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異世界の魔法はJavaScriptで起動する  作者: あきらメル
第2章 入門編
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入門編『加速度』

「小石が浮かんでるよ?」


エイダが魔導書に、今起きている事を説明する。


「あぁ。見えないが、多分浮かんでるはずだ」


エイダが不思議そうに首をかたむたずねる。


「『加速度』の話なのに、小石は加速していないよ?」


「いや、ちゃんと『加速』は加えている。『反対』にだがな」


「『反対』にって、どう言う事?」


「まぁ一旦いったん、小石を元の状態に戻そう」


魔導書がそう言うと、小石はコトリと地面に落ちた。


「あ、落ちた」


エイダの当たり前の解説に、魔導書は微笑ましく思った。


「では質問。なぜ小石は地面に落ちたんだと思う?」


「えっと、確か…。お母さんは『重力?』とか何とか言ってたと思う」


「そう『重力』だ」


そこまでエイダ母は教えているのかと、感心するように魔導書はエイダに答える。


「『重力』の説明をする前に、エイダもう一度小石を持ってもらえないか?」


「ん」


エイダが小石を手に取ると、魔導書のページに数値が9つ表示された。下の6つの値は、小石を持ち上げ終わると、せわしなく動いていた値は0に収束していった。


x=4002638.222121 m

y=3358611.913304 m

z=3658634.233306 m


vx=0.000 m/s

vy=-0.000 m/s

vz=0.000 m/s


ax=0.000 m/s²

ay=-0.000 m/s²

az=0.000 m/s²


エイダはページを見て、今までの復習もねて9つの数を自ら説明する。


「最初の三つが『位置』。真ん中の三つが『速度』。最後の三つは『加速度』、かな?」


「そう、三次元空間での加速度の『強さ』と『方向』だ。どんな時に加速度の値が動くか、実験してごらん。そして結果を私に報告してくれないか?」


「うん」


エイダは強く頷き、楽しそうに小石を振り回したりし始めた。魔導書はエイダの試行錯誤の声を聞きながら、静かに待った。数分後また息を切らしながら、エイダは魔導書に報告した。


「止まっている時は、加速度は0」


「うむ、そうだな。全く動いていないから速度は0のままだ」


魔導書はエイダの報告に頷く。


「一番不思議だったのは、小石をこんな風に『つーーーー』と動したら、加速度が0になるの。動いているのに」


エイダは小石を一定の速度で直線に動かした。魔導書はエイダに質問する。


「速度の値はどのように変化してる?」


「小さく変化するけど、速度の値はずっと同じ値」


魔導書は質問をかぶせる。


「速度に変化がないという事は?」


エイダはちょっと納得しがたいが答える。


「加速度は0」


「そういう事」


エイダは教わった事を小石を動かしながら確認する。しばらくすると魔道書はエイダに尋ねた。


「他にわかった事は?」


「急に動かしたり、止まったりすると、加速度がビュンって跳ねる。これは速度が急に変化するから?」


エイダは力一杯、小石を動かしたり止めたりを繰り返す。動き回るエイダに、魔道書は「その通り」と返す。エイダは思い出したように、もう一つ報告する。


「上に力一杯放り投げると、小石が地面に落ちるまでず〜っと加速度が同じままなの」


父親から教えてもらった投擲とうてきスキルを存分ぞんぶんに使い、エイダは小石を天高く投げる。エイダの言う通り、手から離れた瞬間から地面に落ちるまで、確かに加速度はある値で固定された。


ax=-6.149567342 m/s2

ay=-5.160099688 m/s2

az=-5.621049076 m/s2


「これって何?」


エイダの問いに、『やっと本題に戻れた』という感じで嬉しそうに魔道書は答える。


「これが『重力』」


「えっと?」


エイダは困惑の声を上げ、魔道書に説明を求める。


「『重力』は地球上の物体を常に、地球の中心へ加速させている。ページに表示されているのが、『重力』の加速度の値。値は9.80665 m/s2で、これはまぁ一定と考えていい」


エイダはまだ困惑している。エイダは一番疑問に思ったことを質問する。


「常に加速してるんだったら、何で上に放り投げた時しか出てこないの? 地面に置いてある時とか、わたしが手に持ってる時は、加速度の値は0だよ?」


エイダは小石を拾って手の平に置く。ページに表示されている加速度を調べるが、やはり0になっている。


「それはエイダが小石を支えることにより、上方向に同じ量の加速度が加えられ、重力の影響を打ち消し0にしているからだ」


「打ち消す?」


「エイダや小石や全ての物には、常に重力がかかっている。しかし地面がエイダ達を支える事により、重力を打ち消し加速度は0になる。しかし投げたり、高い所からジャンプしたりして地面からの支えがなくなると、今まで打ち消されていた重力が表に出てきて、下に引っ張られ、加速度の値がページに表示されるという事」


「う〜ん」


エイダは困った様な声を出す。そんなエイダに魔導書は、笑いながらフォローする。


「いっぺんに理解しなくても大丈夫。少しずつ覚えていけばいいから」


「ん、わかった」


念のため魔導書は意地悪っぽく、どのくらい理解したかエイダに質問する。


「先程の小石が浮かぶカラクリは理解できたかな?」


「えっと。重力の反対方向に魔術スクリプトで加速度を加えて、打ち消してたから止まってた?」


魔導書はほぅと感心し「その通り」と答える。そしてまた質問する。


「では、エイダにその魔術スクリプトをかけるとどうなると思う?」


「えっ?」とエイダは一瞬驚くが。頭で色々と思考する内に、徐々に口元がにやけていく。そして魔導書の質問に満点の笑顔で答える。


「空を飛べる!」

ーーーーーーーー ログ ーーーーーーーーーー

エイダは『加速度かそくど』を理解した。

力学りきがく』スキルがLV2になった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


登場人物


エイダ・ラブレス

挿絵(By みてみん)

冒険者に憧れている9歳の普通の女の子。

体験学習大好き。


職業:術者プログラマ LV1

称号:初心者

スキル:『関数かんすう LV4』『構文こうぶん LV1』『文字列もじれつ LV1』『コメント LV1』『算術さんじゅつ演算子えんざんし LV1』『文字列もじれつ演算子えんざんし LV2』『変数へんすう LV2』『代入だいにゅう演算子えんざんし LV1』『オブジェクト指向しこう LV1』『イベント処理しょり lv1』『デカルト座標系ざひょうけい LV1』『力学りきがく LV2 up』

関数:『alert()』

HTMLタグ:『<script>』

イベント:『mousedown』【throw】

(【】は魔法に関連し、従来のjavascriptにはない)


喋る魔導書

挿絵(By みてみん)

エイダが森の奥で出会った喋る魔導書。


作者より


相変わらずストックが全くない状態で書いています。平日は2000文字以上書いてから投稿しようと心に決めているので、投稿時間がまちまちになってしまいます。週末に書いてストックしたいのですが、家族サービスとか色々あって無理です。兎に角、書く『速度』が上がればこの状態から抜け出せるとは思うのですが。もっと精進しないと。毎日沢山書いて、書く『加速度』の値を大きくしていきたいですね。うん、うまくからませられない。


参考にしたページ


スマートフォンの加速度センサについて

https://blog.smartdrive.co.jp/スマートフォンの加速度センサについて-b548607cc5ad

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