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魔法少女ちゃんねる  作者: くるー
天塚紫水の場合
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先日付けで魔法少女アメジストになりました、雨塚紫水です

「あぁ~っ! 貴女、魔法少女ちゃんねるで見た事のある痴女のっ……」


 危うく失言を終えてしまう所だったわ。危ない危ない。


「先生、涼しい顔してますけど間に合ってないですからね?」


 苦笑いを浮かべる久慈君。そのやり取りを受けて、私が痴女と呼びそうになった女性(実際呼び終えていたんだけれども)は、顔を赤らめて棒立ちになったままプルプルと震えている。


 ジャガーを倒してから、なんとか久慈君が魔法を使って氷が張り付いた窓を解凍して、視聴覚室に入る事が出来た。中は冷凍庫のように寒くて私の身体は震えが止まらなかったが、私以上に寒そうな格好をしているのが、教室全体を凍らせた本人だった。


 上半身はグラビアアイドルでも中々お目に掛かれない程のおっぱいを惜しげもなく晒すかのように、黒いベルト状の物で縛り付けただけの半裸。下半身も同色の紐パンに黒のニーハイソックスとハイヒールだけという、ドスケベ衣装である。気持ち程度に長めの青色スカーフを首元に、腰回りに同色パレオを纏ってはいるが、どちらもシースルーなので意味をなしていない。


 まぁどうあがいても痴女なのだから、私が口を滑らせてしまうのも仕方がないではないか。そもそも恥ずかしいのなら、そんな衣装変更すればいいのに。いや、私も余り他人ひとの事を言えた義理ではないのだけれども。


「そ……その、寒くないの? そんな格好で」


「…………っ」


 痴女のはその切れ長に吊り上がった目でキッと私を睨みすえて、赤くて薄い唇を開閉させる。こうして見上げていると分かるのだが、少し面長ではあるもののパーツの1つ1つが整っているので、かなりの美人さんだ。身長も170cm半ばはあるので、ヒールを履いてる今は優に180cmを越えている。小さくて華奢な久慈君と並ぶと、対比が凄い。その上、余分な肉は尻と胸に集めておきました~的に極端なボディラインをしているので、同じ日本人とは思えないのだが……日本人形のように背中まで伸びた黒く艶やかな長髪が唯一彼女が同じ日本人なんだろーなと、確認させてくれた。


 ところで、さっきから口をパクパクしてなにか喋っているようなんだけど、まるで聞こえないのだが。あれ? 本当に喋ってる? そうして私が怪訝な表情をしているのに久慈君は気付いてくれたようで、一歩前へと出る。


「魔力を使えば体温調節は可能って言ってます。因みに、彼女の魔法少女の名前はサファイアで……えっと、正体も伝える?」


「……っ……」


 そう魔力って本当になんでも出来て便利なのね。(脳死)因みにやはりと言ってはなんだけど、本当に彼女は声を出してるの? 今も久慈君と普通に会話している様子なんだけども、すぐ目の前にいる筈の私に声が辛うじても届かない。なんか真空の隔たりでもあるんじゃないかと疑ってしまう。


『私の名前は庄川蒼しょうがわあおい。この学校の3年生』


 因みにここ以降、『』の台詞は魔法少女サファイアちゃんこと、庄川蒼さんの言葉を久慈君が代弁したモノだ。なんか小太刀二刀流とか扱いそうな名前の割に、要介護者みたいな子で先生少し心配になっちゃう。


「えっ? 貴女、ウチの生徒なんだ。あっ、どうもご丁寧に。先日付けで魔法少女アメジストになりました、雨塚紫水です。この学校、石英館で教員をしています」


 3年に私の受け持ちはないから、多分直接の面識はない筈だ。蒼さんという名前にも当然記憶がなかった。だが、生徒側の蒼さん側からすればそうでもないらしい。


『知っている。動画を確認した時から、気付いていた。もう少し変化スキンさせた方がいい』


「変化? 変化って……なにを?」


「そこはボクから説明します、先生」


 久慈君の説明によると、どうやら魔力を使って周囲に見える自分を変化させる事が出来るらしい。勿論、そんな事をしなくても一般人にはカーテンのお陰で正体バレはしないのだが、魔法少女の間での正体バレを防ぐために、ある程度顔やスタイルを変化させる人が多いようだ。元々ブラウンの私の髪が変身すると勝手に紫になるのも、無意識による変化が起こった為らしい。


