ナニ? セクハラ? コロスヨ?
「んぁ……ここ、どこ?」
私が目を覚ますと、なんか景色がユラユラと揺れていた。寝ぼけてるからか? とも思ったが、嗅ぎ慣れたごー君の首元の香りから、すぐに自分がどんな体勢になっているのかを知る。
「帰宅途中。もうすぐ家だよ。それより、怪我大丈夫かよ? 紫水さん。どっか痛くない?」
「へっ? 怪我って? あっ、んぁっ……いったっ……ナニコレ? なんでこんなに全身傷だらけで? あれ? 私、何してたっけ?」
「まぁその様子なら大丈夫そうだけど、明日は念のため病院行こうぜ」
「病院って……あぁ~!! 思い出したっ! あの、魔法生物はどうなったの? それにごー君っ、怪我してないのっ!?」
「おかげさまで。紫水さんの無茶な体当たりで倒したんだよ。けど、もうあんな事しないでくれよな? 心臓に悪すぎるから、ホント」
「そっかぁ~……あれでやっつけれたのかぁ。なら、最初っからああすれば良かったかなぁ~」
「いや、人の話聞いてる? ねぇ?」
ごー君の声は既に私には届いていなかった。私の意識は腕についた擦り傷や、顔にまでついた擦り傷に奪われていたからだ。あぁ~……これ、どうしよう。ファンデーションで誤魔化せるかなぁ? でも、今のままだとすっごい沁みそうで嫌だなぁ。
「歩けそうなら降りて欲しんだけど? そろそろ近所で恥ずかしいし」
「い~じゃないっ。こんな時間に誰も外になんかいないわよ。それに、私怪我人なのよ? 命の恩人なのよ? 楽させてよ~」
「いつなら苦労するんだよ、アンタ。年がら年中そんな事言ってんじゃねぇか」
とりあえずテヘペロッてして誤魔化して、首に両腕をギュッと回して自ら体勢を直す。ごー君の背中から伝わる体温、背中越しに伝わる心音。この子は確かに生きていた。本当に良かったなぁ……魔法少女やってて、1番嬉しかったかも。
まぁ、これだけ頑張ったんだし? 傷だらけだし? これなら明日、学校休んでも仕方ないでしょ。ていうか、こんな世紀末駆け抜けてきたような擦り傷だらけの顔と身体で出席したら、生徒の心臓に悪いでしょうし。柴崎教諭なんて腰を抜かしたりして…………
「あぁぁぁぁあぁ~~~っ!!」
「ちょっ、近所迷惑だから音量っ、下げてっ」
「私、委員会で使う資料、途中で投げっぱなしっ! しかも、学校に全部置き忘れて来てるっ」
「……そんな事。もう明日でよくね?」
「そんな事言ってぇ……またネチネチネチネチ柴崎教諭に嫌味を言われるのは私なんだよ? なに? ごー君がその役を代わってくれるのっ?」
「代われるなら代わってやりたいけど、ほら……誰かの代わりなんていないからさ」
「なに、いい話風に言ってんのよ。とにかく、戻るわよっ。ほらっ、ダッシュッ」
「本気で言ってんの? 明日の朝早くから出勤すればいいじゃん」
「それが私に出来ると思ってるの? さては貴方、ごー君の偽物ね?」
「なんでそこまで布団の誘惑に弱いんだよ、アンタ。もう結婚しちまえよ」
「結婚……彼氏もいない私に結婚? ナニ? セクハラ? コロスヨ?」
「首っ、首入ってるっ。これこそ、パワハラッ。パワハラじゃねぇかっ!」
「倍返しだっ」
「すでに懐かしいな、そのネタ」
結婚だなんて単語を出すからちょっとしんみりしちゃったじゃないのよ~。これから資料も仕上げなきゃだし、もうテンションだだ下がりなんですけど。ごー君の首を絞めていた両腕の力まで抜けて、だらっと身体を預けるような姿勢に戻す。はぁ~あぁ~……
「年収1000万以上で、イケメンで、私のいう事を大体叶えてくれる彼氏が、学校の資料取ってきてくれないかなぁ~」
「……イケメン以外は条件クリアしてやってんじゃねぇか……」
「なに? ごー君? なにか言った?」
「ただの独り言だよ。それより、とりあえず一旦帰って、父さんに頼んで車出してもらおう」
「えぇ~……こんな時間だと、浩司さん疲れてるだろうし、迷惑じゃないかなぁ?」
「学生の俺をこんな時間に連れまわす方が迷惑じゃないんですかねぇ?」
「なに? 迷惑だと思ってるの?」
「……別に。もう慣れた。とりあえず、家に帰るぜ」
私を背負ったまま小走りに走り出すごー君。私は振り落とされないように首に回す腕に力を込めて、彼の息遣いが聞こえるぐらいに顔を寄せてしがみつくのだった。
以上で終わりです。最後までお付き合いいただいて、ありがとうございました。
一応、この先のネタもあるし、書きたい事も結構あるのですが、違うジャンルも書きたいし、自分的なメイン作品の存在もあるので、この作品はここで完結です。
因みに、物語の主人公は国中剛になるので、タグ詐欺じゃないです?
よろしければ、感想評価をお願いします。




