表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔術的生徒会  作者: 夙多史
第一巻
44/61

四章 悪魔の視力(10)

 ステージの上からの眺めは実に痛快なものだった。

 そう、さっきまでは。

「何、なんです……なぁーんなんですかアレはぁ!?」

 巳堂は声を荒げるほかなかった。切り札だった神代紗耶が得体の知れない力に敗れ、炎の壁もあの通り焦げ痕だけ残して綺麗になくなっているのだ。もう自分を守るものがない。

 他の操っていた生徒たちも倒れてしまって動かない。あれが死んでいるのかどうかはここからではわからないが、恐らく死んでいない。

 死んでいるのなら、殺した者に呪いがかかってさらなる殺戮を始めるはずである。何もないということは、全員生きているということだ。

「アレが、あの魔眼の力だというのですかっ!?」

 怒りや憎しみの感情を膨らますための言葉が、眠っていた魔眼の本質を目覚めさせてしまった。自業自得とはこのことである。

 生徒会魔術師たちと、羽柴魁人がこちらへと向かっくる。今一度、神代紗耶に仕込んだ『親』に意思を送ってみるが、結局は無駄だった。

「本当に、蠱と私のリンクが切れたよぉーですねぇ。やはり、術は失敗…………くく、はははははっははぁ! 許しません! 許しませんよぅ!!」

 人間の蠱を作るという自分の夢を、奴らはぶち壊しにした。魔術師を蠱術に使おうという欲求を出したことが間違いだった。いや、あの場で羽柴魁人を殺すか操り人形にしておくべきだったのだ。そうすれば生徒会魔術師たちには何もできなかったはずだ。

 時期を置けば再び人間で蠱術をすることはできる。だが、そのためにはまずここから逃げ出さなくてはいけない。しかし、ステージ側に外へ続いているような出入り口がないのは痛い。

(このまま逃げる? 私が? くく、それもあぁーりでしょうが、私の受けた屈辱を生徒会の連中に返さなくてはいけません。具体的に一文字で言えば、『死』で)

 しかし、もうストックしていた蠱はほとんど使い果たしている現状。残りは、白衣のポケットに忍ばせている小瓶の中に一体のみ。

(できれば、これは出したくない失敗作だったのですが……この際しょうがありませんねぇ)

 唇がニィヤリと歪む。

(どぉーせもうこの学園にはいぃーられないんですからぁ、最後は派手にいきましょうかねぇ)

 眼鏡の奥の瞳に狂気めいた色を宿し、巳堂はポケットの『失敗作』を握り締める。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