アメジストのお友達になってくれる?
とりあえず、私の為の訓練も終わりを迎えてそろそろ帰ろうか……なんて話している最中、今日も1日声を聞く事すら出来なかった庄川さんが、度々スマホを触っているの事に気付いた。うーん、プライベートに干渉するのはちょっと失礼かな? でも気になる。ソシャゲかしら? 私も少しはやってるわよ。ほら、カードゲームの奴とか。アメジストのお友達になってくれる? なんて。それとも歩いてモンスターを集める奴かな? 私なんて、つい先日の夜に公園でマグロの形をしたコイキ〇グ出会って、自ら倒したりした経験の持ち主だし。
「ねぇ、何してるの? 庄川さん」
「……っ」
私が話し掛けるとビクッと体を震わせて驚いたが、すぐに何事かを伝えようと口をパクパクと広げている。普段の様子から嫌われているのかな? と、思わない事もないが、こうして話しかけると普通に対応してくれている辺り、そうでもないのかもしれない。そもそも余り話してもないのだから嫌われる理由がない筈だし。
それにしても、なにを喋っているのかサッパリね……そんな私の胸の内が伝わったのか、少し迷いながらスマホの画面を私に見せてくれた。見てみるとそれは、ツイットというSNSのホーム画面だった。ほら、名前から大体わかるでしょ? 呟くタイプのあれです、あれ。
「あぁ、ツイットか。私も昔にアカウント作った覚えがあるけど、結局なにを呟けばいいのか分からなくて、そのまま放置しちゃったのよね」
しかし、SNSならば彼女の小さい声も気にならないし、仲良くなろうとするならいいコミュニケーションツールじゃないかしら?
「でも、庄川さんがやっているなら私も、もう1度触ってみようかな? ID教えてくれる?」
「……っ」
庄川さんはコクコクと2回大きく頷いて、スマホを手渡してくれた。自分のスマホを手渡すって抵抗ないのかしら? もちろん、なにもいたずらをするつもりはないのだけれども。まぁ庄川さんが少し口元を緩めて、嬉しそうな顔をしてくれてホッとした。もし、微妙に嫌そうな顔をして断れれたらどうしようかと思った。
ホッと胸を撫で下ろした私は、久しぶりに自分のツイットを開いて庄川さんのホーム画面をじっくり眺めたところで、とある事に気付いて目を見開く。
「ちょっとこれっ……凄っ! フォロワー20万越えてるんだけどっ!?」
「蒼さんは魔法少女名義でツイットして、画像上げたりしてるんですよ。ボクも作ってるんですよ」
「久慈君も? あっ、こっちも凄い。フォロワー8万越えてる……貴方達、芸能人みたいね」
「魔法少女としてアカウントを作って、活動報告をしておけば知名度の維持にも繋がるし、魔法少女ちゃんねるを見てない人にも拡散されるんで、便利ですよ。先生も作りますか?」
「あぁ~……そういう目的で」
やってる事がまんまアイドルとか芸能人ね。まぁ知名度がそのまま魔力に繋がるんだから、活用できるものは活用した方がいいわよね。どんな活動をしているのかな? と、蒼さん事アメジストのアカウントを覗いてみると、なんかお風呂での画像やら、見えそうで見えないキワドイ衣装画像やら、戦闘中に捕らえられた時のエッチな画像やら……大体がR15かそれ以上の代物ばかりで、私は自身の顔が引き攣っていくの感じる。
「いくら魔法少女で正体がバレないとはいえ、これはその……先生、あんまり感心しないかなぁ~、なんて」
『それには理由がある。原因は、妹』(久慈君が翻訳してくれた)
彼女の話を聞く所によると、魔法少女大好きな妹がいるらしくて、衣装とか活動内容とかは全部彼女が管理しているらしい。それを聞いて、普段の彼女とのギャップに少しだけ納得した。今日も春物のブラウスにロングスカートだけで、化粧っ気もなにもない地味な普段着だし、好き好んであの格好している訳じゃなかったのね。前髪で隠れていて分かり辛いが、恥ずかしさに両頬がほんのりと赤くなっている様子だし。
