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魔術的生徒会  作者: 夙多史
第二巻
50/61

一章 赤い少女と風切りの王(2)

「紗耶……」

 魁人は今し方ダンゴ虫の魔獣を燃やし斬ったその少女を見て呟いた。助かったと安堵する一方で、自分をこんな目に合わせた張本人に対する文句の言葉が脳内に羅列されていく。

 神代紗耶。魁人と同じメイザース学園高等部の一年生にして、生徒会の書記を担当している少女だ。小柄だがプロポーションはよく、肌は透き通るように白くて顔も端整。一言で表すなら『美少女』だ。よって当然のように学園の男子連中から並々ならぬ注目を浴びているのだが……彼らは知らない。メイザース学園の生徒会に所属しているということは、彼女は学園側から雇われた魔術師であるということを。

「なにアホみたいな顔して呆けてんのよ? あんたやる気あるのかって訊いたの」

 ムスっとした表情で紗耶は魁人を糾弾する。ハッと正気づき、魁人は苛立ちを込めて言い返す。

「やる気はあるにはあるけど、退魔師の仕事に駆り出されるなんて聞いてない」

「言わなかったっけ?」

「魔眼の特訓、としか」

 彼女の家――神代家は先祖代々退魔師を生業としている。その実力は魔術界でも指折りのようで、生徒会に所属する魔術師の中では屈指の攻撃力を誇っていると言っても過言ではない。

 だが、今回の件は生徒会とは無関係に彼女が那縁市で行っている業務なのだ。生徒会に協力すると言った魁人だが、彼女の個人的な仕事にまで付き合うつもりはなかった。

 魔眼を再び覚醒させるために本気で命の危険に晒されると知っていたら、魁人は彼女の召集には応じなかっただろう。

「危機的状況下に置けば行けるかもって思ったけど、結果は無駄だったわね。やっぱり月夜先輩の言うように、状況よりあんたの感情が鍵になるのかしら?」

「俺に訊かれてもわかんねえよ」

「でしょうね。あんた自身がわかってたらあたしがこんなに苦労することもないもの」

 そう言って肩を竦め、紗耶は蒼き炎を刀身に宿した刀――破魔刀・蒼炎龍牙を自分の掌に突き刺した。しかし血は流れることなく、刀は吸い込まれるように左手の中に消えて行く。彼女自身があの刀の『鞘』になっているらしい。

「また別の手を考える必要があるわね。でも御堂のようにぶっ殺したくなる屑魔術師を用意するわけにもいかないし……」

 腕を組んで頭を悩ます黒髪美少女。背後から照らす夕日のオレンジ色と相まって実に絵になる。不覚にも魁人は一瞬見惚れてしまった。ちなみにダンゴ虫はとっくに燃え尽きて消えている。

「なあ、俺は生徒会に入ったわけじゃないんだぞ。そこまで気張らなくてもいいんじゃないのか?」

「必要な時に使えないと意味ないでしょ。あとあんた、公式には生徒会庶務ってことになってるから」

「はい!? なんでだよ!? 入らないって言っただろ!?」

「ただの協力者じゃ上が承認してくれなかったって月夜先輩が言ってたわ。別にいいんじゃない、幽霊会員で」

「堅物なのか適当なのかよくわからん生徒会だな」

 仕方のないことなら仕方ない。もちろん書類上で生徒会役員になったところで、魁人は幽霊部員ならぬ幽霊会員として過ごすつもりでいる。生徒会の通常業務まで引っ張り出されるなど御免だ。アパートで一人暮らしの身としては、アルバイトの一つでもしないと生活に響く。とてもそんな時間はない。

 と、紗耶が小さく溜息をついて腕組みを解いた。

「まあいいわ。今日のところはこれでお終いにして、ご飯でも食べながら今後について考えましょ」

「あ、そ。じゃ、気をつけて帰れよ」

 やっと解放された、と魁人は踵を返した。が――

「どこ行くのよ」

 襟首を掴まれた。一時的に首が締まり、ぐえっ、と変な呻き声を出してしまう。

「どこって、帰るんだよ。紗耶だってメシ食いに帰るつもりだったんだろ?」

 軽く噎せ返りながらそう言うと、紗耶は「はぁ?」という顔をした。

「あんた何を聞いてたのよ? 人間の耳は飾りのためについてるわけじゃないのよ?」

 そのくらい幼稚園児でも余裕で知っている。


「作戦会議、あんたも付き合いなさいって言ったの」


 遅くなりましたが半年ぶりに更新再開です^^;

 やはり気まぐれ更新になりますが、月に1~2回程度は更新したいと思っています。

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