会議を円滑に進める為の潤滑油
「じゃあさぁ~……こういうのはどうよ? 私が~、こうペットボトルに入れた水道水に~、魔力を込めるのよっ。こうっ……萌え萌えきゅ~んっ! ってな感じで? ブハハッ! その水をネットで通販して~……って、ちょっとごー君聞いてる~っ?」
「はいはい、聞いてるよ」
「ハイは1回でい~でしょっ! もう、本当にごー君は~……ハイは1回でいいのに、全く。分かってる? ハイは1回でいい~んだよぅっ!?」
「分かってるよ。そっちこそ3回も言わなくていいだろっ。それと、さっきの案も却下なっ」
「なんでよ~。水素水だって大丈夫だったんだよ~っ? ちょちょっと効果がある風な事書いとけばぁ~、コロッといけるよ~っ」
「とりあえず、水素水ユーザーさんに謝っとけ」
「ごめんなさい~。ブックマーク外さないでください~」
「わりと素直で笑うわ」
第1回、私を魔法少女として立派なお金持ちにする為の会議は、食事とお風呂の休憩を挟んでまだまだ続いている。因みに少々私が見苦しい感じになってしまったのは、会議を円滑に進める為の潤滑油を投入したからだし、すぐに寝落ちできるような部屋着になっているのも、リラックスする事によって柔軟な発想が生み出されるからだ。仕方のない犠牲である。
「あっ、閃いたっ。こう、100均にでも売ってそうなお守り袋に~、こうっ……して、私が文字を書いた型紙を詰め込んで上げるの~っ……ほら~、こんな感じ。はいっ、これあげる。ごー君」
「中身に安産祈願って書いてある」
「そんで~、それを私の魔力をたっくさん込めました~って言って、ネットで売るのら~……ほら、名案でしょっ!? 今から魔力注ぎますからねぇ~……萌え萌えきゅ~んっ。ガハハハッ! 買ったなっ。な~んっつって」
「もう、それ言いたいだけだろ。そんな詐欺師みたいな事始めてっと、目を付けられて魔法少女も課税対象になるかもだぞ?」
「へぇ~……魔法少女って課税対象にぃ~、ならないのっ?」
「魔法生物と戦うのは、悪い事を払うっつう神事に近いから、彼女等が活動資金を募る行為は、宗教行為に該当するとかって判決を勝ち取った判例があるんだよな。魔法少女弁護団、有能すぎるだろ。まぁそもそも、カーテンが働くから国の力でも魔法少女を個人を特定出来なかったみたいだし、徴税出来ないのがこの問題の原因なんだろうけど……」
「ごー君、さっきから1人で、な~に難しい事言ってんの~……なんか、怪しい人みたいでウケる~」
「ひとっつも難しくないし、ウケね~からっ。後、間違いなくそっちのが言動は怪しくなってんぞ?」
「もう~……ごー君まで私に意地悪する~。そうやって、み~んな私に意地悪して~っ……この間もね? ガーネットさん達にまた会ってさ~。私が追っていた魔法生物を横取りされたのよ~? それに、なんか自宅も調べられちゃって~……昨日なんか、トパーズちゃんとベリルちゃんに、自宅にまで勧誘に来られたんだからぁ~」
「紫水さん、変化が適当だったからな。やっぱり、魔法少女同士の身バレを防ぐ為にある程度の変化は必要かもね。とりあえず、あんまり酷いようだったら言ってよ。なんとかするから」
「ん~んっ。大丈夫だよ。昨日は~っ、部屋に上げてお菓子をあげたら~、世間話しただけで帰ってくれたしっ」
「ハロウィンかよ」
「でも~……やっぱり私ってばいじめられて、とっても傷ついてるのっ。分かるでしょ? ねっ、可哀想でしょっ? ほら~、いつもの~」
「いや、あれ、恥ずかしいからあんまり嫌なんだけど……」
私はお酒を机の上に置いてから、ごー君の膝の上に上半身を預けるように飛び込む。そうして、彼の太ももに犬のように頬擦りして、猫のゴロゴロとしていると、ごー君が優しく頭を撫でてくれるのだ。あぁ~、癒されるんじゃ~。
「はぁ~……苦しゅうない、苦しゅうない~っ。ごー君、あのね~? ごー君が行き遅れたりしたら、私がもらってあげてもいいんだよ~っ? どう? 安心した?」
「俺が行き遅れるとか、その時紫水さん何歳になってんだよ」
「あっ……おトイレいってくりゅ~……」
「自由かよ」
そうして私は席を立ってフラフラとトイレに入っていく。勿論、可憐な女の子のおトイレシーンなんて詳細な描写は省くが、トイレを追えたのに背筋に走る悪寒が消えないのはなぜだろう? 手を洗いながら私は首を傾げたが、その直後に原因に思い当たった。
「あぁ、これ……魔法生物の反応かぁ~」
しかも、この反応は結構近い。私に助けを呼ぶ声が聞こえるかのようだ。これは行かねばなるまいて。では、ごー君が心配しないように傀儡を出してと……
「じゃあ、後はよろしくねぇ~?」
「分かりました、マスター」
私は出した傀儡を”見上げながら”そう告げて、とっとと魔法少女に変身すると、魔法道具を取り出して、こっそりと玄関から空へと飛び立つ。あれ? これって飲酒運転になるのかな? まぁ魔法少女に免許はないし、免停にならないから別にいいか。罰金は困るんだけども。そんなどうでもいい事をかんがえながら、よーしっ、今日も頑張るぞ~っ……とガッツポーズして夜空をフヨフヨと移動する私は、ここから先の会話を当然聞いていない。
「いや、だから誰っ!?」
「ごー君さん。私が雨塚紫水デス」
「身長やスタイルはともかく、顔を盛るのを止めろってあんだけ注意したのに……全然出来てねーじゃねぇか。まんま別人なのに、騙されると思ったのか? それで、お前のマスターはどこ行ったんだ? まさか、あの状態で魔法生物を倒しに行ったんじゃないだろうな?」
「分かりました。マスターに伝えておきマス」
「反応おっそっ。それになんでカタコトなんだよ。顔をハーフみたいな目鼻立ちに変えた影響で、英語の方が流暢になっちゃったとか?」
「I have a pe~n。I have an apple」
「おいおい流暢なのは分かったからそこら辺にしとけ? 英語の教科書に載ってそうな代表的な例文なのに、JASR〇Cの足音が聞こえて冷や冷やするからっ。いやホント、今年度の中学生の教科書からこの例文消えたりすんのかな?」
「私には分かりません」
「お前もせめて口調を少しは似せる努力しろよっ。はぁ~……まぁいいや。ここで話していても仕方ないし、直接言いに行くか」
「……ムービーなんか持ち出して、どこへ行かれるのデスか?」
「紫水さんを追うに決まってるだろ。あんな状態でマトモに戦える訳ないだろうし……お前はここで待機ね。いや、布団の中に隠れといて。ウチの母さんがお前を見たら、心臓止まる可能性あるし」
「分かりました、ごー君さん」




