妻が冷たい
今日も昨日も、そして明日も毎日変わり映えのしないルートで家に向かう。
すし詰めの電車に乗り、人通りのない暗がりを歩く。
駅から徒歩10分で妻と二人暮らしを営んでいるマンションに着く。
今日も夜遅く私が家に帰ると、妻が冷たくなっていた。
昨日まではなんの問題もなく過ごせていたはずだ。
全くもって原因が分からない。
妻はソファーに寝そべっていて私が声を掛けても応えてくれない。
肩を揺することや、手を握ってみようとも考えたが、とてもじゃないがそんな状況ではない。
私は哀しくなって自室に戻ることにした。
どうして良いか分からず、走馬灯のように今までの生活がフラッシュバックしていく。
子供も出来ず、ずっと二人で暮らしてきた。
ふと気付いた事だが、妻は滅多に愛していると言ってくれなかった。多く口にしていると言葉の重みが無くなってしまうらしい。
しかし、今心の底から妻を愛していると感じている。
いつも世話になりっぱなしだった。それなのに最近は仕事が立て込んでしまい、妻との会話が減っていた。考えだしたら切りがなかった。
少し気持ちが落ち着いてきた。
とうとう私は決心をし、一本の電話を掛けた。
スーツを着替えて私は妻の所に行き一言「愛している。」とだけ言った。
次の日の地方ニュースに夫婦心中が取り上げられていた。
ここには初投稿です。
更新は不定期ですが宜しくお願いします。