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魔術的生徒会  作者: 夙多史
第一巻
31/61

三章 呪術的実験(7)

「紗耶ッ!!」

 蒼炎龍牙を地面に突き刺したまま、膝を折って崩れる紗耶に魁人は駆け寄った。

 彼女が意識を失ったことで魔力の供給が断ち切られ、蒼炎龍牙の炎は陽炎のように揺らめきながら消えていく。

 紗耶の体を仰向けに抱き起こす。予想通りというか、彼女の状態は呪いを受けた被害者たちと同じだった。表情は苦渋に歪み、呼吸は小さい。体内には、彼女の弱った魔力の光に紛れるように、例の蜘蛛が寄生している。

 ただその蜘蛛は、他よりも強く光っていて、一回りほど大きかったが。

「彼女には特別強力な蠱を憑けました。魔術師相手ではそのくらいでないと効果は期待できませんからねぇ。その蠱が取り憑いた者はまず強烈な痛みが――」

 魁人は紗耶をそっと寝かせると、楽しそうに解説なんかしている巳堂を睨む。そしてゆっくりと立ち上がって対峙し、凄みを利かせて言い放つ。

「今すぐ取れよ!」

 巳堂の解説がピタリと止まるが、別段魁人に臆したわけではない。くつくつと嗤い、両腕を小さくクロスさせてバッテンを作る。

「ノゥですよノゥ! 駄目ですねぇ。彼女は私の実験の要になるんですよ、羽柴魁人君。ええ、思い出しました。思い出しましたとも。最近生徒会と関わりを持ってきたあなたの名前をねぇ」

「……実験って、何のことだ?」

「実験は実験ですよ。あなたも組み込むことが今決定しました。光栄に思いなさい。魔眼持ち、いやいや面白い」

 巳堂の態度に魁人は拳を握る。相手は魔術師。それも蟲を使った呪術師。今は紗耶のおかげでその蟲はほとんど消滅しているが、さっきの大蟷螂のような隠し玉をまだ所持していないともかぎらない。魁人の魔眼には、瓶の中までは映らなかったのだ。

 紗耶はこの通り動けない。この状況において、選択肢の最前線に来るのは『逃げる』だ。しかし、巳堂は紗耶を狙っているようなことを言っていた。すぐそこの体育館には味方がいる。だが、呼びに行くにしても、この場を離れなければならない。紗耶を置いてはいけないし、彼女を担いでだとすぐに捕まってしまう。

「ホント、何で俺がこんなことになってるんだろうな」

 魁人は自分が馬鹿みたいに思えて苦笑した。答えなんて、決まっている。

「とりあえず一発ぶん殴って、紗耶や鈴瀬たちの蜘蛛を取り除いてもらうぜ」

 助けたい人たちがいる、その思いを拳に込め、魁人は巳堂に向かって疾走する。


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