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女将ナトゥーリ


「まぁ、いい。とっとと入ろう。」

話を誤魔化すために旅館の扉を開ける。

しかし、誰もいない?いや、人の気配はする。それどころか慌ただしさは感じる。

「すいませーん。」

「はーーい。」

奥から声がする。それからまもなく艶やかな雰囲気と着物を纏った女性が出てきた。

「あら、今日のご予約の団体様のお連れ様ですか?女将のナトゥーリでございますぅ。」

「予約?いや、そんなんしてねぇぞ。」

「あら大変申し訳ございませんがウチは要予約で素泊りは受け付けておりませんの。」

受付には本日宿泊の団体名が書かれていた。どうやらRCという一組だけらしいが満室になっていた。

「そうだったのか。それは悪かった。これ貰ったから使えるもんだと思っていたんだ。また来るよ。」

受付を背にする。

「あら、それは…。お待ちくださいな。その券を見せていただけるかしら?」

「ん?」

「やっぱりそうね。少しお待ちいただけるかしら?」

それから数分後。

「お待たせしました。お部屋のご用意が出来ました。」

「貸切じゃなかったのか?」

「別に貸切ではありませんのよ。一般のお部屋が満室になっていただけです。」

「一般のお部屋て。」

「タモンちゃんのご友人ですから特別でしてよ。」

こっそりと耳打ちしてくる。

「お、おう。それはありがたいな。」

「何照れてんのよアンタ。これだから男って。」

「それとお部屋にもお湯はあるのですがウチの魅力は大浴場の温泉でしてよ。若返りの効果があるとかで最近バズってまして。」

「バズってるって。異世界にもあるのかよ。」

「いいわね!チエリ入るわよ!」

「姉さんそんなに慌てないでも温泉は逃げませんよ。」

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