「よし、今度は重力の6分の1。これは月と同じ重力だ」


エイダが力を溜めてジャンプすると、大人を楽に飛び越えられるぐらいジャンプできた。木を蹴り二段ジャンプしたり、回転やひねりを入れて遊ぶエイダ。


「見て見て、木の枝を使って木より高く飛べた〜」


魔導書は一つ提案する。


「試しに、走ってごらん?」


エイダは走ろうとするが、地面を蹴ってもうまく前進できない。


「地面がうまく蹴れなくて、前に進めない」


「足でしっかりと捉えられなくなる理由は、重力が小さくなった分、地面との摩擦が減るから。靴にスパイク等を取り付ければ、もう少しマシになると思うんだが」


「え〜、やだ。お気に入りの靴だもん」


エイダは即否定する。


「他には術式で、足が地面に接している時は従来の重力で、足が地面から離れたら重力を軽くする事もできる」


「それ、面白そう」


魔導書の術式の準備が終わると、早速エイダは低姿勢で地面を踏みしめながら加速する。ある程度スピードが乗ったら地面にあまり触れないよう、一歩一歩ジャンプするように蹴る。


「空をけてるみたい!」


エイダは緑の草原を猛スピードで駆け回る。岩や木を足場にして空中も飛びまくる。


「山を登るのも楽チン」


エイダは山の急斜面をものともせず、駆け上がっていく。そんなエイダに魔導書は声をかける。


「あ〜、エイダの魔力も尽きかけてきてるから、そろそろ止めないと」


「うん、わかった、これで終わりにする。えい!」


そういながらエイダは最後の大ジャンプをする。魔導書が術式を停止しようとした時、エイダの「あっ」と声をらした。


悪い予感がし、魔導書は手を止めエイダにたずねる。


「どうした、エイダ?」


「えっと、ジャンプしたんだけど。着地できないかも」


「な、何でかな?」


「着地地点が崖の向こう側」


その発言と同時に、エイダの身体は崖の上を通り過ぎた。

ーーーーーーーー ログ ーーーーーーーーーー

エイダは『無重力むじゅうりょく』を楽しんだ。

エイダは『重力軽減じゅうりょくけいげん』を楽しんだ。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


登場人物


エイダ・ラブレス

挿絵(By みてみん)

冒険者に憧れている9歳の普通の女の子。

ちょっと調子に乗りすぎた?


職業:術者プログラマ LV1

称号:初心者

スキル:『関数かんすう LV4』『構文こうぶん LV1』『文字列もじれつ LV1』『コメント LV1』『算術さんじゅつ演算子えんざんし LV1』『文字列もじれつ演算子えんざんし LV2』『変数へんすう LV2』『代入だいにゅう演算子えんざんし LV1』『オブジェクト指向しこう LV1』『イベント処理しょり lv1』『デカルト座標系ざひょうけい LV1』『力学りきがく LV2』

関数:『alert()』

HTMLタグ:『<script>』

イベント:『mousedown』【throw】

(【】は魔法に関連し、従来のjavascriptにはない)


喋る魔導書

挿絵(By みてみん)

エイダが森の奥で出会った喋る魔導書。

こっちも、ちょっと調子に乗りすぎた?


作者より


エイダ大丈夫か?

ジャイアントスパイダーの時よりピンチの様な気が。


昨日初めて感想をもらえました。嬉しかったです、ありがとうございます。舞い上がり過ぎて、返答がかなり長文になってしまいました。


三件目の評価が追加され、ブックマークも増えました。週5のペースを維持できるように頑張る活力をもらえました。


参考にしたページ


無重力でヨーヨー

http://labaq.com/archives/51757615.html


小学生の体力・運動能力調査結果(平成9年度 茨城県)、どのくらい垂直跳びできるか。

http://www2.center.ibk.ed.jp/contents/kenkyuu/houkoku/data/030s/sh-kekka.htm


重力が少ない月面では地球より速く走れるか

http://kimuraisao.com/kimblog4athletes/重力が少ない月面では地球より速く走れるか/


悪例で見るラノベ用物理学

https://kakuyomu.jp/works/1177354054881150013

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