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孤独

作者: 日下部 龍

 出されたお題を基に百分間で物語を考えて書こう、という企画で生み出された作品の一つ。お題は「仮初」と「魔法」

 かなり短い作品だとは思いますが、百分間の制限時間があるのでその辺は許してください。


 そこには幾人かの人々と、体中から血を流しながらそれでもなお彼らに食らいつこうとする恐竜のような姿をした魔物がいた。人々は手に手に剣や弓、杖といったおのれの得意とする得物を構えている。

「炎精よ、そなたの眷属たる我が名において命ず。ここに全てを焼き尽くす地獄の劫火を生み出し、我に仇なす一切を灰燼と化せ。インフェルノフレイム」

 杖を構えた男がそう唱え終わると、魔物の足元から炎が噴き出しその体を覆った。数秒の後、炎がさっと掻き消えた時、そこには魔物の姿は無かった。

「お疲れ様です」

「いやー、思ったより手強かったですね」

「本当にな、あんなに動きが速いとは思わなかったよ。尻尾の一振りで随分ダメージを食らっちゃったな」

「あっ、皆さん回復しましょうか?」

 冒険者達は口々に互いの健闘を称えながら、帰り支度をする。勿論杖を構えた男も例外では無い。

「ロジャーさん、ありがとうございました。貴方の魔法での援護が無かったら私たち、あいつを倒せてたかどうか。お強いんですね」

「いやいやお礼なんて良いですよ。協力を頼まれて拒否する理由なんてありませんから。」


 男は画面の端を次々と流れる労いの言葉と、自分の分身となる存在のロジャーという魔法使い、誰とも知れない人々の分身である冒険者達を見ながら考えていた。

 自分はこの世界では自分でない誰かになれる。あらゆる魔法を使いこなす魔法使いにもなれるし、あらゆる武器の扱いに習熟した戦士にもなれる。自分の本性を隠して、全く違う性格、容姿を演じることも出来る。

 現実では、彼に積極的に近づこうとする人はそうは居ない。だがここでは違う。自分は皆に好かれる、卓越した魔法の腕を持つ魔法使いとなっている。


「では、僕は仕事があるのでそろそろ落ちますね。お疲れ様でした。」


 男はその書き込みを送信すると、ログアウトする。外はもうすっかり朝だ。カーテンの隙間から薄暗い部屋に差し込む朝焼けを見ながら、男はまた考える。

 自分は一体どっちが本当なんだろう。一体どっちを本当だと思っているんだろう。どっちが本当であって欲しいと思うのだろう。

 男は仕事に行く為の身支度を整え、部屋を出る。駅にはもう、仕事へ向かう人々がたくさんいることだろう。その中にはさっき共に戦った人々がいるのだろうか。自分と同じ思いを抱えた人々がいるのだろうか。男は、そんなことを思いながら歩いていく。

いかがでしたでしょうか。

 これ以前にも書いたものはありましたが、それらは自分で決めた終わりまで書けなかったので、これは初めて自分の思った通りのものを書ききった作品になります。今読み返してみると中々恥ずかしいものが有りますが。

 ちなみに友人には「プロローグっぽい」と言われました。特に続きは考えていなかったんですが。

 文章やストーリーに関する指摘があれば、是非とも送ってください。

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