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魔術的生徒会  作者: 夙多史
第一巻
18/61

二章 炎の退魔師(8)

 メイザース学園――生徒会室。

「そろそろやってるころかなぁ、紗耶ちゃん」

 校長室から引っ張ってきたような高価な執務机に向かい、月夜は昼休みに集めた資料の本をめくりながら物思いにふけるようにそう呟いた。

 紗耶の家――神代家は退魔を生業とする魔術師の一族である。だが陰陽道や神道のようなものとは違い、それらを基盤とした独自の術式を持って魔を狩っているのが彼女たちだ。

 神代家が扱うのは、主に五行思想でいう『火』である。五行思想とは、古代中国の自然哲学的思想で、万物は五種類の元素――木・火・土・金・水――から成るという説のことである。

『火』という特性上、神代家の術式は攻撃のためだけに存在する破壊力抜群なものがほとんどで、術者本人の戦闘能力も非常に優れていると聞く。それは紗耶本人を見れば明らかだ。

 正直なところ、生徒会の裏仕事は彼女にとって簡単なようで難しいだろう。戦力としては申し分ないが、普通彼女たち退魔師が人を相手にすることは滅多にないし(憑かれている場合は別)、完全滅殺が常なので『殺さず』の加減をする必要がない。従って、悪霊に憑かれているわけでもない人間を、殺さずに抑え込むことには不慣れなのだ。

 しかも彼女は、何でも力づくで片づけようとする嫌いがある。常時加減が必要な生徒会の仕事だけだと、ストレスが溜ること間違いない。

 だから彼女は、学園にいる間は本業の方で適度にストレスを発散していくつもりだろう。

 ガチャリ、と生徒会室のドアがノックもなしに開く。月夜は思考を中断して顔を上げた。

「銀、捕まえてきた」

「いやぁ、ははは……」

 入ってきたのは藤林葵と、熊並みの体を持つ氷狼の魔獣――リクに襟首を銜えられているという滑稽な姿をした御門銀英だった。彼がまたサボっていたので、葵とリクに捕獲を頼んでいたのだ。

「うん。ありがとう、葵ちゃん。さてさて銀くん。戻ってきたからには副会長らしくビシバシ働いてもらうわよ!」

「会長は人使い荒いなぁ。うちにも有給休暇ってのがほしいよ。年に三百六十八日ほど」

「一年越えてるわよ。サボってる銀くんが悪いんだから、本当なら三日ほど縛りつけて――」

 その時、机の端に置いてある電話が鳴った。それは生徒会魔術師のサポートをしている、この学園で魔力が開花した者たち――風紀委員からの連絡用のものである。

 月夜は銀英に対しての言葉攻めを止めると、受話器をとって耳に近づけ――

 ――表情を僅かに曇らせた。

「何かあったのかい?」

 リクに銜えられたままの銀英が問う。受話器を戻し、月夜は釈然としない様子で口を開く。

「うん、まだよくわからないのだけど、とにかく行ってみるわ。だから二人とも来て」

 銀英と葵は同時に頷き、そのまま三人と一匹は生徒会室を後にした。


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