駿#2
あぁ、あちぃ、やってんらんねぇ。
ついこの前まで春だったくせに
もう夏かよ…夏休みなのが救いだが。
クーラーのない自分の部屋で
握ってるだけで嫌なシャーペンを
ノートの上にだらだらと走らせながら
どーでもいいことを思う。
そうか、もう月乃が来てから3ヶ月なんだな
この3ヶ月は本当早かったな…
……それにしても、だ。
中学3年生に夏休みはない!だと?
こんなあっちぃのに勉強なんて
やってられっかよ。かったりぃ…
それでも何とかシャーペンを走らせてると
「しゅーん!あそぼーっ!」
ちっ、うるさいちびが部屋にきやがった。
「うるさくないし、ちびじゃない!」
声に出てたか。ははっ、真実だっつーの。
中1で130cmしか身長ないやつの
なーにがちびじゃない!だ。
「駿は暑くて勉強したくないあほだから
機嫌悪い。やめとけ、遥香」
冬騎が涼しい顔で言ってる。
ってかお前も来てんのかよ。
「おめぇ、人のこと軽々しく
あほとか言うなよ!」
「事実でしょー?前の模試の総合得点
お姉ちゃんの半分くらいだったじゃない」
冬騎に突っ込みを入れると
遥香が痛いとこついてきやがった。
くそっ、ちびのくせに。
「今は身長関係ないでしょー!?」
遥香がぎゃあぎゃあ喚いている。
あぁ、うるさい。
余計暑くなるから黙れよ。
「遥香、今回はたまたま私が良くて
紫野くんが悪かっただけだし……」
「えぇー、だって前もそんな感じでしょ?
お姉ちゃんは頭良すぎるけど
駿は馬鹿すぎるんだよ!」
「おめぇに馬鹿って言われたくねぇよ!
このちび中1生!」
月乃がおずおずって感じで
フォローっぽいのを入れてくれた。
が、フォローになってねぇよ……
ってかちびは今日やたらうるさいぞ。
で、何で3人ともいんだよ……
ちなみに、遥香は月乃ことを
お姉ちゃんと呼ぶ。ガキっぽい。
事実身長も何もかもガキだけど。
そんで、月乃は遥香は遥香って呼ぶけど
俺ら男子2人のことはまだ苗字で呼ぶ。
さっさと慣れりゃいいけどな。
好きなように呼びゃいいが
何となく落ち着かねぇ。
「遊びに来たら、綾女さんが
駿は部屋で遊んでんじゃない?
って言ってたから突撃してやったの」
何で遥香は偉そうなんだよ。
って、綾女ってのは俺のお袋のことだが
何でお袋は息子が勉強してるってのを
信じねぇかな……
確かにいつもはしてねーけどよ……
「さて、駿。あそぼっ!
せっかく晴れてるもん。
馬鹿だから今さらやったって仕方ないし!」
小さな顔いっぱいに太陽のような
笑みを浮かべて遥香が言う。
こうやって笑ってるときは
ただのかわいらし…いや、小学生なんだが。
ってか、誰が馬鹿だ、誰が。
今さらって、もう手遅れってことかよ……
でもまぁ、勉強よりは
遊んでた方がいいな。
せっかく夏だし月乃もいるし
思いくそ遊ぶか。
決して、やけくそになったわけではないぞ。
シャーペンを置いて立ち上がり
強烈な光の中に4人で飛び出した。