夜の温泉街
夕飯。
「うひょー、異世界にきて天麩羅が食えるとは思わなんだわ。ポン酒もあるし、こりゃあたまげたわ。」
センが嬉々として声を上げると女将も応える。
「ポン酒を知っているだなんてセンさん通ですね。」
「ねえ、チエリ。ポン酒って何かしら?」
「ワフーで作られているアルコールですよ姉さん。」
「なんでそんなもアイツは知ってるのよ?もしかしてワフー出身なのかしら。」
案の定、トばし過ぎたセンは早々に潰れていた。
「姉さん、また会えただけでも奇跡みたいなものなのにこうして旅行まで出来るなんて想像もしていませんでした。私、幸せものです。」
「奇跡?勘違いしないでよね。私は貴方をずっと探していたんだもの、遅かれ早かれ確定事項だったことよ。」
「流石です姉さん。」
チエリは微笑んだ。
夜更け時、センは目が覚める。ほろ酔い状態だし少し夜風にでも当たるか考えた。
「センさん、少し歩きませんか?」
後ろからチエリがひょっこりと顔を出す。
「ん、まぁいい。リンも起こすか。」
「姉さんは気持ちよさそうに寝てますし起こすのは可哀想ですよ。」
確かにリンは幸せそうな寝顔だ。
夜の温泉街。温泉にお酒と火照った体に心地よい夜風が通り抜ける。夜の涼しさと温泉街特有の匂いと蒸気。これがまた情緒ある。
「最近もずっとバタバタと忙しくて中々伝える時間がなかったので感謝の気持ちを伝えるの、忘れてました。」
「そんなこと気にしてねぇよ。でも、ありがとな。こっちこそそんなことまで気が回らないで悪かった。」
「いいんです。センさんにも姉さんにもいくら感謝しても足りない。お二人に会えた私は本当に幸せ者です。」
「うへへ、照れるなぁ。」
「あのセンさ…。」
チエリの言の葉を塞ぐように風が吹く。
「うぉ、さびっ。そろそろ冷えてきたし戻るか。」
「はい。そうですね。」
「本当に本当に貴方には感謝を一生かけても返しきれませんね。」
聞こえるか聞こえないかの声でチエリは呟いた。




