第12話(最終話):終焉の約束──愛と復讐の果てに
深夜の静寂が、私の鼓動を際立たせる。
雨はやみ、冷たい空気が胸の奥まで染み込んでくる。
堂本司と並んで歩く足音が、固く決意した私の心の音のようだった。
「ここが、最後の場所だ」
彼の声は静かだが、その中に揺るがぬ覚悟が宿っていた。
私の胸は早鐘のように鳴り、何度も自問していた。
──これが、終わりなんだ。逃げずに向き合うんだ。
廃工場の錆びついた鉄骨の影が、不気味に長く伸びている。
冷たい風が頬を撫で、私の手のひらは汗ばんでいた。
「青山、出てこい!」
司の声は震えず、しかし確かな強さを放っていた。
私もその声に呼応し、小さく息を吐いた。
すると、暗闇から冷ややかな笑い声が響いた。
「よく来たな、二人とも。だが遅かった」
青山遼が姿を現した。
狂気と絶望を宿した瞳が、私の心を刺した。
彼の手には銃が光り、冷酷さを振りまいている。
銃声が鳴り響き、私の心は恐怖と決意が交錯した。
司が私を庇いながら闘う姿に、胸が締めつけられる。
──こんなにも誰かを守りたいと思える自分が、怖くもあった。
青山の言葉が、夜の闇を切り裂く。
「復讐も愛も、すべては虚しい。結局、人は誰かを傷つけるだけだ」
私は、必死に祈った。
彼の言葉を否定してほしいと。
司は叫んだ。
「違う!人は変われるし、愛することができる!」
その瞳には、揺るぎない希望と覚悟があった。
私はその言葉に、まるで凍りついていた自分の心が溶けていくのを感じた。
戦いの果てに、青山は捕らえられた。
警察の手に渡ったその瞬間、私の身体は解放されたように思えた。
私は司の胸に飛び込み、震える声で囁いた。
「……もう、逃げないで」
彼は私を強く抱きしめ、温かな鼓動が伝わる。
「君がいてくれたから、俺はここまで来られた」
その言葉に、涙が溢れた。
痛みも、葛藤も、すべてが報われた気がした。
数日後。晴れ渡る空の下、庭園で静かに立つ私たち。
過ぎ去った日々の重さを胸に、未来を見つめる。
「これからも、一緒に生きていこう」
司の言葉に、私は笑みを返した。
「ええ。過去も未来も、あなたと共に」
私たちの影が長く伸び、やがてひとつになる。
復讐は終わり、愛が新たな光となって照らし始めたのだった。
本作『終焉の約束──愛と復讐の果てに』を最後までお読みいただき、誠にありがとうございます。
この物語は、愛と復讐、信頼と裏切りの狭間で揺れ動く二人の大人の恋を描きました。
誰もが心の奥に抱える“傷”や“迷い”、そして“強さ”に寄り添いながら、読者の皆さまに「私の話だ」と感じていただけるようなリアルな心理描写を大切にしてきました。
堂本司と柊、二人の複雑な感情の絡み合いが、皆さまの心に響いていれば何よりです。
ミステリーとしての謎解きも、最後まで飽きることなく読んでいただけるよう、緻密に伏線を張り巡らせました。
その中で、大人の恋愛がただの甘いだけでなく、苦くも美しいものとして描けたら嬉しいです。
これからも皆さまの胸を熱くする作品をお届けできるよう、筆を進めてまいります。
応援していただければ幸いです。
最後に、心からの感謝を込めて。
――作者より