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月乃#2

胃がしくしくする。頭も痛い。

無理やり枕から頭をひっぺがしたけど

やっぱりふらふらする。

昨日もまたちょっとしか眠れなかったから。


この2学期も、始まって2ヶ月経って

もう残り半分くらいしかないけど

これまでちゃんと眠れたのは数えるほどだ。

でも、学校には行かなきゃ。

皆に心配かけちゃだめだ。


……あとちょっとしかないのだし。


重い重い身体と心を引きずるようにして

リビングに降りて

お母さんが作ってくれた朝ごはんを

食べている途中、お父さんがやってきた。

思わず身体がぴくっとなる。


「おはようございます…お父さん」

「おはよう。今日も学校だな。

勉強はしっかりするんだぞ。

こんな田舎の奴らに合わせる必要なんぞ

月乃にはないからな」


きゅっと息が詰まりそうになる。

あの子たちは、田舎の奴らなんかじゃない。

すごく優しくていい人たちなのに。

お母さんは黙ってそれを聞いてる。

加勢したりしないけど、助けてもくれない。


「お前のためを思って言っているんだ。

あんな奴らと一緒なのはお前にとって

ハンデになるかもしれんがな

そのハンデを跳ね返すくらい頑張るんだぞ」


お父さんは心から思っているようで

顔はにこやかで、声も穏やかなのに

その顔を見ているとぞくっとする。

ハンデなんかじゃない。

あの子たちといる時間があるから

何とかこの家で過ごせてるのに。


でも、何も言い返せなかった。

いつだってそう。

私は小さな声ではい…と返事するだけ。

お父さんは満足そうに新聞に目を落とし

言葉を続ける。


「まぁ、こんなとことも

もうちょっとでおさらばだからな。

お前には不自由をかけるが

だからと言って、甘えは許さん。

お前は賢い。いい学校に入るんだぞ」


1つ1つの言葉が胸に突き刺さるみたい。

聞きたくなくてご飯を早めに切り上げ

家から逃げるように出た。



…皆に会うまでに

ちゃんと元気にならなきゃ。

そう思って、家を出てすぐのところで

1人、落ち着くまでじっとしていた。


いつもはこれで何とかなるのに

今日は時間がかかってる。

焦る。呼吸も早くなってく。

視界もくるくるしてきた。


遥香の笑顔。

紫野くんのちょっとふてくされた顔。

桐葉くんの呆れぎみの顔。

来年も来ようね!という明るい声。

蘇っては遠ざかってく。

消えてしまう消えてしまう消えてしまう……






「夜影さん!?大丈夫!?」




……桐葉くん……?

いつのまにかうずくまっちゃってたみたい。

かなり上から焦ってる声が聞こえる。


「どうしたの!?一旦、家の中戻る!?」


家……いやっ!


「……いやっ。帰りたくない……!」


桐葉くんはすごく驚いてたけど

とりあえず、家から見えなさそうなとこまで

引っ張って行ってくれた。


お父さんたちに知られないと思ったら

勝手に涙が出てきた。

だめ、心配かけるからだめ…

そう思うのに止められなくて

桐葉くんが目を丸くしつつ見ている前で

泣きじゃくってしまった。

とまんない。壊れちゃったみたいに。


桐葉くんはただただ戸惑ってたけど

何も言わずずっとそこにいてくれた。


学校は休むことになっちゃいそう…







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