 しかし、そんな事よりもだ。これら話から私は偉大な発見をしてしまった。つまりですよ、皆さん。この変化というのは……


「リアルフォトショップって事よねっ? 自由自在、自分の思い通りに整形出来るって事よねっ!?」


「そ、そうですね」


「もぉ~っ! なんで最初に教えてくれないよ~。そんな便利な能力、使うに決まってるじゃないのよ~っ! いっちばん重要な魔法じゃないぃ~っ!」


 そうか、そうかそういうカラクリか。魔法少女の誰もがアイドル張りに可愛い訳だ。(久慈君は例外として)そして目の前の少女のスタイルが、日本人離れしている訳だ。いくら正体がバレないようにする為だからって、盛りすぎよ~。もう、先生いろいろなけなしの自信をなくしかける所だったは。お亡くなり寸前だったわ。


「そうと分かれば先生、早速教えて欲しいなぁ~? なんて」


『でも、天塚先生の場合もう手遅れ』


「て、手遅れって流石に酷すぎるわよっ。泣きそうになるじゃないっ!」


『そういう意味ではない』


「先生の場合、もう既に魔法少女ちゃんねるに動画が上げられてしまっているので……衣装ならともかく、変化したのはすぐにバレてしまうって事です」


「ア…………ハイ」


 鏡を見なくても分かる。今、私……FXで有り金全部溶かしたような顔になってる。じゃあ、私のなにを変化させろと彼女は言ったのだろうか? 変な期待させやがって。悪魔のような少女ね、庄川さん。一気に気の抜けてしまった私は、この教室の寒さを思い出してクシュンッと大きなくしゃみをした。それを見た久慈君が気を使って、とりあえず今はこの場を元に戻して場所を映そうと提案してくる。


「元に戻すって……それも魔力で出来るの?」


『任せて』


 庄川さんが天井へ向けて扇子を掲げて魔力を解き放つと、冷たく凍り付いていた教室全体が、春が訪れたかのように一瞬で氷解していき、亀裂の走っていた外窓も元の形へと戻っていく。私はただ、その一連の様子を呆然と眺めているだけだ。修理も自由自在とか、魔力があれば大抵の事が出来そうね。


 一仕事を終えた庄川さんは、当然のように変身を解く。久慈君も、変身し続けると魔力が消費され続けるので……と、2人が同時に眩く光り輝くので、私もそれに習うようにして変身を解いた。そして、変身を解いた後の庄川さんの姿を見止めて、愕然としてしまう。


「あ……貴女その姿……何も変わってないっ。変わってないじゃないっ!」


 170cm以上の身長も、スラリと伸びたスタイルと手足も、はち切れんばかりのおっぱいと尻も、美しい容貌も、なに1つ変化してないではないか。まさか、今も魔力を使い続けているって事なのか?


「このままが、蒼さんの素の姿ですよ。ただ2つ変化させていてまずは髪の長さと……」


 そう言われて庄川さんの前髪が瞳を覆い隠す程度。後ろ髪が肩にかかる程度の長髪に変化している事に私は気付く。そしてもう一点。スカートの中から少し汚れの入った瓶底眼鏡を取り出すと、それを装着した。そうする事によって、一気に彼女の華やかさが薄まった。


「蒼さん、実はド近眼なんです。視力を変化させてるんですよ」


 そうなのか~と、実にどうでもいい事のように反応したしまった私は、罪深い女なのだろうか? 眼鏡を外したら美少女でしたとか、ただのご褒美じゃないですか~……とにかく、色々疲れた1日でした。

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