わずかの猶予
大爆発があった。
それはちょうど、あのふたりが立っていた位置だ。爆心地は立ち上る粉塵によって見通せないが、あの勢いだと校舎屋上は木っ端微塵だろう。
それでも光線は構わず、飛来する瓦礫や煙を貫いていたが、秋東が手で制止を合図したことですべての乱反射が消える。
「――ふーん」
状況を見下ろして、秋東は判断する。
「ダイナマイト消火、ってわけじゃないけど、派手に爆発させて粉塵に身を隠し、ついでに足元を抜いて校舎に逃げ込んだ、ってわけね。単純だけど、思いのほか冷静みたいだわ」
無差別な乱反射による攻撃。しかしながら、全く調整ができないというわけではない。一応、校舎を全壊させることはないように図っていた――勿論、吉野やセネカを思ってこのことでは全くない。秋東の都合だ。
「ちゃんと消え失せる瞬間を見ておかないと、万が一にも見逃していたんじゃ様にならないからね……ま、いざとなったら校舎全部崩して埋めるけど。生き埋めじゃダメだから瓦礫をローラーしなきゃいけないし、それでもちゃんととどめを刺せているか不安だから、面倒この上ない案よね。できれば取りたくない作戦だけど……さて」
粉塵が晴れ、さらに無残なことになっている校舎を見下ろして、秋東は目を細める。
「どうするのかしらね、吉野くんは?」




