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異世界の魔法はJavaScriptで起動する  作者: あきらメル
第2章 入門編
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入門編『速度』

「まぁ一先ひとまず『三次元空間』は置いておいて、『速度』の説明に入ろう。エイダ、また小石を拾ってもらえるかな?」


魔導書はエイダに指示する。エイダが小石を拾うと、魔導書のページに数値が六つ現れた。


x=4002637.522113 m

y=3358612.210314 m

z=3658635.512306 m

vx=0.000 m/s

vy=-0.000 m/s

vz=0.000 m/s


エイダが小石をジッと動かさないでいると『vx』『vy』『vz』の値が0になり、動かすと値が変化する。魔導書は説明する。


「『vx』『vy』『vz』が小石の三次元での速度と方向を表している。『x』か『y』か『z』と同じ軸で動かせば、一つの値だけが動くはずだ」


エイダは小石を左右に少し傾けて振ったり、自分の向きを変えて振ったり、試行錯誤を繰り返した。しばらくするとエイダが声をあげた。


「あっ、この向きで、この角度だと『vz』しか動かない」


エイダが小石を一定の角度で直線的に前後させると、『vz』の値がプラスマイナスと大きく変動したが、『vx』と『vy』はほぼ0に近い値だった。


「お、z軸を見つけたようだな。それを元にして、x軸とy軸も探してごらん」


エイダは「あーでもない」「こーでもない」と、楽しそうに石を振り回した。魔導書は邪魔をしないように、静かに見守った。


「魔導書さん、これが『vz』しか動かなくて、こっちが『vy』。最後にこれが『vx』しか動かない。全部見つけたよ。けど、なんか全部斜めだね」


エイダは石を動かし実演し、報告する。


「早いな。さすがエイダだ。動かしてて何か気が付いた事はあるか?」


「えっとね。早く動かすと、数字が大きくなって、遅く動かすと数字が小さくなる」


エイダは小石をゆっくり動かし実演する。


「他には?」


魔導書はさらに答えを促す。


「例えば『vz』だけど、こっちへ行く時は『プラス(+)の数』で、帰る時は『マイナス(ー)の数』になる」


エイダは一番最初に見つけたz軸で実演する。z軸上で左に振ると『vz』がプラスになり、右に振るとP『vz』がマイナスになった。


「おっ、なかなか良い所に気付いたな」


「何でプラスになったりマイナスになったりするの?」


エイダの質問に魔導書は答える。


「行きと帰りで速度の向きが逆方向になる為、プラスがマイナスになり、マイナスがプラスになる。同じスピードで前後させたら、ほとんど同じ値で交互にプラスとマイナスになるはず」


「あっ本当だ」


エイダは変化する『vz』の数値を見て納得する。魔導書はここぞとばかりに質問する。


「もし小石の速度が(vx=12,vy=-5,vz=20)だったら、反対の速度は何になると思う?」


「えっと?」


エイダは返答に困った。それを見て魔導書は質問を変えた。


「もし速度がx軸だけで(vx=12,vy=0,vz=0)だったら?」


「xの方向に12行ってるから、反対は−12の(vx=-12,vy=0,vz=0)かな?プラスをマイナスにすれば良いから」


「正解。ではy軸の(vx=0,vy=-5,vz=0)は?」


「マイナスをプラスにすればいいから(vx=0,vy=5,vz=0)」


「正解。では(vx=0,vy=0,vz=20)は?」


「(vx=0,vy=0,vz=-20)?」


「正解。最初の質問に戻るが、(vx=12,vy=-5,vz=20)の場合はどうなると思う?」


エイダは落ち着いて質問に取り組んだ。なぜ魔導書は3つの簡単な質問に分けたのか?


「えっともしかして、『vx』『vy』『vz』を全部プラスマイナス変えれば良いのかな?だったら(vx=-12,vy=5,vz=-20)?」


「そうその通り。『x』『y』『z』軸上ではない角度で、石を振って確認してごらん」


エイダは言われた通り振って確認する。


「本当だ。なんか不思議。面白〜い」


石を振り回してはしゃいでいるエイダに、魔導書は一つ提案する。


「上に放り投げても面白いぞ。一番上の頂点で、一旦『vz』『vy』『vz』の値が全て0になるはずだ」


「本当だ。凄い。一瞬だけ0になった」


エイダは魔導書を手に持ち、石を力一杯上に放り投げたり、走ったり、振り回したり、地面に叩きつけたりリバウンドさせたり、位置や速度の変化を一通り楽しんだ。


「えらい楽しそうだな、エイダ」


エイダはハァハァと息を整えながら答える。


「石の動きを、こんな風に数で表現できるなんて思ってもみなかった」


「こんなに楽しんでもらえるとは思わなかった」


エイダは目をランランにして質問する。


「他にはないの?」


魔導書はしばらく考え、エイダに言った。


「『加速度』は後日詳しく説明しようと思ったが、エイダがあまりにも意欲的だから、もう今日全部やってしまおう」


エイダは魔導書の『加速度』の説明を思い出す。


「『速度』が変化する、どうのこうのだよね?」


「そう『加』『速度』だから、『速度を加える』。これを覚えておけば、かなり楽しいことができる。そうだな、エイダ。今持っている小石を、ゆっくりと手離してごらん?」


「ん、わかった」


エイダはそう言って、小石から手を離した。地面に落ちると思われた小石は、空中に静止し浮かんでいた。


「えっ?」


エイダは目を見開いて、ありえない現象をつぶさに見つめた。

ーーーーーーーー ログ ーーーーーーーーーー

エイダは『速度そくど』を理解した。

力学りきがく』スキルがLV1になった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


登場人物


エイダ・ラブレス

挿絵(By みてみん)

冒険者に憧れている9歳の普通の女の子。

体験学習大好き。座学嫌い。


職業:術者プログラマ LV1

称号:初心者

スキル:『関数かんすう LV4』『構文こうぶん LV1』『文字列もじれつ LV1』『コメント LV1』『算術さんじゅつ演算子えんざんし LV1』『文字列もじれつ演算子えんざんし LV2』『変数へんすう LV2』『代入だいにゅう演算子えんざんし LV1』『オブジェクト指向しこう LV1』『イベント処理しょり lv1』『デカルト座標系ざひょうけい LV1』『力学りきがく LV1 new』

関数:『alert()』

HTMLタグ:『<script>』

イベント:『mousedown』【throw】

(【】は魔法に関連し、従来のjavascriptにはない)


喋る魔導書

挿絵(By みてみん)

エイダが森の奥で出会った喋る魔導書。

授業を体験学習にシフトし、手応えを感じた様。


作者より


毎回間違った事を書いていないか、ヒヤヒヤしながら書いています。説明の間違い、誤字脱字ごじだつじがあったら是非ぜひ、いまだ何も書かれていない『感想ページ』にてお教え下さい。また説明を読んでもわからない所を教えてもらえると、説明のどの部分を掘り下げれば良いのかわかるので助かります。


算数の『プラス』『マイナス』は、中学校で習うみたいですね。エイダが普通に使いこなしているので、若干どうしようか迷いました。今更プラスとマイナスの説明から入るのも面倒臭いし。まぁエイダ母がみっちり教えていると言う事で。便利なお母さんです。


参考にしたページ


正の数・負の数の計算

http://ronri2.web.fc2.com/sansu/sefu.html

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