セネカ
空間に満ちたのは光だった。
天使から放たれた光爆は奔流となり、一直線にこちらへ迫って来た。
爆発的に拡大した光が、全てを呑み込まんとし――しかしあるところで止まる。
それはセネカへ達する寸前だった。
光に目を眩ませた吉野が視界を取り戻したとき、セネカは既に正面へ向き直っていた。向き直り――しかし、何かをした様子はない。
ただ、在るだけだ。
絶大な存在感をもって。
「なあ、セネカ。俺は何をすればいい」
問いかけに、セネカは前を向いたまま短く応じる。
「想像して」
きゅ、と吉野の手に小さな力が加わる。
「テッペーは想像して。私が彼らよりも強い現実を。私が彼らに勝つことのできる現実を。そうしてくれれば、私はそれを創造する」
答えとともに、セネカは繊手をわずかに上げる。
それで、拡大を停止していた光が、収束していく。
みるみるうちに小さくなり、その向こうの天使と、顔を青ざめさせた男が見えた。
何が起こっているのか。
「ば……馬鹿な。ナトラスカの最大魔法ですよ。それが、どうすれば――」
「これも魔法、これが魔法ってことさ。んじゃー吉野少年。チュートリアル最後のミッションだ。――派手にいけ」
真柴の言葉に、吉野は頷いて、視線を上げた。
見据えるのは、敵。
真柴が笑う。
吉野も――笑った。
真柴と同じく、凶悪に。
「――やっちまえ!」
閃光が爆裂した。