『こういう格好は恥ずかしいけど、妹の……卯月のお陰で魔力が豊富になったのも事実。お陰で魔法生物との戦いも危なげがなくなったし、琥珀君も守れるようになった』
「そっか。魔力が少なかったりすると魔法生物に負けちゃうし、間違って尽きちゃったら永眠だもんね。お姉さんの為に、家族として心を鬼にしてこういう事をやってるんだよね」
「うーん……本当にそうだったら嬉しいんですけどね?」
久慈君が困ったように頭を掻きながら、苦笑いを浮かべる。この反応、まさか……
「もしかして、久慈君のその衣装も卯月さんが?」
「はい、そうです。もっちょっと可愛い衣装にしようってよく言われるんですけど……やっぱり、ボクの場合抵抗があって」
これは、敏腕プロデューサーですわ。私も試しにお願いしたい所だ。露出方面はスタイル的に耐えれないし、可愛い方面にも年齢的に耐えれないから、さぞや腕の見せ所だろう。
……自分で言ってて悲しくなってきたからこれ以上は止めといてやるか。(泣)そう言えば、卯月さんは何歳なんだろう?
「今年で小学6年生だったかな?」『そう』
「小6でこの発想よ」
「紫水さんも、卯月にプロデュースお願いしてみればいいんじゃね? まぁ紫水さんの場合、露出方面はスタイル的に無理があるし……ぐふっ!? ちょっ、腹は止めろ」
「それ、私が頭の中でもうやったからいいのよ。口にするのは止めなさい」
全く、ごー君は口を開けば余計な事しか言わない。でもごー君の口ぶりからすると、もしかして貴方も玉子さんと知り合いなの?
「知ってるよ。2人が中学の頃から魔法少女をやってた事を含めて全部。じゃないと、俺がこんなに詳しい訳ないだろ、魔法少女なんて」
「私、てっきりごー君が個人的に魔法少女の追っかけとかしてるものだとばかり……」
「俺をなんだと思ってるんだアンタ」
私はごー君の言葉を聞き流しながら、庄川さんのツイットを遡っていく。彼女をフォローするならやっぱり私もアカウントを魔法少女用に作り直してから……なんて、考えていると、私の目にとんでもない画像が飛び込んでくる。
「こ……これ、キ、キス……」
「これはその……魔法生物を倒した後に、魔力の譲渡している所なんですけど、こういう画像も上げておいた方が喜ばれるって、卯月ちゃんが言うので……」
「2人は、付き合ってたりするの?」
「ま……まだだったりしてます」『付き合っていない』
「へ、へぇ~」
付き合ってもないのに、こんな……映画でよく見る舌まで絡めあってそうな、濃厚な奴をしちゃうのね。最近の高校生ってこれぐらい普通なのね。どうしよう? 先生的に、ひ、避妊とか注意した方がいいのかな? 私もよく知らないのに? あわわっ。どどどど、どしよう、どうしよう。
「落ち着けよ、紫水さん。慣れないのに、あんまり余計な事考えない方がいいと思うけど?」
「う、うるさいわねっ! ちょっと大人として、毅然としたアドバイスをしようかどうか迷っただけよっ。その、庄川さん。スマホを返すわね。そ……それに、これは魔力の譲渡であって、やましい事をしてる訳じゃないでしょっ? ほらっ! 私だって久慈君にしてもらって、生き返れた訳だし? ねっ?」
「そうですね」
「つまり、これは善行だから別に注意しなくていいのよっ。結果オーライッ!(謎理論)」
そう言って私は、赤くなっているであろう自分の顔を誤魔化すために真っ先にその場を離れた。だからこれ以降の会話は聞いていない。
「……っ?」
「どうして嘘を吐いたのって? それはその、説明が難しかったから……かな?」




