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魔術的生徒会  作者: 夙多史
第二巻
48/61

プロローグ

 その日、那縁(なより)市の早朝は台風のような豪雨に見舞われていた。

 風は特に強いわけではないが、降り注ぐ雨の一滴一滴がまるで矢のように地面へと突き刺さっていく。

 数十メートル先が白い闇で覆い尽くされているため視界も悪い。そのせいか、普段ならば早朝でも多少なり賑わっている繁華街ですら、人の気配は全くしなかった。

 いや、全く、ではない。

 チャッチャッチャッ。水の溜まったアスファルトの歩道を蹴る靴音が小気味よく響く。

 白く霞む沛雨はいうの中を、緑色のレインコートを着た何者かがジョギングスタイルで駆けていた。

 背は百六十センチほどだろうか。フードを被っているため顔は判然としないが、胸の辺りの膨らみから女性だということがわかる。

 彼女はペースもフォームも呼吸すらも一切乱すことなく、異世界のように白い繁華街を駆け抜けてゆく。雨で視界が悪いというのに、自転車にも負けない速度でひたすらに走り続ける。

 だが、驚くべき箇所は彼女の身体能力などではない。

 彼女の纏っているレインコートが、その役目を一切果たしていないところだ。要するに、彼女は濡れていないのである。

 滝のごとく降り注ぐ雨は、彼女を打つ直前で弾かれたように外側に飛び散っている。それを不自然に思う者はいない。繁華街の道には彼女以外誰もいないのだから。

 彼女もそう思っていたからこそ、能力を惜しみなく雨避けに使役していたのだろう。

「――ん?」

 繁華街のメイン通り、その出入口にあるアーチをくぐった時、彼女はそれを見つけた。

 歩道の端に赤色の何かが転がっている。近づいて観察すると、それが幼い少女だとすぐにわかった。

 踵まで届きそうなほど長い赤髪は乱れ、泥水を浴びて汚れている。この大雨の中、うつ伏せに倒れている少女は昔の囚人服に似た薄い襤褸切れを纏っているだけの姿だった。

「これは……いかんな。おい、大丈夫か?」

 レインコートの女は即座に少女を抱き起した。呼びかけるが返事はない。少女の瞼は力なく閉じられ、肌は嘘のように青白い。死んではいないようだが、体温がかなり低下している。早く病院に連れて行かないと命に関わるだろう。


 普通の人間ならば。


「この子は……まさか……」

 レインコートの女は気づく。

 魔術師として、この赤い髪をした少女が普通ではないことに。

 少女を抱えて立ち上がる。

「すまないが、ひとまず私の家に連れていくぞ」

 聞こえないと知りつつ、女は少女に語りかける。

「知り合いに治癒術を学んでいる者がいる。そいつを呼ぶから頑張って堪えるんだ」

 レインコートの女は少女を背負い直すと、全力で、しかし少女を気遣ったスピードで疾走する。そのまま携帯電話を開き、知り合いの番号をアドレス帳から探し出して発信する。

 幸い、相手はツーコールで出てくれた。

「ふわぁ……こんな朝早くからどうしたの?」

 寝起きを思わせるふわふわした声が携帯から聞こえる。実際、今の今まで夢の中にいたのだろう。それなのに二回のコールで起きてくれるとは流石だ。そう思いながら、女は用件だけを言う。

月夜(つくよみ)、急患だ。今すぐ治癒術の準備をして私の部屋で待機していてくれ」

「え? なに? どういうこ――」

 有無を言わさず通話を切り、女は走速を僅かに上げる。相変わらず雨は彼女に触れる前に弾けて逸れるため、背負った少女がこれ以上濡れることはない。

「しっかりしろ。すぐに治療してやるからな」

 女は走る。疾風のごとく、文字通り豪雨を掻き分けて。

 私立メイザース学園。その第一女子寮へと。


 ご要望があったので連載再開しました。

 といっても気まぐれ更新となります。他の連載も抱えてますし、それを区切った後も公募のための新作を書かないといけないからです。下手すると一ヶ月以上更新できないこともあるでしょう。脳内プロットの行き当たりばったりで書くので質も下がるかもしれません。そこはご了承くださいm(_ _)m

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