ある男の手記
この話は次に投稿する小説に繋がってきます…!
歳を取るに従って、心の中で、あんなに欲しかったもの、あんな憧れていたものが1つ1つ、ゆっくり丁寧に死んでいった。
小学生のころ、周りの奴らが皆馬鹿に見えた。自分は誰よりも優秀で、自分が誰よりも幸せな人生を送るのだと思っていた。
中学生のころ、だんだん焦りを憶えた。周りの奴らは皆大人になっていくように思えた。それでもまだ何処かで周りの奴らを見下していた。自分がまだ子供のままでいるのが怖かった。
高校生のころ、弱者の痛みを知った。小学生のとき思い描いていた淡い青春は、周りの奴らのせいで砕け散った。それでもまだ、「俺は奴らとは違う」という劣等感を織り交ぜたプライドを捨てきれないでいた。
なんとか入った大学でも、一人も友達はできなかった。なんとかカネを稼ごうとしたバイト先で、俺は強盗に刺された。
半身不随。大学もやめた。親は俺を見限り、俺より出来のいい弟に期待した。風の便りでは、弟は一流大学に入ったらしい。きっと、友達もたくさん出来ただろう、俺と違って。
そして今、俺はどうにか動く右手でこれを書いている。狭いアパートの一室でだ。もうすぐ貯蓄もなくなり、このアパートで俺はもうすぐ死ぬだろう。誰かにこれを読まれるわけでもないだろう。最後にいう。何も残さずに砕けた奴の欠片を、拾ってくれるやつなんて、誰もいないってことを。
読了ありがとうございました!