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異世界の魔法はJavaScriptで起動する  作者: あきらメル
第2章 入門編
13/30

入門編『変数と代入演算子』

へんすう?」


エイダは聞きなれない言葉に聞き返す。


「いや『へんな』じゃなく、『わる』の方。中身の値が変わるので『変数へんすう』」


エイダはもう一度術式(スクリプト)を見返す。


<script>

var x=1;

var y=2;

alert(x+y);

</script>


「普通に考えたら『x』と『y』は数字じゃなくアルファベットだから、『文字列かな?』と思う。そして文字列の『+』はくっ付けるから、答えは『xy』になるような気がするけど、多分そうじゃない」


「ほう、何でそう思う?」


魔導書は感心したように続きを促す。


「えっと、まず始めに。そんな簡単な質問を魔導書さんが聞いてくるはずない。簡単な問題はただの前フリで、間違った答えに誘導してニヤニヤする。多分これもそう」


「何かエラい言われようだが、まぁ良しとしよう」


「二つ目に、文字列はダブルクォーテーション『"』かシングルクォーテーション『'』で囲まれていないといけないから、『x』と『y』はアルファベットだけど文字列じゃない」


「ふむふむ」


「三つ目に、新しい単語『変数』が出て来たから。『x』は『y』は多分『変数』何だと思う。さっき『中身が変わる』と言ってたから、『x』は『y』はタダだの入れ物で、中身は数字の『1』と『2』。どうしてかと言うと、alert()のコマンドの前にある『var x=1;』と『var y=2;』で、入れ物に中身を入れてるから。だから答えは……」


「答えは?」


魔導書は嬉しそうに尋ねる。


「『3』。単純に1と2の足し算だから」


「正解」


ページに『3』の警告文アラートが表示される。


「やったー」


エイダは両手を上げて喜ぶ。間違えが続いていたので、魔導書を少しは見返せて嬉しいのだ。


「今のは本当に関心した。正しい答えもさることながら、理路整然りろせいぜんとあそこまで説明できるのは凄い。エイダの年齢ではなかなかできることではないぞ」


「お母さんに叩き込まれてるから……」


エイダは死んだ魚のような目で、遠くを見つめる。


「お母さん、容赦なく理詰めで追及してくるの。少しでも理屈が通ってないと『何で?』『どうして?』が続いて、あやふやなこと言うと『本当に?』『〇〇じゃないの?』と訂正されるの。お母さんが納得するまで、それが永遠と永遠と続くの。世知辛せちがらい世の中だよね……」


魔導書を持つ手がプルプルと震える。


「最後の方は支離滅裂しりめつれつだが、まぁエイダ、ガンバ」


はげますことしか出来ない魔導書であった。エイダが落ち着くまで、しばらく授業は中断した。


「もぐもぐ」


エイダは母に作ってもらったサンドウィッチを頬張ほおばっている。頭を沢山使って糖分を欲しているのか、あっという間に食べてしまった。


「あぁ、美味しかった。魔導書さんも食べれればいいのに。お母さんの料理、美味しいよ」


「まぁ、わたしは食べる必要はないからな」


エイダはパンくずを払い落とし、後片付けをする。テキパキ動いているエイダに、魔導書は声をかける。


「エイダの母は、本当によくエイダを教えていると思うぞ」


「お母さんが?」


エイダは魔導書に振り向き、聞き返す。


「あぁ。術士プログラマにとって、『理論的思考ロジカルシンキング』は必要不可欠な能力スキルだ。それを完璧にエイダに身に付けさせている」


論理的思考ロジカルシンキング?」


「物事から規則性ルールを見出し理解し、それらの規則性ルールを組み合わせ、未知の問題に答えを出す。先程エイダがやった事だ。これが出来るか出来ないかで、だいぶ違う。エイダの母は、本当にエイダの事を想って教えていると思う」


エイダは魔導書の言葉を静かに聞く。


「『魔法を教えてくれない』と『冒険者になって欲しくないんだ』とエイダは愚痴っていたが、『英語』『数学』『論理的思考』の基礎はしっかりと身につけてさせている。本当に良いお母さんだ」


「そうなんだ」


エイダは嬉しそうにはにかみ、つぶやいた。母親の事をほめめられて嬉しくない子供はいない。ましてや自分の『冒険者になりたい』という意思を尊重してくれて、想っていてくれてるのだから。


「まぁ怖いがな」


「そうなんだよね」


魔導書とエイダは、お互い苦笑いを浮かべた。


「腹ごしらえも終わったようだし、先程の授業の続きをしようか?」


「ん」


エイダは魔導書のページを開く。


<script>

var x=1;

var y=2;

alert(x+y);

</script>


「エイダの推測の通り『x』と『y』は変数。先頭の『var』は英語の『variable』の略で、意味は『変化するモノ』。『var x』は『変数宣言』と呼ばれ『xは変数ですよ』と宣言している。後半の『x=1』は『代入演算子』と呼ばれ、『xに1を入れる』演算を行う。二つの事を一行で済ましているが、二行に分かれていても問題ない」


<script>

var x; //変数宣言

x=1; //代入演算子

var y; //変数宣言

y=2; //代入演算子

alert(x+y);

</script>


術式スクリプトが更新され、前回と同じように『3』の警告文アラートが表示される。


「変数宣言…… 代入演算子……」


エイダは覚えるように、単語を繰り返す。


「どんどん単語が増えるが、根を詰めて全部覚えなくてもいいんだぞ?原理さえ知っていればいいのだから」


「うん、わかった」


魔導書の助言アドバイスを話半分に、エイダは教わった事の整理に集中する。その間、魔導書は静かに待ち続けた。

ーーーーーーーー ログ ーーーーーーーーーー

エイダは『変数へんすう』を理解した。

エイダは変数へんすう宣言せんげん『var』を覚えた。

変数へんすう』スキルがLV1になった。

エイダは演算子えんざんし『=』を覚えた。

代入だいにゅう演算子えんざんし』スキルがLV1になった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


登場人物


エイダ・ラブレス

挿絵(By みてみん)

冒険者に憧れている9歳の普通の女の子。

お母さん子の模様。


職業:術者プログラマ LV1

称号:初心者

スキル:『関数かんすう LV1』『構文こうぶん LV1』『文字列もじれつ LV1』『コメント LV1』『算術さんじゅつ演算子えんざんし LV1』『文字列もじれつ演算子えんざんし LV1』『変数へんすう LV1 new』『代入だいにゅう演算子えんざんし LV1 new』

関数:『alert()』

HTMLタグ:『<script>』


喋る魔導書

挿絵(By みてみん)

エイダが森の奥で出会った喋る魔導書。

エイダがいい子なので、教え甲斐がいがある。


作者より

スキルが順調に増えていますね。リストが増えていくのを見ると、作者も楽しいです。


三日連続更新できました。あと木曜と金曜です。できるかな?


参考にしたページ


プログラマーに向いている人とそうでない人

http://architect-wat.hatenablog.jp/entry/2014/12/04/034411


JSfiddleサンプル


変数例1

https://jsfiddle.net/kkxtnjkd/8/


変数例2

https://jsfiddle.net/kkxtnjkd/9/

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