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魔法少女ちゃんねる  作者: くるー
天塚紫水の場合
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そろそろ私にお金くれてもいいのよ?

 翌日。私は布団の中で素敵な朝を迎えていた。温かな布団の中で迎える休日の朝は、素敵だ。何が素敵かって、朝だというのに起きなくてもいい所が素敵だ。ずっとずっとこの時間が続けばいいのに……ごめんなさい、2回目ですしそろそろこのくだり止めますね。


「うぅ~……ちょっと飲み過ぎたかなぁ~」


 素敵な休みの朝とはいえ、昨晩を怠惰に過ごしてしまった私は、それ相応の業を背負わされてしまったようだ。頭痛は酷いし、吐き気もある。完全な2日酔い。2日酔いなんて久しくなかったので、(最後は学生時代だったような。あれっ? だったら最近じゃ~ん)少し新鮮な気持ちだったりするのだが、それを楽しむ余裕なんてある訳もなく、フラフラと台所で水を飲み干して昨夜の出来事を振り返る。


「ええっと。なんか大切な話を聞いたような……」


 思い出そうとすると、また頭痛がするので私は頭を両手で覆って座り込んだ。今日はごー君の家ではなくて、私の実家。両手の指で数えるくらいの大家族でも収容可能な、ただっぴろい庭付き一戸建てに、両親と私だけの3人家族で住んでいるのだが……両親は共に仕事の虫で、家庭内の事はずっと昔から放置気味。だから、当然今日も私1人だけ。


 なんか、しんみりしちゃいそうな話の展開だけど、別に家族の仲が悪い訳ではない。時間が合えば一緒に食事ぐらいするし、毎回久しぶりに顔を合わせるから世間話には事欠かないし、お互いに浮気の影1つないみたいだし? あの2人はただただ仕事が楽しくて……そっちを優先しちゃう駄目な両親ってだけの話だ。まぁ色々駄目なのは私も同じなので、お相子あいこって事で。


 そんな家庭環境の中、私が触れるもの全てを傷つける鋭いナイフのようなすさんだ青春時代を送らなかったのは、ひとえに国中家の住人のおかげだ。ご飯も、お風呂の、お泊りまでも……まるで実の娘(孫娘の方が近いかも)のように大切に、ぬくぬくと育ててもらった。後に聞いた所によると、春さんいわく本当は女の子が欲しかったそうで……実の息子よりも可愛がってもらった気がする。まぁそんな理由わけでお世話になり続けていた私は、せめてもの恩返しにと幼少期のごー君の子守りから遊び相手まで、家族ぐるみの付き合いを続けて現在に至るのだ。


 最近は生意気に拍車がかかって可愛くないごー君だが、小さい頃は私にベッタリで、素直で、純粋で、よくウチの庭に招いて、魔法少女ごっこなんかに付き合ってあげた……あれ? そう言えば、ごー君の他にももう1人、女の子と一緒に遊んでいたような?


『あり得ませんわ。なぜなら魔力の譲渡は、長く付き合いのある、互いを信頼しあった間柄でないと出来ませんもの』


 そのタイミングで唐突に昨晩、ルビーちゃんに教えてもらった事実を思い出した。この言葉が本当なら、私と久慈君はもっと古くからの知り合いの筈なんだけど、私の方は初対面のつもりだったし久慈君だってそんな事は言ってなかったような……でも、そう言えばごー君がこんな事を言っていた。


『アンタに無理矢理付き合わされて3人で魔法少女ごっこさせられたトラウマが今、蘇ってきたぜ』


 そうだ。確かに言っていた。つまり、この3人目っていうのが久慈君の事だろうか? 久慈君のあの容姿なら幼少時代もさぞや可愛いだろうし、女の子と見間違えたっておかしくないだろうし……私が小学生から中学生くらいの頃だったような気がするんだけど……あぁ~、思い出そうとすると、頭がガンガンするんじゃ~。


「紫水さん、紫水さん?」


「んぁっ? あれ? ごー君? どーしたの?」


「どーしたのじゃねぇよ。インターホン押しても応答ないどころか、話し掛けても応答ないとか……やっぱ、2日酔いが酷いの?」


「ん~。久しぶりにちょっと気持ち悪い~っ」


「だろうと思って、母さんがあさりの味噌汁作ってるから食べに来なさいってさ」


「本当に? 食べりゅ~っ」


「なら、先に行ってるからはやめに来てよ? 冷めるからさ」


「ちょっと待って。無理だから引っ張って~」


 私がしゃがみ込んだまま宙に向かって両手を伸ばすような態勢をしていると、ごー君は眉間の皺を更に深く寄せて心底面倒くさそうに溜め息を落とした。はぁ~、本当に可愛くないわねぇ~。


「ほら、貴方が小さい頃に、オシメを換えたのも、お風呂で頭を流したのも、夜のおトイレに付き合ってあげたのも、誰だった?」


「夜のトイレの件は、俺がアンタに付き合って上げたんだよなぁ? 事実を捻じ曲げんのやめてくれる?」


 天塚紫水、24歳。未だに1人だと電気を消して眠れない女。怖いの、無理、絶対。文句を言いながらもごー君は、私の両手をそれぞれの手で掴んで引っ張り起こしてくれた。そしてそのまま片手を掴んでフラフラとした私を引っ張ってくれる。そうしている間に、私は先程まで思い出していた昔話の答えを、ごー君に求める事にした。


「ねぇ、ごー君。貴方が小さい頃、私と一緒に遊んでいた時に……もう1人女の子がいたわよねぇ?」


「あぁ……いたなぁ」


「あれって、誰だっけ?」


「マジで覚えてねーの? すーちゃん、すーちゃんって結構可愛がってたじゃん。俺と一緒の小学校だったんだけど、しばらくして引っ越ししちゃって転校した子だよ」


「すーちゃんっ。あぁ~っ! 思い出したっ! あうっ、大きな声を出すと頭痛がぁ~……」


「自業自得だろ。もう、1度吐いた方が楽になるんじゃねぇか?」


「えぇ~、嫌だぁ~。そんな事したら、完璧な私のイメージが崩れる上に、もれなくゲロインって呼ばれちゃうじゃ~んっ」


「完璧なイメージ? これ、もう分かんねぇなぁ」


 あぁ、そうだ。なんで忘れていたんだろう。少々引っ込み思案でアニメとかが好きな女の子……あの子との付き合いで小学生高学年や、中学生になっても、魔法少女モノをよく見てたのよねぇ。ごー君も、しー姉ちゃん(私の事ね?)、すー姉ちゃんと言いながら、3人で仲良くしていたものだ。


「なんか、懐かしいわねぇ。そうかぁ~……しーちゃんがよく魔法少女ごっこやりたいって言ってて、3人で遊んだんだっけ?」


「それも、いかにも付き合ってあげました風に言ってるけど、1番ノリノリに魔法少女やってたのは紫水さんだかんね? 俺と諏訪すわさんは、大体やられ役押し付けられてたんだからな?」


「諏訪さん……あぁ、それですーちゃんか。ごー君ってば、ホント小さい頃の事イチイチよく覚えてるねぇ」


「スルーかよ。ホント小さい頃の事イチイチ蒸し返してくる回数は紫水さんのが多いのになんでだろうなぁ?」


 弟の嫌味にイチイチ付き合わないのが、姉たる者の将器しょうきなのだよ。あれ? でもそうすると……やっぱり久慈君と私は、あそこが初対面って事になるのか? それだと、ルビーちゃんの話が間違ってるっていう事になるのだけれども。


「ねぇ、ごー君。私、昨日の夜にルビーちゃんに会ったって話したっけ?」


「聞いたよ。昨日の帰り道で散々。結構キツイ事も言われたけど、やっぱり可愛かったとかなんとか……」


「うぇ~。そんな話したっけ? そもそも、私どうやって帰ったか覚えてない」


「俺の自転車でニケツして。あの自転車、ロード用なのに荷台が着いてんのは、大体紫水さんの所為だって自覚ある?」


「いやぁ。ごー君がはやく車の免許が持てるようになったら、もっと楽になるのにねぇ?」


「それ、俺が? それとも紫水さんが?」


「若い頃の苦労は買ってでもって言うじゃない? ごー君、そろそろ私にお金くれてもいいのよ?」


「マジ会話が成り立ってなくて殺意湧くわ。それで? ルビーがどうしたの?」


「あぁそうそう。それでさ? 私と久慈君が魔力を譲渡したってルビーちゃんに教えたら、それは不可能だって言われてさぁ~」


「不可能って? なんで?」


「魔力の譲渡って、長い付き合いのある、もっと互いを信頼しあった間柄じゃないと出来ないらしくてさ……あの時、初対面の久慈君と私では出来る筈がないって言われたの。ごー君はなんか聞いてる?」


「……魔法少女でもなんでもない俺が知る理由わけないじゃん。でもまぁ……実際、紫水さんは魔法少女になっちゃった訳だし、なんか例外的な力が作用したんじゃないの? ルビーだって魔法少女の事を全部知ってる訳じゃないんでしょ?」


「それはそうなんだけれど……」


 少し胸の内がモヤモヤした私。まぁこのモヤモヤ、2日酔いの所為かもしれないのだけれど。うぅ~……吐きたくないよ~。ゲロインにはなりたくないよぉ~。

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